俺だけレベルアップな件:世界同時展開の狙い 日本のアニメの魅力を世界へ

「俺だけレベルアップな件 Season 2 -Arise from the Shadow-」のビジュアル(c)Solo Leveling Animation Partners
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「俺だけレベルアップな件 Season 2 -Arise from the Shadow-」のビジュアル(c)Solo Leveling Animation Partners

 電子マンガ・ノベルサービス「ピッコマ」で国内累計6億5000万PVを突破するなど全世界で人気を集める「俺だけレベルアップな件(俺レベ)」のテレビアニメのSeason(シーズン)2となる「俺だけレベルアップな件 Season 2 -Arise from the Shadow-」が1月4日から放送される。2024年1~3月に放送されたSeason1は、米国をはじめ200以上の国と地域でアニメなどを配信する「Crunchyroll」で、「同シーズンで最も視聴された作品」となるなど世界的に人気を集めた。元々、原作は世界で人気だったこともあり、アニメを手掛けるアニプレックスは、世界同時展開を仕掛けた。アニプレックスのプロデューサーの古橋宗太さん、宣伝プロデューサーの尼子風斗さんに、世界同時展開の狙いを聞いた。

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 ◇異例づくしの海外展開

 同作は、異次元と現世界を結ぶ通路のゲート、ハンターと呼ばれる特殊能力を持つ人間たちが存在する世界を舞台に、最低のEランクのハンターで“人類最弱兵器”と呼ばれる水篠 旬が突然、自分だけがレベルアップする力を手に入れ、最弱から最強に駆け上がる……というストーリー。

 原作は、スマートフォンで読むことに特化した縦スクロールのウェブトゥーンで、さまざまな言語で展開されている。特に人気だったのが米国で、ドイツ、フランスなどの読者も多かったという。Season1では、東京、ソウル、パリ、ベルリン、ロンドン、ロサンゼルス、台北、バンコク、香港、ムンバイでワールドプレミアを開催し、2023年12月にニューヨークのタイムズスクエアでデジタル広告、2024年3月にアメリカに加えて日本・韓国でも屋外広告を同時展開した。日本のアニメは世界的に人気ということもあり、世界規模で広告を展開することは珍しくなくなっているが、規模が大きかった。しかも、世界同時展開というのは「アニプレックスを含めて他社でも異例」だったという。

 「多言語で展開されていて、そもそも海外で人気の作品だったこともあり、最初から徹底した完全同時展開を考えていました。アニメ化を発表したのは2022年なのですが、当時はウェブトゥーンのアニメ化は珍しかったんです。PVやポスターは日本語、英語、韓国語版を同時に展開しています。まず日本でヒットを作ってから、海外に向けて展開をしていくことが多いのですが、世界でのヒットを初めから意識していました」

 配信が一般的になったこともあり、日本と海外のアニメ視聴環境の“時差”は大きく縮まっている。しかし、日本発のアニメのプロモーションは、国内の優先順位が高く、国内で人気に火が付いた作品が、結果的に海外でも人気が出ることも多いという。「俺レベ」の場合、原作が海外で人気だったこともあり、世界同時展開に踏み切った。結果として、放送前から海外での注目が大きく集まったという。

 「例えば、PVは日本語版を先に出してから、英語版を後で公開することもあるのですが、『俺レベ』は日本語と英語版、韓国版を別チャンネル・アカウントで同時に出しました。結果、目に見えて『俺レベ』は、英語版の再生数が日本語版を大きく上回りました。」

 ◇日本で作る意味を

 世界に向けた作品ということもあり、制作においてもこれまでにない苦労があったという。例えば、原作の主人公の名前は日本では“水篠旬”だが、日本以外では“ソン・ジヌ”だ。そもそも韓国で生まれた作品ということもあり、日本向けにキャラクター名をローカライズしているのだが、日本以外では韓国語のキャラクター名で認知されている。

 「日本と海外ではキャラ名が異なるので、これまでなかったことなのですが、日本版・海外版でアフレコを2回しています。海外でも日本の声優は人気なので、字幕でアニメを見る人を意識しました。だから違和感のないようにキャラ名を変えてアフレコをしたんです。あとは背景、ステータス画面などは英語表記にしています」

 一方で「変えてはいけないこともある」という。日本のアニメは独自の進化を遂げてきた歴史があり、独自の表現が世界中で人気を集めている。海外のアニメファンは、日本のアニメならではの表現を求めている。

 「世界同時展開ではあるのですが、映像の作りは海外を意識しすぎないようにしています。どうしても海外に寄せようとしてしまいがちですが、日本で作る意味を考えていました。日本のアニメのよさを押し出しつつ、海外のアニメファンの好みもバランスよく取り入れていこうとしました」

 日本のアニメが世界で支持を集めている今だからこそできたことなのだろう。とはいえ、そもそも作品が面白くなければ、人気にならない。

 古橋さんは「主人公が追い込まれ、泥臭く成長していく。国などに関係なく普遍的な魅力のある王道の物語」、尼子さんは「普遍的でシンプルなところも魅力です。原作もするする読めるのですが、アニメも気軽に楽しむことができる」と「俺レベ」の魅力を分析する。

 Season2の放送に向けてSeason1の特別編集版とSeason2の第13、14話で構成されるアニメ「俺だけレベルアップな件 -ReAwakening-」を日本をはじめ全世界で劇場上映するなど、さまざまな施策で世界にアプローチしている。日本のアニメが世界中で愛されている今、「俺レベ」のような海外同時展開は、スタンダードになっていくのかもしれない。

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