高山一実:「こういうアイドルになりたかった」理想像を描いた小説「トラペジウム」 映画化への思い語る

劇場版アニメ「トラペジウム」について語った原作者の高山一実さん
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劇場版アニメ「トラペジウム」について語った原作者の高山一実さん

 アイドルグループ「乃木坂46」の1期生、高山一実さんの小説家デビュー作が原作の劇場版アニメ「トラペジウム」(篠原正寛監督、5月10日公開)。原作は、絶対にアイドルになるという夢を胸に高校生活を送る東ゆうが主人公の青春物語で、累計発行部数は約30万部とヒットを記録した。アイドルがアイドルを描いた原作について、自身が脚本やアフレコなどに深く関わったという作品について、高山さんに聞いた。

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 ◇東西南北の“輝く星たち”を仲間にする高校生の物語

 「トラペジウム」は、高山さんが乃木坂46在籍中の2016年に雑誌「ダ・ヴィンチ」(KADOKAWA)で連載を開始し、2018年に書籍が発売された。アイドルになるべく「SNSはやらない」「彼氏は作らない」「学校では目立たない」「東西南北の美少女を仲間にする」という4カ条を課して高校生活を送る東ゆうは、別々の高校に通う東西南北の“輝く星たち”を仲間にする……という展開。

 アニメは、CloverWorksが制作。声優の結川あさきさんが東ゆう、上田麗奈さんが華鳥蘭子、羊宮妃那さんが大河くるみ、相川遥花さんが亀井美嘉の声を担当し、グローバルボーイズグループ「JO1」の木全翔也さん、お笑いコンビ「ウッチャンナンチャン」の内村光良さんも出演している。

 ◇「フィクションはアイドルと相性がいい」

 2021年に「乃木坂46」を卒業した高山さん。小説を書き始めた2016年は、現役アイドルだった。アイドルを書くのに怖さや躊躇はなかったのだろうか。

 「それが全くなくて。小説を書く連載を始めることが先に決まって、いろいろな案が出てきた中で、他の作家さんにないものを強みにして書けたらと思って、『アイドル』を一つキーワードとして入れていました。小説の強みで、キャラクターに言わせてしまえば別に私じゃないですよ、と言えるなと。フィクションは、アイドルと相性がいいなと思って書いていました」と振り返る。

 「トラペジウム」とは、オリオン星雲の中心部にある四つの重星(接近して見える恒星)のこと。その位置関係から「不等辺四角形」(どちらの二つの辺も平行でない四角形)を意味する。登場するアイドルを4人組にした理由は?

 「東西南北がパッと浮かんで、キャッチーかなって思いました。4人組のアイドルって今の時代、あまりいないですよね。私がアイドルのときは大人数のアイドルがブームだったので、逆に少人数アイドルを目指す話を書いてみたいなと思って、それが『トラペジウム』につながりました」

 ◇「めちゃくちゃ共感した」シーンは?

 小説を出版した2018年から1年もたたずにアニメ化の話が舞い込んだ。高山さんは「本当にうれしくて、二つ返事で『ぜひ!』とお返事したのを覚えています」と語る。アニメと原作との違いは?

 「アイドルになってからのシーンは、アニメの方が濃く描かれています。小説のときは、文章でアイドルになってからの話を書くのにためらいがあって。でも、アニメならアイドルのリアルさのようなものを入れても暴露っぽくならないと思いました。リアルな部分を何か足したいと思って、ボイストレーニングのシーンや4人が歌う楽曲も入れてあって、何か新しいものになって、良いなと思いました」

 アニメ化に際しては、脚本作りの段階から、声優のオーディションやアフレコにも立ち会い、共演経験があった内村さんに自ら声をかけるなど、深く関わった。

 4人が芸能活動を始めた際に、主人公のゆうが「こんなにうれしいことはない」と感動するシーンは自身の卒業コンサートを思い出し、「めちゃくちゃ共感した」という。

 「(2021年11月に)東京ドームで卒業コンサートをしたときに、この景色見たら、他では何も感動しないなと思ったんですね。子供のころから憧れだったドレスもオーダーメードで作っていただいて、こんなにすてきな景色をいただいて、うれしさもあるけれど、その分の悲しさも押し寄せてきて。本当に良い経験させていただいたから、ちょっとやそっとでは感情が動かなくなっているなという寂しさはあります」

 高山さんが「書いていた当時も今も共通して、こういうアイドルに、なれるものならなりたかった」という思いを込めた「トラペジウム」。「理想像でもあるし、アイドルとして成功してほしかった」という主人公ゆうたちの活躍や、見えないところでの苦悩などをスクリーンで確かめたい。

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