この「ちはやふる-めぐり- インタビュー」ページは「ちはやふる-めぐり-」のインタビュー記事を掲載しています。
競技かるたをテーマにした末次由紀さんの人気マンガ「ちはやふる」から生まれた連続ドラマ「ちはやふる-めぐり-」(水曜午後10時)が放送中だ。広瀬すずさん、上白石萌音さんらが出演して人気を博した実写映画3部作から10年後の世界を描き、當真あみさん、原菜乃華さんをはじめとした気鋭の俳優陣のフレッシュな演技が早くも話題を集めている。なぜ今、新章を制作したのか、プロデューサーの榊原真由子さんに話を聞いた。
「ちはやふる」は、「BE・LOVE」(講談社)で2007~22年に連載されたマンガ。綾瀬千早が、転校生の綿谷新との出会いを通じて競技かるたの魅力に目覚め、幼なじみの真島太一らかるた部の個性的なメンバーたちと共にかるたに情熱を燃やす……というストーリー。2016年から公開された実写映画3部作では、広瀬さん、野村周平さん、新田真剣佑さん、上白石さんら豪華キャストが出演。シリーズ累計興行収入は45億円を突破し、青春映画の金字塔を打ち立てた。
今回のドラマは、映画化した3部作から10年後の世界を描くオリジナルストーリー。舞台となる梅園高校の競技かるた部は部員が少なく、廃部寸前。當真さん演じる高校2年生の幽霊部員・藍沢めぐるが、古文の非常勤講師で、新たに競技かるた部の顧問となった大江奏(上白石さん)と出会い、運命が大きく動き出す。
プロデューサーの榊原さんによると、本格的に企画が動き出したのは2023年だが、大ヒット作の宿命として続編やリメークの話はその前にもあったという。しかし、3部作で完結したこともあり、実現には至っていなかった。一方で、映画のプロデュースを担当した北島直明さんが、広瀬さんをはじめとする当時のキャストに、十年後の再会を約していたことも手伝って、映画から年を重ね、コロナ禍などを経て時代が変わった中で、改めて「ちはやふる」を制作したいという機運が高まった。
「今の時代にやるなら、ちゃんと今の時代を投影した作品にしたいなと思っていました。(2016年の)映画の頃と一番違うのは、やはりコロナ禍だったと思うんです。それこそ(室内に多人数が集まる)かるたはものすごく影響を受けたと思いますし、そもそも学校にも行けなくなってしまった。まだ10代なのに青春の楽しみを我慢して、黙って勉強して将来に備えるという風潮になっている。でも、今この瞬間、一瞬に全てを懸けることが、将来を支える宝物になるということを『ちはやふる』を通して伝えたかったんです」
原作の末次さんとは何度も会って丁寧にコミュニケーションを重ねた。「何十人、何百人というキャラクター一人一人が先生の子供なんです。そんな世界をお預かりするからこそ、末次先生と一緒に作らないとだめだという気持ちになりました」と明かす。
そんな末次さんから最初に言われたのは「同じことはしないでほしい」という願いだった。「『あんなにすてきな映画があるんだから、同じような主人公で同じような物語を作るのではなく、ちゃんと今に即した違うものを見せてほしい』というお話をうかがったんです。當真あみさんが演じるめぐるは、広瀬すずさんが演じた千早とはまったく違う主人公像になりました。根底にある思いや世界観は共通していても、映画とはまた違う作品になったと思っています」
「ことあるごとに何度もお会いして、先生から『こういうのはどうですか?』とすてきなアイデアをいただいたり、かるたの練習や撮影現場にいらっしゃってキャストたちと触れ合ってくださったり。脚本についても先生ととことん話し合って、私たちの思いも伝えて、先生の思いもうかがって、それを反映して直してというのを何度も重ねて作り上げていきました」。もちろん「先生の思いや描きたいものは、原作に詰まっている」と全50巻になる原作コミックも何回読んだか分からないぐらい読み返したという。
「オリジナルだからこそ原作に立ち返って、そこに込められているメッセージを拾い上げることを最優先にしていました」と語る榊原さん。原作へのリスペクトを最優先にしながら丁寧に紡ぎ上げた本作。令和の今だからこそ響く新たな「ちはやふる」を見守っていきたい。