スクウェア・エニックスの人気ゲーム「ファイナルファンタジー」(FF)シリーズが18日、25歳の“誕生日”を迎えた。1987年12月18日に第1作が世に送り出され、以後は日本を代表する人気ゲームに成長。ゲーム業界の勢力図を変え、映画化もされ、新型ゲーム機の売り上げをけん引するなど、今もゲーム業界にインパクトを与え続けている。シリーズの足跡を振り返った。
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FFが業界に最もインパクトを与えたのは97年に発売された「FF7」だった。FFの生みの親であるプロデューサーの坂口博信さんの決断で、任天堂のスーパーファミコン(SFC)からソニー・コンピュータエンタテインメント(SCE)のプレイステーション(PS)に乗り換えたからだ。
当時、「映画とゲームの融合」を追求し、世界を視野にハリウッドを超えるフルCG映画づくりを目指していた坂口さんは、FFのフル3DCG化を実現するため、当時業界トップだった任天堂のSFCではなく、容量の大きいCD-ROMが使えるPSを選んだ。前作のFF6はSFCで255万本を売っており、後発のPSが伸び悩んでいた時代に当時の社員は「社内のほとんどが不安だった」と振り返るほどだった。
完成したFF7は、CD-ROM(最大650MB)3枚組みという膨大なデータ量を生かしたグラフィックは衝撃を与えた。さらにヒロインの一人が志半ばで非業の死を遂げるという当時のゲームの常識を破る悲劇を描き、国内では前作「6」を大きく上回る325万本、北米でも大ヒットし、世界で累計990万本という出荷数を記録した。また、PSの普及台数もFF7発売前の97年1月の500万台から97年末には1000万台を突破。「ソフトの力」で業界の主導権を任天堂からSCEへと動かしたとされる歴史的作品となった。
そんなFFはどうやって生まれたのか。87年当時、スクウェアはパソコンゲームからファミコンに参入したものの、ゲームの売り上げが伸び悩み“存亡の機”に立たされていた。若き日の坂口さんが「最後に大きな夢を見よう」と、残された資金と社内の開発陣を総動員し、RPGの開発に挑んだ。
画家の天野喜孝が描く大人っぽいキャラクターや戦闘シーンを客観視点で見える画面づくり、「飛空艇」を登場させて圧倒的なスピード感を演出するなど惜しみなくアイデアを注ぎ込んだのが「ファイナルファンタジー」、まさに「最後の夢」をかけたプロジェクトだった。結果、50万本を出荷するヒットとなり、スクウェアの経営も息を吹き返す起死回生の1本となった。
スクウェアが復活し、坂口さんたちは、他のRPGにはないオリジナリティーを追求するため前作を踏襲せず、一から新たなゲームを作るという開発スタイルに挑戦する。「FF3」(90年4月発売)では、初のミリオンを達成。「FF5」(92年12月)では初の200万本に達しFFシリーズはビッグタイトルへと成長した。
FF7の大成功をきっかけに、坂口さんは念願のフルCG映画製作に挑戦する。さらに「FF8」と「FF9」の開発を並行して行い、複数ラインでFFを開発することになる。99年2月に発売されたFF8は、シリーズ最高の国内364万本を達成した。だが、「原点回帰」をテーマに開発されたFF9(00年7月)は、国内279万本(PS)にとどまり、右肩上がりだったゲーム市場にも陰りが見え始める。01年に同社は他のRPGの開発を凍結して、FFにクリエーターを集中投下する方針を打ち出し、「FF10」を7月に発売した。PS2初となったが、ゲーム機本体もけん引し、250万本を出荷してFFの底力を見せ付けた。
ところが、同じ7月に全米で公開されたフルCG映画「ファイナルファンタジー」は話題を集めたものの、北米地域の興行収入が3000万ドル台と計画の半分に終わり、日本での上映もわずか2週間で打ち切りになってしまう。スクウェアは139億円の特別損失を計上。映画事業からの撤退を発表し、責任を取って坂口さんはスクウェア副社長を退いた。FFは最大の危機を迎えた。
この難局に、和田洋一さんがスクウェアの新社長に就任した。和田社長は、立て直しの切り札として、これまでの「一から開発する」FFの発想を転換し、シリーズ続編の開発を指示。03年3月に「FF10-2」が発売され、コストを抑えて200万本(国内)を超えるヒットをたたき出した。さらに、FF7の世界観を映像化した「アドベントチルドレン」や携帯電話用アプリ「ビフォアクライシス」、アクションをメーンにしたスピンオフゲーム「ダージュオブケルベロス」といった多面展開へとつなげていった。
また、初のオンラインRPGに挑戦した「FF11」では、日米欧のユーザーを同一サーバーに接続させることで、サーバーのピークタイムを均一化しコスト削減する新手法を打ち出した。ピークで50万人の有料会員を獲得し、オンラインゲーム市場を拡大した。
「FF13」は、シリーズ展開を織り込み、仮想の神話「ファブラ・ノヴァ・クリスタリス」を軸にした共通の世界観を構築した。FF13(09年12月)はPS3ハードとしては国内最高の185万本以上を出荷した。そしてPSPの「FF零式」(11年10月)、FF13の続編となるPS3用ソフト「FF13-2」(11年12月)が発売された。13年にはFF13のヒロインの最後の戦いを描く「ライトニング リターンズ FF13」の発売も予定されている。
また本編だけでなく、ゲームの世界観を活用したシリーズのスピンオフも次々と生まれている。FFシリーズの歴代のキャラクターが勢ぞろいする「ディシディア FF」(08年12月、PSP)、シリーズの名曲を活用した音楽ゲーム「シアトリズム FF」(12年2月、3DS)も登場。そしてソーシャルゲームでもFFの人気は変わらず、「FF ブリゲイド」が会員数300万人以上を集めている。
山あり谷ありのFFだが、誕生から24年目の11年6月にはシリーズ累計1億本を突破し、なおも成長を続けている。「背水の陣」から「最後の夢」としてスタートしたFFは、25度目の誕生日を迎え、26年目へと新たな歴史を刻み、今も夢への挑戦を続けている。(毎日新聞デジタル)
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