名探偵コナン
#1146「汽笛の聞こえる古書店4」
12月21日(土)放送分
ここ数年「プリティーリズム」や「アイドルマスター」「アイカツ!」「ラブライブ!」といったアイドルを題材にしたアニメの新作が途切れなく投入され、次々と商業的成功を収めている。その潮流を追い、ヒット作が続く理由を探った。
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こうした「アイドルアニメ戦国時代」は、前ぶれなくやって来たわけではない。単なる「歌手」をモチーフとした作品を除くとして、歌に加えカリスマ性がある「アイドル」を不可欠の要素とした「超時空要塞マクロス」(1982年~)を原点と考えても、30年以上もの歴史があるジャンルだ。
アイドルというテーマは「魔法の天使クリィミーマミ」(1983年~)から始まる「ぴえろ魔法少女シリーズ」(スタジオぴえろ制作の魔法少女アニメ)に受け継がれる。だが、ヒロインの服は基本的に“着たきり”であり、楽曲の数も限られていた。それは当時のビジネスモデルの基礎が魔法のバトンなどの「玩具」にあったからだろう。まだアイドルアニメは「魔法少女」の変化球の一つでしかなかったのだ。
「魔法」を切り離した初期の成功例が「アイドル伝説えり子」だ。実在のアイドルとタイアップした本作は、迫力あるせりふ回しや波瀾万丈のドラマといったアニメ独自の魅力に満ちていた。だが、華やかな楽曲の数々や、現実のステージを再現したダンスシーンなど、芸能界の協力ゆえの「アニメの外部」によるところも大きい。
アイドルアニメにとって突破口となったのが、90年代末のグループアイドルの定着だろう。一人ひとりのキャラクターに商品価値を認め、持ち歌を次々と用意し、メンバー内での競争あり……といった現代アイドルアニメの必須要素は、97年に誕生したモーニング娘。に見られるものだ。
2005年に登場したアーケードゲーム「アイドルマスター」は、「架空アイドル」の文脈に取り込んだ。「プロデューサー(プレーヤー)が応援するアイドルをオーディションで勝ち上がらせ、全国トップを目指す」仕組みは、今の女児向けアイドルゲームの原形といえる。個性豊かな複数のアイドル、バリエーションに富んだ楽曲がユーザー層を広げた功績は評価されるべきで、ゲーム・アニメを問わず「架空アイドルもの」がこぞってまねるところとなった。
いまや“異端”から“定番”となったアイドルアニメは、朝や夕方の女児向けから深夜のマニア向けまで顧客層を広げている。それでも、作品ごとにファン人気や商業的な結果といった成功、失敗の区別は厳然としてある。
成否を分ける要因の一つは、緊密なメディアミックスの連携の有無だ。「プリティーリズム」シリーズや「アイカツ!」は業務用ゲームが“原作“だが、新アイドルや楽曲の投入はタイミングが細やかに調整されている。主なターゲットの女児にとって、ひいきのアイドルになりきりことができるのは、この種のゲームにとって生命線だ。
また「ラブライブ!」は、雑誌企画や声優ユニットによるライブ展開がアニメ放送よりも2年以上も先行していた。現実のアイドルにも下積み期間があるように、「いきなりアニメでデビュー」では、グループアイドルの顔を見分けてもらうことさえ難しい。
そして魅力ある楽曲群も「アイドル」なら外せない。もっとも、この面ではAKB48の総合プロデューサーの秋元康さんをはじめ最先端のアイドルシーンで活躍する才能や、「アイドルマスター」での実績あるクリエーター集団「MONACA」などが作品の壁を越えて参加しており、大きな差は付いていない印象だ。
また、「作画のキレイさ」は、こと深夜アニメにおいては決定的な重みがある。どんなに素晴らしい楽曲や声優の演技があっても、作画の崩れがひどければ台無しだ。人は夢を見るためにアイドルを見るのだから「夢がさめる瞬間」を作るのはこの手のアニメでは厳禁だろう。
クオリティーの高い楽曲、コンピューターグラフィックス(CG)の導入で毎週の放送に堪えるダンスシーン、十分な期間をかけた丁寧なプロモーション。最近のアイドルアニメの安定感は、第一線のアイドル以上の「プロデュース」体制が支えているのだ。(多根清史/アニメ批評家)
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