解説:上坂樹里の朝ドラヒロイン抜てきが示す“一つの理想” オーディションで“10代”選出は8年ぶり

2026年度前期の連続テレビ小説「風、薫る」で見上愛さんとダブル主演を務める上坂樹里さん
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2026年度前期の連続テレビ小説「風、薫る」で見上愛さんとダブル主演を務める上坂樹里さん

 2026年度前期のNHK連続テレビ小説(朝ドラ)「風、薫る」で、見上愛さんとダブル主演を務める“もう一人のヒロイン”に上坂樹里さんが選ばれたことが、6月3日に行われた会見で発表された。2410人の応募があったというオーディションによる選出だという。現在19歳で、俳優キャリアは3年ほどというフレッシュさも魅力の上坂さんの抜てきが示したものとは? 近年の傾向をもとにひもといてみたい。

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 ◇のん、土屋太鳳、芳根京子、葵わかな、永野芽郁が同じく10代で

 かつて「若手女優の登竜門」と言われることの多かった朝ドラ。そういった側面を視聴者に印象付けてきたのが、ヒロインオーディションだ。

 内容的にもエポックメイキングであった2013年度前期「あまちゃん」ののんさん以降、2015年度前期「まれ」の土屋太鳳さん、同後期「あさが来た」の波瑠さん、2016年度前期「とと姉ちゃん」の高畑充希さん、同後期「べっぴんさん」の芳根京子さん、2017年度後期「わろてんか」の葵わかなさん、2018年度前期「半分、青い。」の永野芽郁さんが、10代後半から20代前半のときにオーディションによってヒロインに抜てきされ、それぞれの作品を通じて大きく知名度を上げた。

 また、2014年度後期「マッサン」のシャーロット・ケイト・フォックスさんのように、“朝ドラ初の外国人ヒロイン”も誕生した。

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 近年に目を向けると、2020年度前期「エール」の二階堂ふみさん(主演・窪田正孝さんの相手役)、2021年度後期「カムカムエヴリバディ」の上白石萌音さんと川栄李奈さん、2022年度後期「舞いあがれ!」の福原遥さん、2023年度後期「ブギウギ」の趣里さん、2025年度前期「あんぱん」の今田美桜さん、2025年度後期「ばけばけ」の高石あかりさんがオーディションによってヒロインの座を射止めてきたが、発表の時点での年齢が10代となると、8年前の永野さんまでさかのぼらなければならない。

 永野さんより前にも、葵さんや芳根さん、土屋さん、のんさんといったところが10代のころにオーディションによって朝ドラヒロインに抜てきされていて、「若手女優の登竜門」のイメージ定着に一役買ってきた。そういった意味でここ最近は、趣里さん、高石さんあたりをのぞくと、オーディションこそやってはいるものの、結果的に少々新鮮味に欠ける、良くも悪くも手堅い人選に落ち着いてしまっていたことは否めないだろう。

 ◇即「若手女優の登竜門」の復活とはいかないが…

 では、今回の上坂さんの選出によって、即「若手女優の登竜門」の復活かと言われれば、そんなことはなさそうだ。実際「風、薫る」の次作となる2026年度後期「ブラッサム」の主人公役には、オーディションなしのオファーという形で、現在30歳の石橋静河さんがキャスティングされていて、これはこれで「面白い人選」と言える。

 結局は制作陣が求める人材によって大きく左右されてしまうもの、と言ってしまえばそれまで。ただ、上坂さんを例にとれば、時代を切り開いた女性たちの生き様をドキュメントとドラマで伝えるNHKの番組「ヒロイン誕生!ドラマチックなオンナたち」(2022年)にキャリアの初期の段階で起用されており、その後も同局の単発ドラマ「生理のおじさんとその娘」やオムニバス形式の「あれからどうした」(ともに2023年)にヒロイン役で出演と、NHKによって俳優としての才能を「発掘」された、という見方もできる。

 ヒロイン選出の発表の時期的に、今年1月期のTBS系日曜劇場「御上先生」の演技の印象が強くなってしまっている上坂さんだが、筆者が彼女の名前を最初に認識したのは「ヒロイン誕生!」出演時。パイロット版のタイトルが「ヒロイン誕生!朝ドラな女たち」だった番組から、後に本当の朝ドラヒロインが誕生(番組名が指し示す“ヒロイン”は題材となった女性の方だが)したわけだが、朝ドラにおいて、上坂さんのような若い才能をオーディションによって抜てきする形は、やはり“一つの理想”といえよう。来春のヒロインぶりに注目だ。

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