上坂すみれ:シティポップへの憧れ アニソンとの関係 「アニソン meets CITY POP」インタビュー

「『アニソン meets CITY POP~売野雅勇×林哲司の世界~』アニソンとシティポップが出逢ったあの日」に出演する上坂すみれさん
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「『アニソン meets CITY POP~売野雅勇×林哲司の世界~』アニソンとシティポップが出逢ったあの日」に出演する上坂すみれさん

 作曲家の林哲司さんと作詞家の売野雅勇さんが手掛けてきたアニソンは近年、シティポップというカテゴリーとして国内外で再評価されている。そんな楽曲群の創作にまつわる貴重なトークとゲストアーティストによるライブで構成されるライブイベント「『アニソン meets CITY POP~売野雅勇×林哲司の世界~』アニソンとシティポップが出逢ったあの日」が11月9日、一ツ橋ホール(東京都千代田区)で開催される。同公演は、ヒャダインさん、森口博子さんがMCを務め、稲垣潤一さん、井上あずみさんとゆーゆさん、影山ヒロノブさん、中西圭三さんらに加え、人気声優の上坂すみれさんが出演することも話題になっている。シティポップは、1970年代後半から80年代にかけて日本で流行したポップミュージックで、上坂さんが生まれる前に発表された楽曲ばかりだが、大きな影響を受けているという。上坂さんにシティポップへの思い、アニソンとの関係性について聞いた。

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 ◇シティポップの時代に思いを馳せ

 シティポップは、1980年代を中心にアニソンにも影響を与えた。「シティハンター」「きまぐれオレンジ☆ロード」「赤い光弾ジリオン」などシティポップのサウンドを取り入れたアニソンが再評価されている。

 「当時はまだシティポップという言葉はありませんでしたが、オシャレなポップスがアニメのオープニング、エンディングになっているんですよね。当時はそれがオシャレという認識はあまりなかったところから、時を経て、ジャンルが分かれて、また交差するというのが面白いですよね」

 上坂さんはテクノ歌謡やメタルなどを趣味として挙げているが、シティポップも自身のルーツになっている。林さんが提供した楽曲も発表している。

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 「私のアーティスト活動は趣味のものしかやっていなくて、メタルや電波ソングと同じくらい大事な柱としてシティポップがあります。シティポップはずっと聴いていますね。小さい頃は、シティポップとして聴いていたわけではなく、リアタイではない曲の方が好きな子供だったので、昭和の名曲コンピを聴いて、いいなと思っていた曲が、林さんの作曲だったり、売野さんの作詞だったりすることを大人になってから知りました。普段とは違う世界で、大人っぽい曲が多く、海や葉山、ドライブ、カーステレオ、タバコ、お酒……と子供にはぼんやりとしか想像できない世界が詰まっていて、ファンタジーとして憧れていたんだと思います」

 上坂さんはシティポップの再評価の前から愛聴してきた。

 「私が子供の頃は2000年代なので、等身大の歌が流行していたと思うのですが、シティポップは、行ったことのない世界が描かれていて、新鮮でした。譜割りもシンプルで聴きやすく、大人になって聴くと曲の編成は特殊だったりしますが、印象に残るし、すぐに口ずさめます。サビの一行目の歌詞が曲のタイトルになってたりすることも多く、子供ながら覚えやすかったところもありました。それに、音作りがリッチなんです。私はエコーの効いたドラムの音が好きです。テレビから流れている曲を聴くのではなく、自分でCDを再生して出会えた喜びもあったんだと思います」

 シティポップを聴きながら、自分が生まれる前の時代への憧れを募らせていた。

 「私は、シティポップに限らず今じゃない何かが好きで、前提のズレみたいなのを楽しんでいます。電話は固定電話で、電話ボックスが出てくるし、みんな電話番号を覚えている。海で出会う……とか。本当に80年代の人がそうやって暮らしていたかは分かりませんが、知らないからこそ、先入観を持たずにその文化の時差を楽しんでいます」

 大人になってからシティポップ的な世界を体験する機会はあったのだろうか?

 「初めて銀座に行った時。これだ!と感動しました。聖地がいっぱいありますし、数寄屋橋の交差点を何往復もしてみたり…。葉山にも行ってみました。ただ、電車で行ったので、あんまりシティポップっぽくないかもしれません。免許がないので、シティポップ的な生活が難しいところがありまして……。憧れのままにしておいていいのかな?」


 ◇好きが詰まった贅沢なイベント

 「『アニソン meets CITY POP~売野雅勇×林哲司の世界~』アニソンとシティポップが出逢ったあの日」で、上坂さんは、松原みきさんの名曲「真夜中のドア~stay with me」、アニメ「美味しんぼ」主題歌「Dang Dang 気になる」、林さんが手掛けた上坂さんの楽曲「海風のモノローグ」を披露することが発表されている。

 「『真夜中のドア』は世界的に有名なシティポップですし、こんなバズり曲を私が歌っていいのかな? イベント側からの提案でして、私としては怖くて提案できなかったので、言っていただけるならやるしかないです。カラオケで歌ったことはありますが、人前で歌うのは初めてです。海外でも人気なのは、洋楽のエッセンスがあるのかもしれません。私はシティポップが全部好きで、この曲のどこが受け入れられたのか分析できていませんが、最初からクライマックスがくるというのは、アニソンっぽくもあり、いつ聴いてもキャッチーだと思います」

 「Dang Dang 気になる」は、林さんのデビュー50周年記念トリビュートアルバム「50th Anniversary Special A Tribute of Hayashi Tetsuji - Saudade -」でも上坂さんがカバーした。

 「元々大好きな楽曲で、『美味しんぼ』のファン、林先生のファンとしても光栄です。『美味しんぼ』を知ったのは大学生以降で、『美味しんぼ』のアーバンな一面を現している素晴らしい主題歌だと思います。電話ボックスにいる栗田さん、バーにいる山岡さんも印象的です。当時のアニメは分かりやすい子供向けのアニソンも多かったですけど、そんな中で骨太なシティポップが主題歌になっているのが格好いいです」

 「海風のモノローグ」は、上坂さんが2022年に発表したアルバム「ANTHOLOGY & DESTINY」に収録されている。上坂さん自身が作詞した。

 「まさか林先生に曲をいただけるとは思っていなかったので、書いては消して……と一文一句を大切に作詞しました。私は基本的に推しに会いたくないタイプなのですが、このチャンスを失うのはもったいないという気持ちもあって、『菊池桃子的なアーバンなシティポップが好きです』とお伝えしました。林先生は偉大な方なのに、私に対して対等にお話してくださって、その後もコンピに参加させていただき、こうやってライブにも参加させていただけるなんて、信じられない気持ちです」

  マンガ「ハートカクテル」「菜」などで知られるマンガ家でイラストレーターのわたせせいぞうさんがイベントのビジュアルを手掛けた。上坂さんは、わたせさんのファンでもある。

 「『ハートカクテル』がすごく好きなので。びっくりしました。シティポップ界隈でわたせ先生の絵を見て、電子書籍で『ハートカクテル』を買ったんですけど、紙でもほしくなって買い直しました。映画のようで、多くを説明しないところがオシャレなんですよね」

 林さん、売野さん、わたせさん、豪華アーティスト……と上坂さんの“好き”が詰まったイベントになっているようだ。

 「セトリが本当に強いんです。林さん、売野さんのお話もレアですよね。当時を知っている人も初めて聴く人もシティポップのすごさを感じる楽曲ばかりです。生演奏というのもすごく贅沢です。自分が歌うのも楽しみですが、好きな曲がいっぱいあるので、客席で見たいくらいです」

 シティポップとアニソンの接点を味わえるだけでなく。懐かしさと新しさが交差するイベントになりそうだ。生演奏の臨場感と上坂さんら豪華アーティストの歌声を堪能してほしい。

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