ダンダダン
第12話「呪いの家へレッツゴー」
12月19日(木)放送分
インタビュー(1)の続き 「あの日見た花の名前を僕達はまだ知らない。(あの花)」「心が叫びたがってるんだ。(ここさけ)」「空の青さを知る人よ(空青)」。秩父を舞台にした青春3部作を手掛けたクリエーター3人の最新作となるオリジナル劇場版アニメ「ふれる。」が公開中だ。青春3部作と同じく長井龍雪さんが監督、岡田麿里さんが脚本、田中将賀さんがキャラクターデザイン・総作画監督を務め、チームが再結集した。東京・高田馬場を舞台に、不思議な生き物“ふれる”と暮らす青年3人の友情が描かれる本作は、秩父を舞台に思春期の少年、少女たちを描いてきた青春3部作を経た「チャレンジングな作品」だという。長井監督、田中さんに制作の裏側について聞いた。
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長井監督 関係性を作る上で、不思議な力という案は最初からあったのですが、打ち合わせ段階でコロナ禍があって、後からそうしたテーマをすごく考えました。打ち合わせを重ねるごとに、Xのマシュマロ機能などがイメージに入ってきて、物語のテーマにもどんどんスライドしていったのかなと思います。
田中さん 確かにそうでしたね。シナリオでもSNSと対比するようなせりふが出てくるので、「はっきり断定するんだな」と思いました。
長井監督 僕がSNSを全くやらないので、むしろちゃんと言わないと、僕自身がよく分からなくなってしまうという部分もあったんです。
長井監督 「映画っぽいものをやりたい」とは常に思っていて、そういう意味で、にぎやかしの要素というか、画面を派手にする要素、映画として盛り上がる要素として、どんどん積み重ねていってもらって、この形になりました。逆に言うと、僕のほうから派手にする要素として、ファンタジーをオーダーした部分もありました。
田中さん ファンタジーの要素としては、これまでの作品でもすごく振り切ろうとして、結局振り切れずにいた。では、その塩梅をどこに落ち着けるのか?と。今回は、全体の打ち合わせでも、そこに難儀した印象なんですよね。それこそ“ふれる”の能力も、どこまでのものにするのか? すごすぎても、てんやわんやになってしまう。結局、ファンタジーの部分がありつつも、最終的に主人公3人のリアルな部分に話が落ち着くのは何となく分かっていたので、あとはどう納得していくか?という話し合いをひたすら繰り返していたなと思います。最終的に僕らが作るファンタジー作品は、これくらいの強度なんだということが、今回よく分かったなという気はしているんです。
田中さん そうですね。東京の高田馬場でリアルな20歳の男の子の話が主軸にある以上、そこが壊れるほどのものは、ただのノイズにしかならないんじゃないかなと。だからこそ、“ふれる”を形作っていく時も、相当自分の中ではビビっていました。“ふれる”の存在が浮かないかな? 大丈夫かな?と。その塩梅が難しくはあったのですが、最初の案でOKになっちゃって。僕がその後で散々ごねて、ほかの案も出したのですが、全部却下されて「これでいい」と(笑)。
長井監督 よかったんです。
長井監督 僕は2人に甘えちゃっている感じになっていますね。岡田さんの脚本に関しても、やりたいニュアンスを伝えて、それに応えてもらって、コンテを描いて。それから、田中さんに「こんな芝居にしたい」とニュアンスだけ伝えて田中さんが組んでくれてという。
田中さん このチームは、ある意味、妥協できない環境なんですよね。長井さんの中の「こういう感じ」というふわっとしたものに対して、僕や岡田さんが「長井はこういうことを考えているに違いない」と案を出して、「そうじゃない」「いやそうだ」というのを繰り返すのが、毎度の作り方なんです。お互い長い付き合いでプライベートも知っている仕事仲間プラス友達という関係値があるが故の信頼関係というか。「こいつのことは俺たちが一番分かっているんだぞ」みたいなプライドもない交ぜになって妥協できない感じが、最終的にはいい方向に働いているんですよね。だから、作りやすそうで作りにくいし、でも作りやすい、みたいな。
長井監督 そうですね。
田中さん 「ふれる。」が完成した後に岡田さんと話していたのですが、「私たちも“リアルふれる感”がすごい」と(笑)。主人公3人のせりふもリアルで使えそうな感じというか、不思議な感じがしますね。僕らのお互いのことを話しているのに、なぜか「ふれる。」のお話とシンクロしている感じって、今までの作品ではあまりなかったような気がするので。コミュニケーションという直球のテーマでもあるので、余計にそう思うのかもしれないですが。
長井監督 最終的にそうなっちゃいましたね。
田中さん 意図してそうしたとか、図ってそうしたということは全くないと思うのですが、そう感じますね。
長井監督、田中さん、岡田さんの3人のさまざまな挑戦が詰まった「ふれる。」。見る人の心に“ふれる”ところがきっとあるはずだ。
対談(1)はこちら
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