この「高山一実 インタビュー」ページは「高山一実」のインタビュー記事を掲載しています。
今をときめく俳優やアーティストに、影響を受けた人について聞く「運命の出会い」。今回はアイドルグループ「乃木坂46」の1期生、高山一実さんに、デビュー小説「トラペジウム」(2018年、KADOKAWA)を書き進めていくにあたって、導いてくれた小説家の先輩、湊かなえさん、朝井リョウさん、羽田圭介さんとの思い出を語ってもらいます。
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「乃木坂46」時代、他のメンバーがモデルや俳優をしている中、自分の立ち位置はバラエティーなのかなと思って、頑張らなきゃと考えていた時期があったんですね。とりあえずテレビに映るためにどうしたらいいんだろうと、無理をして、自分が分からなくなってしまって。その時期はすごくしんどかったですね。
結構時間がかかって。徐々に無理をするのをやめたんです。そして、小説を書くようになってからは、締め切りに追われるつらさはあったけれど、しんどいことがあったら、小説に書けばいい、小説を書いている人はこのグループにいないから、これを頑張れば唯一の立ち位置になれる、と考えられるようになりました。
「ダ・ヴィンチ」(KADOKAWA)の連載「乃木坂活字部!」で、小説を書く前に、作家さんとの対談を1年させていただいたんです。
小説を書き始めるにあたって、朝井リョウさんと対談したときに、「難しい言葉を使わなくていいと思う」とシンプルにアドバイスされたんです。朝井さんに言われるまでは、小説って少し難しい言葉で書いた方がいいのかなと思って、あえて難語にしてしまっていた時期があるんですけれど、朝井さんが「それはやらなくていい」と(デビュー小説を執筆する)序盤で言ってくださって、背伸びしてカッコいいことを書くのってカッコ悪いよなと思って、それはやめました。
羽田圭介さんからは、「どうしたら小説が書けますか?」と聞いたときに「ずっと読んでいる人なら書けます」と断言されたんです。小説はすごく読んでいた時期があったから、その言葉がとても自信につながって、書くことができました。
ずっと憧れだった湊かなえさんは、小説を書く前の連載ではお会いできなくて、本になる段階で初めてお会いできたんです。「トラペジウム」の発売前ではあったんですが、湊さんの10周年を記念した小説「未来」(2018年)が発売されるタイミングで、初めて憧れの湊さんにお会いできて、私は涙が止まりませんでした。
「未来」を読んだときに、私が「トラペジウム」に書いているメッセージがここに書かれているから、もう「トラペジウム」を出さなくていいやと思ったんです。それを湊さんにお伝えしたら、「かずみんの言葉で、かずみんが書くことで絶対に意味があるから、大丈夫」と言っていただけた。すごくうれしかったし、湊さんの人柄にも改めてひかれました。
湊さんの作品はたくさん映像化をされていますが、「映像化で印象に残っていることはありますか?」とお聞きしたら、「エンドロールが流れたときに、これまでこんなにたくさんの人が関わってくれていたんだという見方になる」とおっしゃった。そういう発想はなかったなと思って。だから、今回の「トラペジウム」はエンドロールがすごく楽しみです。
また湊さんにお会いしたいから、そのためにはこれからも小説を書かないとな、とは思うんですけれど、今年、絵本「がっぴちゃん」を出版して、いったん絵本で頑張りたいと思ったんです。小説は「トラペジウム」で、25年間の自分のことをあまりにも書き過ぎたので。もうちょっと“自分貯金”、頭の中のストックがたまったら考えたいと思います。
◇プロフィル
1994年2月8日生まれ、千葉県出身。2011年、乃木坂46の第1期メンバーオーディションに合格し、2012年にデビュー。2021年11月にグループを卒業。「オールスター後夜祭」(TBS)のMCを2018年から務めているほか、「クイズプレゼンバラエティー Qさま!!」(テレビ朝日系)でもMCを務めている。デビュー小説が原作の劇場版アニメ「トラペジウム」(篠原正寛監督)が5月10日に公開。