セレブ女優のプライベートをインターネットを通じてのぞき見した青年が、予想外の事態に陥る姿を描いたスリラー映画「ブラック・ハッカー」が全国で公開中だ。主人公の青年に「ロード・オブ・ザ・リング」シリーズで知られるイライジャ・ウッドさん、のぞき見される女優を「ガールフレンド・エクスペリエンス」(2009年)のサーシャ・グレイさんが演じた。今作を手がけたスペインの新鋭・ナチョ・ビガロンド監督に電話で話を聞いた。
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映画は、青年ニック(ウッドさん)が人気女優のジル(グレイさん)とレッドカーペットを歩き、一緒にディナーも楽しめるという企画に当選したところから始まる。イベント当日、ホテルに宿泊していたニックの元にマネージャーという男から電話が入り、女優は体調を崩して予定をキャンセルしたと告げられる。おわびに彼女の部屋を盗撮したライブ映像をパソコンでモニターし、見られるようにすると言われたニックは、疑いを抱きながらも興味本位で女優のプライベート映像をのぞき見し、やがてとんでもない事態に陥っていく……という展開。全編モニター映像を駆使した斬新な場面が続き、そこに監視社会という現代的な問題もはらんでいる。
−−今回のモニターを使用した映像表現は、斬新な手法に思えますが、何がきっかけでこのような手法を思いついたのですか?
僕はプロデューサーたちに、インターネットがスクリーンで重要な役割を果たす映画を作るよう依頼された。僕はアイデアを練って、すべてがインターネットを通して、リアルタイムに語られる映画を提案したんだ。
−−今回の撮影で苦労した点、工夫した点はどういうところですか?
最も複雑だったのは、すべてのPCのウインドーを同じ物語に一致させることだった。それはまるで、パズルを解くようなもので、脚本段階でパズルが始まり、ポストプロダクションの最後の日にやっと完成したよ。
−−この作品で監督が一番こだわった部分はどこですか?
僕がやりたかったことの一つは、危険にさらされている若い女性を登場人物として使うことだった。それは古くからの伝統だが、僕は今までとは違う、もっと想像力に富んだ方法で使おうと思ったんだ。
−−今作のイライジャ・ウッドさん、サーシャ・グレイさんは、はまり役ですが、始めからこの配役を決めてたのでしょうか。
イライジャと僕は古くからの友人で、僕は最初から彼を想定していた。サーシャは脚本が完成してからキャスティングされた。プロデューサーが女優の候補リストを僕にくれて、そのリストの中で彼女が一番興味深い名前だった。
−−そのお二人と仕事をされていかがでしたか?
僕は友人のイライジャを想定してニック役を書いていたので期待通りだったよ。最初はイノセントで、びくびくしているが、徐々に暗い人物へと変化していく。一緒に仕事ができてよかった。
そして、サーシャは、自分を変えようと努力しているこの女性役を演じるのに完璧な女優だった。それは、彼女自身のアイデンティティーだからだ。そして彼女はこの作品でそれを体現した。
−−結末は最初から決まっていたんでしょうか。それともスタッフ間で議論があったんでしょうか。
最初から僕は「アイデンティティーとうそ」についての映画を作りたいと思っていたし、結末もこうなると決めていた。それに僕たちは人が変身する映画を作りたかった。常に変化するのは自分のアイデンティティーなんだ。この映画は、最初はのぞき見的なスリラーとしてスタートするが、全く違ったものとして終わる。
−−監督は最先端の映像を追求していますが、その楽しさと苦労を教えてください。
一番エキサイティングなことと、一番難しいことは同じだ。映画製作のプロセスを通して、作品を作るということだけではなく、この映画を実現させるための方法も作り出さなければならなかった。僕たちの製作方法でこれまでに映画が作られた事例がなかった。それはエキサイティングなことだけれど、僕たちは数多くの間違いも犯した。
−−監督の次回作をみなさん期待しています。もし、次回作の構想があるようでしたら、教えてください。
怪獣映画にひねりを加えた映画を作りたいね。
−−この作品を映画館で見るのを楽しみにしている日本のファンへメッセージをお願いします。
みなさんが僕の映画を見てくださって本当に光栄です! 映画を楽しんでもらって、いろんな議論が広がることを期待しています。ありがとう!
<プロフィル>
ナチョ・ビガロンド監督は、2007年のデビュー作「タイム・クライムス」で一躍脚光を浴びた。スペインで成功を収めたこの作品は、「ドラゴン・タトゥーの女」のスタッフの手でハリウッドリメークが進行中だ。続いて11年の「エンド・オブ・ザ・ワールド 地球最後の日、恋に落ちる」でもオリジナリティーを発揮し、今作でもイライジャ・ウッドさんと女優サーシャ・グレイさんと組み、初の英語作品「ブラック・ハッカー」を完成させた。
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