この「ゲームの名は誘拐 インタビュー」ページは「ゲームの名は誘拐」のインタビュー記事を掲載しています。
6月9日午後10時から放送・配信されるWOWOWの「連続ドラマW 東野圭吾『ゲームの名は誘拐』」で、主演を務める亀梨和也さん。本作の魅力を「受け取り側としての欺かれ方が見ていて気持ちいい。考察もできて、そういう感じの流れはみんな好きなのでは。濃密の中に壮大さを感じる」と表現した亀梨さんに、役作りや撮影の舞台裏を聞いた。
◇役作りの“裏テーマ”は「手」
ドラマは東野さんの同名小説(光文社文庫)が原作。手掛けていた大型プロジェクトから突然降板させられた広告代理店の敏腕プランナー、佐久間駿介(亀梨さん)が、自分を引きずり下ろした大企業の副社長に一矢報いるため、その娘・葛城樹理(見上愛さん)と共謀して狂言誘拐を企てることから始まるミステリー。順調に滑り出したかに思われた佐久間の“誘拐ゲーム”は、やがて予想外の展開を見せていく。
亀梨さん演じる佐久間は、頭脳明晰(めいせき)で計算高く、仕事も恋愛も“ゲーム感覚”でクリアすることに快感を覚えるという役どころ。役作りでは佐久間が狂言誘拐に走ることになる心情を表現するため、「そこまでの行動を彼がとる、決断するためのプライドの傷つき方が重要だと思ったし、そういったプライドの持ち方をどうキャラクターに落とし込んでいくかを意識しました」という。
「同じ言葉をかけられても人間は十人十色。感じ方が違う。佐久間に関しては一般的な常識よりは、どうしてあそこまで大胆なことができるのかという、“ならでは”のプライドの傷つけられ方にこだわりました」
広告代理店の敏腕プランナーを表現するため、亀梨さんは「大々的にではないけど、自分の中でキャラクター作りの裏設定の一つとして、手をキーワードに持っていました」と盛り込んだアイデアを明かす。
「自分のクリエーティブを伝える、構築することに対してのアプローチとして意識的に手を使った。あと寄りで撮ってもらった目の表情や顔で伝えられるものもあるけど、今回はより具体的に感情や脳の回転だったり動かし方だったりを表現するため、ボディランゲージを有効的に使っていこうと考えた」
佐久間の行動を理解できるかという質問に、亀梨さんは「人には自分では測り知れない側面があるなという恐怖感はある。絶対にダメとわかっていてもやってしまう弱さは自分も持ち合わせていると、ときに考えることもある」と一定の理解を示しつつ、「仕事ではその追い込まれ方を意識的に利用する場合もあるけど、人に対して自分が思いがけないアクションを取ってしまうところまで行かないように」と言ってうなずく。
◇性格は役と正反対? 「行き当たりばったり」
樹理役の見上さんから「おちゃめ」と評されていた亀梨さんは、「なぜか無口な印象が強くて。別に無口じゃないし、あまり面白くないと思うけどボケたがりでもある(笑い)。そういう側面が実はあまり届いてない。僕は基本的にそっちで生きてきているつもりだけど」とユーモア交じりに話す。
そんな見上さんとは「現場の時間だけでは足りないと感じ、早い段階でお話の場を設けさせてもらった」と明かす。「役柄の関係値をどう掘り下げていくかについて良いコミュニケーションが取れた結果、現場でもスムーズなやり取りができた。エピソードの重ね方、流れの中でも良い詰め方ができたと思う」と成果を口にする。
共演者とのディスカッションを重視する姿勢は「より近年、強くなってきている」といい、「より多くの視点を持ちたいとか、より多くの意見を取り入れたい意識が高まってきた。求めていただいているものをより良く構築するにはどうすればいいかに対しての角度や思考に変わってきている。共同作業を楽しみたい」と変化を口にする。
“ゲーム”を仕掛ける側となる佐久間を演じる亀梨さんだが、自身は「あまりプランを立てないタイプ。計画を立てて生きていくことをもう少し取り入れなきゃと思うほど行き当たりばったり。何が起きるかわからない方が本質的には好きなのかも」と苦笑い。
「決して『自信があるから何が起きても大丈夫』という発想ではなくて。僕は思いがけないことが人並み以上になぜかあった方(笑い)。そうすると構築したことが崩れた場合のダメージがストレスになる。回避のために何かをなくした時期があったことが、今のベースになっているのかな」と分析する。
「こういう年齢になって、何が起こるかわからない激動の時代というところで、計画性や先を見据えた思考で何かをジャッジしていく作業をもう少し取り入れていきたい思いもある」と前を向いた。
6月9日から日曜午後10時にWOWOWプライム・WOWOWオンデマンドで放送・配信。全4話。(取材・文:遠藤政樹)