橋本淳:「べらぼう」北尾重政役も話題 “舞台人”としての思い、覚悟や矜持も 加藤拓也作・演出「ここが海」に挑む

加藤拓也さん作・演出の舞台「ここが海」に出演する橋本淳さん
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加藤拓也さん作・演出の舞台「ここが海」に出演する橋本淳さん

 NHK大河ドラマ「べらぼう~蔦重栄華乃夢噺~」で人気絵師の北尾重政を演じ、話題の橋本淳さんが、9月20日からシアタートラム(東京都世田谷区)で上演される、加藤拓也さん作・演出の舞台「ここが海」に挑む。本作は、性別を変更したいと告げられた家族の物語で、「性別が変わってゆく家族を受け入れることができると証明する話」と位置付ける橋本さんに、“舞台人”としての思いなどを聞いた。

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 ◇現在進行形でいろいろなところにある家族の話

 第30回読売演劇大賞・演出家賞部門優秀賞、第26回鶴屋南北戯曲賞ノミネートと話題となった2022年の舞台「もはやしずか」から3年ぶりに、加藤さんと再びタッグを組んだ橋本さん。

 橋本さん自身も「脚本の制作段階から携わり」2年半の準備期間を経て、間もなく上演を迎えようとしている。

 「最初はテーマ性が大きいので、そこに意識があったのですが、改稿を重ねていく変遷も見てきて、本を読み返していくうちに、『ジェンダー』という大きなテーマはあるのですが、現実にも現在進行形でいろいろなところにある家族の話だなと変わってきて、いまは“関係性のドラマ”だと感じています。いろいろな悩みを誰しもが持っていて、当たり前に傷ついて悩んでいる。でも今回の作品は、性別が変わっていく家族を受け入れることができると証明する、という話でもあるので」

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 現時点で経験がなくても、今後、経験するかもしれない、誰しもが近い場所にある話。橋本さんは配偶者から「性別を変更したい」と告げられる主人公・岳人を演じる。

 「岳人はライターという職業柄、いろいろなものを読み、書いている人でもあるので、知識量はある程度あるのかなという印象と、人の話をちゃんと聞くし、協調できる。すごく優しいんですよね、常に相手のことをずっと考えているというか。読みやすい、分かりやすい、あとは『時短』とかを求められる時代の中で、『果たしてこれでいいのか』と思いながらも、生活がかかっているからやらなくてはいけないっていうそのジレンマ、バランスの中で必死に生きている人物だと思います」

 ◇自分自身の価値観を疑い続けなくては

 そんな岳人に性別変更の意志があることを告げる友理役で黒木華さんが出演。橋本さんとは「もはやしずか」に続く共演となる。また岳人と友理の子供・真琴は、映像作品を中心に活躍し、今回の舞台出演で新たなステップを踏み出す中田青渚さんが演じることが決まっている。

 橋本さんは普段から、本作のテーマにある「ジェンダー」だけでなく、「人を見た目で判断しない。個人個人の価値観にはめない。相手を尊重する」ことを心がけているとも話す。

 「これってジェンダーを抜きにしてもとても大事なことで、だから、自分自身の価値観を疑い続けなくてはいけないとは思っています。年齢を重ねると、自分の価値観にどんどんと囚われてしまいますし、自分の人生を否定されたくないから、どんどんと自分を肯定するマインドになっていく。だから、価値観を疑うという意志を持ち続けていかなくてはいけないなって」

 ◇伝わることの強さ、持ち帰るものが多さは演劇の良さ

 舞台経験豊富な橋本さんだが「この作品を見たことによって考えたり、悩んだり、助けになったり、プラスに少しでもなれたらいいのかなっていうのは、どの作品もそうなのですが、この作品は特にその思いが強い」と明かす。

 「それぞれの人生にどう影響を与えられるか、とまで言うとおこがましいのですが、そういった作品のピースになれたらいいなとは思っています」

 改めて、舞台ならでは“やりがい”をどう感じているのか、橋本さんに聞くと……。

 「お客さんと共有空間を作ることができるというのはいちばん大きいですよね。お客さんにとっては事件であり、共犯という関係値を作れるのは舞台でしかないと思っていて、今回の会場のキャパは200人弱で、一度に見られる方が少ないということはあるのですが、伝わることの強さ、持ち帰るものが多さは演劇の良さだなって。まるで自分ごとのように経験して帰っていくので影響力は大きいですし、その影響力の半面、演じる側に立ったときは覚悟と矜持をちゃんと持たないといけない。それがないと“板の上”に立つ資格はないと思っているので、そこは忘れないようにしたいと思います」

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