プレスリリース詳細 https://kyodonewsprwire.jp/release/202501062428
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2025年1月6日
岐阜大学
ウスバシロチョウの中国大陸からの伝播ルートと日本国内の地域性を高解像度な集団遺伝解析によって解明
本研究のポイント
・ウスバシロチョウ(ウスバアゲハ)の日本列島における遺伝的多様性をミトコンドリア遺伝子と核遺伝子を使って高解像度で解析した。
・ 本種は300万年前に中国大陸系統から分岐し、黄海のルートを通って日本に飛来したと推定された。
・ 日本系統では、中国地方と四国地方の系統が最も古く、100万年前に分岐し、その後、西日本系統と東日本系統が60万年前に分岐したと推定された。
・ 日本列島には少なくとも5つの遺伝的集団が存在し、その境界は津軽海峡のブラキストン線 1)、本州中央部、琵琶湖、中国山地に存在することが明らかとなった。
研究概要
岐阜大学応用生物科学部の土田浩治教授・岡本朋子准教授、岐阜大学大学院修了生の田村英之・野田智明・林美紀子・岩田典子・横田侑子・村田雅紀・立松千智・中秀司(現 鳥取大学農学部准教授)・加藤貴範、昆虫愛好家の寺章夫氏と小野克己氏のグループは、日本では北海道から中国地方と四国地方まで分布するウスバシロチョウ(ウスバアゲハ)のDNAを使って、その遺伝的多様性を高解像度に分析しました。その結果、ウスバシロチョウは300万年前に中国大陸の系統から分岐し、朝鮮半島もしくは黄海を経由して日本列島に広がったと推定されました。日本列島で最も古い系統は100万年前に分岐した中国・四国地方の系統であり、60万年前に西日本系統と東日本系統が分岐したと推定されました。また、現在の日本列島には少なくとも5つの遺伝的な集団が存在し、それぞれの集団の代表的な境界は、津軽海峡に相当するブラキストン線、糸魚川―静岡構造線に並行に走る線、琵琶湖、中国山地等であることが明らかとなりました。
本研究成果は、2024年12月30日に分子系統学の国際誌であるMolecular Phylogenetics and Evolution誌のオンライン版で発表されました。
研究背景
日本列島の北海道から中国・四国地方まで分布するウスバシロチョウ(ウスバアゲハ)は全面白色の前翅・後翅の一部が黒くなり、それが産地によって変異することが古くから昆虫愛好家の興味を集めてきました。その変異が遺伝的な基盤を持った地理的変異であるのかについては交配実験や飼育実験が行われてきました。日本の生物種の多くは大陸から渡来したものと考えられており、大きく分けて西ルートと北ルートに別れます。西ルートは、さらに、朝鮮半島ルート、黄海ルート、琉球列島ルートに別れると想定されてきました。本種は中国大陸にも分布していることから、これらのいずれかのルートを辿って日本列島に分布拡大したと推定されてきましたが、いずれのルートであるかは未解明のままでした。
【画像:https://kyodonewsprwire.jp/img/202501062428-O3-MW1y9S13】
研究成果
今回の分析にはミトコンドリア全遺伝子と核遺伝子座に存在する3067SNP 2)遺伝子座を分析に使いました。その結果、本種は308万年前に中国大陸の系統から分岐して日本列島に渡来して、106万年前に中国・四国系統が分岐し、62万年前に西日本と東日本系統が分岐したことが明らかとなりました(図1)。現在、本種は朝鮮半島に分布しないことや、300万年前には現在の黄海が陸地であったことを考えると、黄海が陸地で会った時代に日本へ渡来したと推定されました。
【画像:https://kyodonewsprwire.jp/img/202501062428-O4-384E1ffF】
図 1. ミトコンドリア遺伝子の全配列から推定された日本の系統(西日本系統、東日本系統、中国・四国系統)と中国の大陸系統の分化時期(赤色の数字, 単位は100万年).
日本国内の地域性を主成分分析で解析した結果、日本列島の各地域に明確に分かれることが明らかとなり、静岡県付近にその境界が存在することが明らかとなった。
【画像:https://kyodonewsprwire.jp/img/202501062428-O5-8gZm5Hvv】
図 2. SNP遺伝子座の主成分分析から明らかとなった地域個体群の関係. 上の図は対象とした日本の地域であり, 下の図が主成分分析結果である. 静岡県を境に明瞭に地域に対応した個体群に分かれる.
日本国内の地域性をミトコンドリア遺伝子とSNPで分析した結果、ミトコンドリア遺伝子では日本列島に3つの遺伝的集団が存在し、SNPでは5つの遺伝的集団が存在することが明らかとなりました(図3)。これらの集団の代表的な境界線には、ブラキストン線(津軽海峡)、糸魚川―静岡構造線と並行に走る線、琵琶湖、中国山地等が存在することが明らかとなりました(図3)。
【画像:https://kyodonewsprwire.jp/img/202501062428-O6-7IO6vyyB】
図 3. ミトコンドリア遺伝子とSNP遺伝子で明らかとなった個体群間の境界(ミトコンドリア遺伝子:赤色, SNP遺伝子:青色).
今後の展開
本研究の成果は、本種が西ルートを経由して日本列島に分布拡大をしたことを証明したものであり、生物地理的に重要な知見と考えられます。しかし、北ルートも否定されたわけでは無く、ミトコンドリア遺伝子の一部を解析した結果では、東日本系統が西日本系統より古いことを示されており、今後はこの分岐年代をより正確に推定する必要があると思われます。また、中国大陸に生息する個体群との比較研究が、本種の分布拡大に及ぼした過去の要因と形質の進化をより詳細に明らかに出来るものと考えられます。
研究者プロフィール
土田浩治教授・岡本朋子准教授は、本学応用生物科学部生産環境科学課程に所属する教員で、それぞれ、昆虫の集団構造の分析、昆虫と植物間相互作用の解明、野生動物と生息地環境との相互作用の解明を行っている。鳥取大学の中秀司准教授(岐阜大学修了生)は昆虫の化学的情報伝達の研究、田村英之氏、野田智明氏、林美紀子氏、岩田典子氏、横田侑子氏、村田雅紀氏、立松千智氏、加藤貴範氏は本学修了生、寺章夫氏と小野克己氏は昆虫愛好家である。
用語解説
1)ブラキストン線:津軽海峡に引かれた陸上動物の境界線。イギリスの動物学者トーマス・ブラキストンが提唱し、その後ブラキストン線と呼ばれるようになった。
2)SNP: Single Nucleotide Polymorphism (一塩基多型) ゲノム塩基配列中に見られる多型現象でこれまでのものより高精度な集団解析に使われる。
論文情報
雑誌名:Molecular Phylogenetics and Evolution
論文タイトル:Unraveling the potential structure of a Parnassius butterfly in Japan: Insights into expansion history
著者:Hideyuki Tamura1, Tomoaki Noda1, Mikiko Hayashi1, Yuko Fujii1, Noriko Iwata1, Yuko Yokota1, Masanori Murata1, Chisato Tatematsu1, Hideshi Naka1#, Akio Tera, Katsumi Ono, Kakeru Yokoi1$, Takanori Kato1, Tomoko Okamoto1, Koji Tsuchida1*
DOI: https://doi.org/10.1016/j.ympev.2024.108278
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