「未来の歯産価値を、今からつくる。#投歯」PJ始動 歯科健診の有無が、将来的な医療費・介護費に影響

歯の定期チェックを受けている人の割合
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歯の定期チェックを受けている人の割合

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[投歯に関する意識実態調査]20代は見た目ケア優先、“投歯”意識は低い

2024年11月7日

公益社団法人日本歯科医師会

口腔環境の健康維持を促進、「未来の歯産価値を、今からつくる。#投歯」プロジェクト始動

歯科健診の有無が、将来的な医療費・介護費に影響

[投歯に関する意識実態調査]20代は見た目ケア優先、“投歯”意識は低い

 公益社団法人日本歯科医師会(所在地:東京都千代田区、会長:高橋英登)は、国民の皆さまに歯とお口の健康への興味や関心を高めてもらうため、「未来の歯産価値を、今からつくる。#投歯」プロジェクトを展開します。

 「投歯(とうし)」とは、将来の健康的な生活の実現を見込んで、日々のセルフケアと合わせて、定期的に歯科医院でチェックを受け、口腔の健康維持に努めることを意味する造語です。先行研究によると、歯科健診を受診していない人は、受診している人と比較して、医療費や介護費用が高くなるということが明らかになっています。早い段階から、口腔の健康維持に関心を向けてもらうことで、将来の医療費や介護費用の負担軽減にもつながることと考えます。

 当会が、本年9月に男女1万人を対象に行った歯や口の健康管理に関する調査結果では、歯の定期チェックを受けている人の割合は、若い人ほど少なくなっています。さらにこの度、全国の20歳〜69歳の男女1,000人を対象に「投歯に関する意識実態調査」を実施したところ、特に20代で、身体で定期的にメンテナンスしているところでは、口や歯よりも、男女とも髪を優先し、男性は「筋力」、女性は「眉毛・まつげ」を優先する意識が高いことから、20代の「投歯」意識が低いという実態が明らかになりました。

 政府の「骨太方針2024」には、「生涯を通じた歯科健診(いわゆる国民皆歯科健診)に向けた取組の推進」が明記されました。当会でも、歯科保健医療の一層の普及・推進によって、口腔負債を将来に持ち越さない国民全体の「歯産価値」の向上に努めていきたいと考えています。

Keyword解説

【投歯】:将来の健康的な生活の実現(利益)を見込んで、日々のセルフケア(歯ブラシやフロスや歯間ブラシなど)と合わせて、定期的に歯科医院でチェック(プロフェッショナルケア)を受け、口腔の健康維持に努めること。

【歯産価値】:口腔環境が健康な状態を財産と捉え、その状態がもたらす、良いもの・こと(や性質)を指す。歯産価値を高めることは「食べる、話す、笑う」といった人間の基本的な活動を生涯にわたって維持でき、生活の質向上にもつなげることができる。

【口腔負債】:口腔環境の悪化やそれが原因で、全身の健康に影響を及ぼすことで、将来的な医療費の負担増を招きかねない状態を指す。

※「投歯」「歯産価値」「口腔負債」は、日本歯科医師会が作成した造語です。

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「口腔負債」に関わる先行研究① 香川県歯科医師会の報告事例

 人生100年時代にいかに健康な老後を確保するかが課題となる中、「口腔の健康が全身の健康に密接に関係する」ことが多くの研究で明らかになっています。このことから、健康寿命の延伸は、歯を含めた口腔内の健康を維持するための、セルフケアに加えて定期的な歯科受診は欠かすことができません。

 また、医療費削減においても、先行研究から、歯科健診の受診の有無によって医療費に差があることが明らかになっています。

歯科健診の受診の有無が、1年間で平均9.5万円、最大で13.5万円の医療費の差に。

 公益社団法人香川県歯科医師会は、香川県からの委託を受け、2005年度より医療費適正化を目的とした、歯の健康と全身の健康の相関性を分析する調査を実施しています。

 2008年に40歳~74歳を対象とした特定健診が開始されたことを受け、2009年から特定健診受診者への質問項目に、歯科健診の受診状況を含む歯科関連の質問を香川県独自で設定。特定健診による調査結果と保険者のレセプトデータ(診療報酬明細書)を突合させた、5年間にわたる分析を行っています。

 この分析の結果、年に1回以上、歯の健診や予防のために歯科医院を受診している人と受診していない人とでは、医療費に大きな開きがあることが明らかになりました。

 5年間の医療費を平均すると、歯科健診を年に1回以上受診している人は、1年間で36.2万円であるのに対し、受診していない人は45.7万円と、9.5万円高くなっています。なお、最も差が開いた2014年度は、13.5万円の差となっています。[図①]

【画像:https://kyodonewsprwire.jp/img/202411069487-O8-Hp1v849E

日本歯科医師会 常務理事 伊藤明彦 コメント

 近年、口腔の健康が全身の健康と密接に関係することが分かってきています。誤嚥性肺炎、糖尿病、認知症、早産・低体重児出産、循環器病等の全身疾患との関連性を示すエビデンスが続々と示されており、口腔の健康状態を保つことによって、それらの疾患の発生や重症化を低下させることが期待されています。

 定期的に歯科医院を受診することは、健康維持・増進だけでなく、香川県歯科医師会の調査にもあるように医療費の軽減にもつながることが期待できます。

 日本歯科医師会は、1989(平成元年)より、厚生労働省と共に「80歳になっても20本以上、自分の歯を保とう」という「8020運動」を積極的に推進しています。20本以上の健康な歯があれば、食生活にほぼ満足できると言われており、いつまでも美味しく、そして楽しく食事をとり続けていただくために、口の中の健康を保っていただきたい、という願いを込めて「8020運動」を展開しています。ただ、20本以上の歯がなくとも、入れ歯などにより口腔の機能は、維持できます。

 人生100年時代、自分の歯は大切にしたいものです。人生の最期の日まで「おいしく食べる」ことができるよう、ご自身で行うセルフケアと合わせて定期的に歯科医院でお口の状態をチェックしてもらうなど、より生活を豊かにするためにも積極的に「投歯」をしましょう。

「口腔負債」に関わる先行研究② 東北大学研究グループの報告事例

 最新研究では、過去6カ月以内に歯科受診をした高齢者は、未受診者と比較し、その後8年間の累積介護費用が低いことも明らかになっています。

予防目的で歯科受診をしている人は、未受診者より8年間で累積介護費用が約11万円低い。

 東北大学大学院の研究グループ(東北大学大学院歯学研究科・竹内研時准教授、東北大学学際科学フロンティア研究所・木内桜助教らの研究グループ)は、日本の自立した高齢者8,429人を対象に、過去6カ月以内の歯科受診の有無とその後の8年間の累積介護費用との関連性を調べ、2024年8月にその結果を国際学会誌で公表しました※。その結果によると、過去6カ月以内に予防目的で歯科受診をしている人は、未受診者と比較し、その後の8年間の累積介護費用が約11万円低いことが明らかになりました。[図②]

 研究グループは「歯科受診をすることで口腔の健康が保たれ、要介護状態の発生が先送りされた可能性や、要介護状態になった場合においても、重症化が抑えられたことで介護費用の増加を抑制できた可能性が考えられる」としています。

※ S. Kiuchi, K. Takeuchi, M. Saito, T. Kusama, N. Nakazawa, K. Fujita, K. Kondo, J. Aida, K. Osaka: Differences in cumulative long-term care costs by dental visit pattern among Japanese older adults: the JAGES cohort study The Journal of Gerontology: Series A. 79(9), 2024.

【画像:https://kyodonewsprwire.jp/img/202411069487-O9-OPPw4qyM

 本研究結果に関して、共同研究者の東京科学大学 健康推進歯学分野 教授 相田潤先生より、コメントをいただきました。

東京科学大学 健康推進歯学分野 教授 相田潤 コメント

 これまでの研究で、歯の数が多いほど、要介護状態になりにくいことが報告されてきました。また、歯が少なくても入れ歯などの治療をしていれば健康状態が良いことも知られています。口腔の健康状態が悪いと、食事を十分にすることができず、特に高齢者においては体重減少の原因になることも報告されています。高齢者の体重減少は、要介護状態のひとつの原因になります。また、口腔の健康状態が悪いと、人と会って話したり、一緒に食事をすることをためらってしまうことも知られています。人と会わずに家に閉じこもってしまったり、孤立してしまうことは、やはり健康を悪化させ、要介護状態の発生にも関係することが知られています。また口腔の健康状態が良い人は、歯みがきをきちんとしていたり、定期的に歯科受診をしていることが多く、口の中がきれいなことが多いです。口の中がきれいだと、口の中の細菌による肺炎(誤嚥性肺炎)にかかりにくくなることも知られています。このように、さまざまな経路で歯の健康を含む口腔の健康は全身の健康状態や要介護状態の発生に関係しています。

 定期的に歯科健診をしていると、歯みがきでとれない歯石のクリーニングもできて歯周病や口臭の予防になったり、フッ化物歯面塗布でむし歯予防になったり、歯科疾患になってもすみやかに治療につながり重症化が予防されます。歯の詰め物がとれたり入れ歯が壊れたりしても治療ができます。このようなことで、歯の喪失が予防されたり、歯が無くなっても治療により機能する状態が保たれます。高齢者では、食べたり飲み込んだり話したりすることに不便を感じるオーラルフレイルの治療や予防にもつながります。

 そのため、定期的に歯科健診をすることで、口腔の健康状態が良好に保たれ、食事や会話や笑ったりすることに問題を感じることなく健康な生活を送りやすくなり、要介護状態になりにくくなったり、要介護度の進行がゆっくりになる可能性が高まり、このことが介護費用の低減につながると考えられます。そして歯は一生つかうものですから、高齢者になってからだけでなく、すべての年代の方に歯科健診がおすすめです。

「投歯に関する意識実態調査」結果

 当会では、将来の健康に備えた口腔ケアの実態を明らかにすべく、全国の20歳〜69歳の男女1,000人を対象に「投歯に関する意識実態調査」を実施しました。 その中で“投歯”意識が低かった20代に焦点を当ててみたところ、以下のような実態が明らかになりました。

「投歯に関する意識・実態調査」調査概要

■実施時期 2024年9月20日(金)〜9月21日(土) ■調査手法 インターネット調査 ■調査対象 全国の20歳〜69歳の男女1,000人

*本調査では、小数第2位を四捨五入しています。そのため、数字の合計が100%および合計値とならない場合があります。

定期的に歯や口のメンテナンスをしている人は約3割、 20代の歯や口への定期的なメンテナンスは、男性の「筋力」、女性の「眉毛やまつげ」よりも低い傾向に。

 20歳~69歳男女1000人に、体の中で定期的にお金をかけてメンテナンスをしているところを尋ねたところ(複数回答)、全体では、「髪」(49.2%)に次いで「口・歯(口腔ケア、歯並び矯正、ホワイトニングなど)」(32.6%)となりました。

 20代に絞ってみると、「口・歯」の回答割合は、全体平均に対し男性20代(18.0%)が14.6ポイント、女性20代(25.0%)が7.6ポイント下回りました。 男性20代の「口・歯」の回答割合は、「筋力」(27.0%)や「肌」(26.0%)を下回りました。また、女性20代も、「眉毛・まつげ」(27.0%)を下回ったほか、「肌」(25.0%)や「爪」(25.0%)と並ぶ結果となりました。

 「口腔ケアなど見えないところのケアよりも、髪やネイル、肌など人目につくところを優先したい(「そう思う」「ややそう思う」計)」と回答した割合は、全世代で20代が最も高く、65.0%に達しました。

【画像:https://kyodonewsprwire.jp/img/202411069487-O11-zLiYVhg7

口腔ケアに自信がある人は約半数。若い世代ほど、口や歯の見た目を気にする傾向に。

 回答者全員に、自分は口腔ケアができていると思うかを聞いてみました。その結果、「できていると思う(「できている」「少しはできている」計)」と、「できていないと思う(「あまりできていない」「できていない」計)」の回答割合は、ほぼ半数となりました。

 口腔ケアが「できていないと思う」と回答した人に、現在の「口・歯に関する悩み」を尋ねたところ、世代によって悩みが異なり、20、30代の上位3項目は「口臭」「歯の色」「歯並び」となり、目の前の相手に与える印象を気にしている傾向が感じられます。 一方、40代では、「歯間にものがはさまる」が3位に入り、50代、60代では1位になっています。

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※こちらはリリース抜粋版になります。リリース全文には調査結果の詳細やデータが掲載されています。

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