この「劇場版「暗殺教室」みんなの時間 インタビュー」ページは「劇場版「暗殺教室」みんなの時間」のインタビュー記事を掲載しています。
松井優征さんの人気マンガが原作のアニメ「暗殺教室」の完全新規制作の「劇場版『暗殺教室』みんなの時間」が、3月20日に公開された。2015年1~6月、2016年1~6月に放送されたテレビアニメ、2016年公開の劇場版「劇場版『暗殺教室』365日の時間」以来、約10年ぶりとなる新作で、これまで映像化されていなかったエピソードが完全新規でアニメ化された。殺せんせー役の福山潤さん、潮田渚/蛍役の渕上舞さんに、約10年前に始まったテレビアニメの収録時の思い出や、新作劇場版への思い、エンドロールの後の“ラストシーン”について聞いた。(※インタビューには本編のネタバレが含まれます)
◇テレビアニメ初期は不安も 「こんなにみんなが仲良くなるとは」
--新作劇場版は、2025年に始まった「アニメ『暗殺教室』10周年の時間」プロジェクトの大団円として公開されました。制作を知った時の気持ちは?
福山さん 「どこを?」「何をやるの?」というのが最初の感想でした。もちろん劇場版ができるうれしさはあるのですが、物語としては既にきれいに終わっていて、総集編という形の劇場版は既に制作しているので、一報をいただいた時はピンと来なかったんです。ただ、プロジェクトを聞いて、実際台本を見ると「なるほど、こういう形で」と腑(ふ)に落ちました。最初はもう本当にサプライズもサプライズでしたね。
渕上さん 喜びももちろんですが、やっぱり驚きの方が大きかったですね。テレビアニメ放送から10周年ということで、なんとなく“匂わせ”を感じてはいたのですが、ボイスドラマやウェブアニメなのかなと。それが劇場版だと聞いて驚きました。
--「アニメ『暗殺教室』10周年の時間」プロジェクトの一環として、2025年4月から1年かけてテレビアニメが再放送されています。約10年前、テレビアニメが始まった頃を振り返って感じることは?
福山さん こんなにみんなが仲良くなると思っていなかったよね?
渕上さん そうですね。最初の頃の収録はどんなだったかな。とにかく人が多くて。
福山さん そう、めちゃめちゃ多かった。学校では必ずクラスの中でグループが分かれるように、大人組と若い子組、みんなでお菓子を囲む組とか。プロデューサーが毎週趣向を凝らしたお菓子を差し入れてくれて、AパートとBパートの収録の合間にはスタジオのロビーでお菓子をいただいていました。
渕上さん そう!
福山さん みんなそれありきでお腹をすかしてブースの外に出て、差し入れを食べて戻っていくみたいな。本当に学校のお昼休憩みたいな感じでした。最初の頃はみんな緊張していたのが、いつの間にか緒方(恵美さん、堀部糸成役)さんのおかげもあって、とにかく一緒にご飯を食べに行くようになって。緒方さんがいる・いないはデカかったですね。
渕上さん そうでしたね。
福山さん 作中でみんながお互いのことをちょっとずつ分かっていくのと、我々がみんなを分かっていくのが、すごく重なっていた感じでした。
--当時、「暗殺教室」はアニメ化される前から大人気作でした。どんな意気込みで収録に臨んでいましたか?
渕上さん 人気作品というプレッシャーもありましたが、渚のような男の子のキャラクターをこれだけしっかりと演じさせていただく機会がほぼ初めてだったので、「ちゃんとやれるだろうか」という不安はかなりありました。収録は初めましての方が多かったですし、先輩も多くて、もうありとあらゆるプレッシャーがあって、正直、特に序盤は楽しめてはいなかったです。
福山さん そうなんですね。
渕上さん ただ、それが今になってみると後悔なんですよ。今思ってもしょうがないんですけど、もっと話しかけたり、遊んだりすればよかったなって。後にそういう後悔をするくらい楽しい現場ではあったのですが、プレッシャーに押し潰されそうな私は楽しめてはいなかったです。
--徐々に共演者とも仲良くなっていくにつれて、演技も含めていい意味で力が抜けていった?
渕上さん そうですね。緒方さんとの食事会や、プロデューサーの差し入れもそうですし、本当にいろいろな方の力があって、現場が柔らかい、楽しい、まさに学校のような雰囲気になって、最終的にはみんなで休憩時間に手押し相撲で遊び出すくらいになって(笑)。
福山さん やってた! あとは、みんなで旅行も行きました。打ち上げ旅行という形で、100%全員ではないですが、クラスの生徒、先生とかなりの出席率で、みんなで箱根に行きましたね。
渕上さん プライベートで、本当に学生の旅行みたいでした。女子風呂でみんなで話したりして、3年E組をそのまま現実に移したような感じでした。
◇素晴らしい原作を「みんなで楽しもう」 作品作りの面白さ、喜び
--福山さんは、殺せんせーというかなり特異なキャラクターを演じています。収録が始まった当初はいかがでしたか。
福山さん もちろんどんな作品でもメインキャラクターをやらせてもらう時はプレッシャーがありますが、あまり気負っていなかったですね。こんな機会をいただけること自体が宝くじに当たったみたいなものでしたし。オーディションも楽しかったですが、僕が殺せんせーをやるとは思っていなかったです。というのも、原作もまだ7、8巻くらいで、死神の話(殺せんせーの過去にまつわるエピソード)も描かれていなかった。僕がやることになるとすれば、殺せんせーは元人間で、しかも30歳前後の青年という、当時は原作に出ていない設定があった場合のみと思っていたので。
--オーディションの時点でそこまで考えていたのですね。
福山さん そうじゃないと、誰がやったって正解がないし、誰がやっても正解なキャラクターじゃないですか。だからといって、自分が真っすぐやればいいだけの話でもないので、ちゃんと自分で役を作ろうと思ったら、そういった設定がない限りは僕がやることはないだろうと。だから、オーディションから楽しんじゃおうと思っていたら、まさかの自分がやることになりました。じゃあ、なおさらみんなで楽しめたらいいなと。とにかく僕は収録現場が遊び場みたいな状態になっていました。
--すごく雰囲気のいい現場だったと。
福山さん そうですね。やっぱり岸さん(岸誠二監督)も上江洲さん(シリーズ構成・脚本の上江洲誠さん)も飯田さん(音響監督の飯田里樹さん)も、プロデューサーの皆さんも含めて、本当の学校のような感じで。原作が素晴らしいのは間違いないから、それを神棚に上げるんじゃなくて、「みんなで楽しもうよ」「だからアイデアがあったらどんどん出そう」ということを第1話の収録前から言っていただいたんです。それならと思って、台本にないセリフを上江洲さんに「これどうですか?」と持っていったら、超速で集英社に確認を取ってくれて「やりましょう」と。やりたいと思って提示したことを、今では考えられないくらいのスピードでこの作品はかなえてくれました。作っていく面白さや喜びをクラスのみんなで感じられたのではないかと思います。
渕上さん 遊びのような楽しさと、良いものを作る仕事という意味でのピリッとした空気感が本当にうまいバランスで組み合わさっていた現場だったなと思います。
福山さん そうですね。俺もふざけたことやったら、ちゃんと怒られてましたから(笑)。
◇新作劇場版の殺せんせー「何も変えないと決めていた」 蛍役に「幸せ」
--約10年の時を経て、再び殺せんせー、渚を演じることになりました。新作劇場版の収録はどのような意識で臨んだ?
福山さん 意識は何も変えないと決めていました。テレビシリーズでやっていた時の延長です。僕らは一度最後までやり切りましたが、今回の劇場版はエピソードの途中なんですよね。だから、あの当時楽しんでいたものをそのままやるだけだよなと、ただそれだけなんです。劇場版だから特別な何かを提示しようというのは、今回に関しては違うだろうと。むしろ、その当時のものがここにあるというのが一番いいと感じていたので、やり方もスタイルも全部当時のままやらせてもらいました。
--久々の「暗殺教室」の収録をした感想は?
福山さん リアルタイムでテレビ放送をやっていた時よりスキルもフィジカルも今のほうが上なので、無茶なことももっとできるようになっています。だから、ラクにできるようになった部分もあるし、相変わらず大変な部分もある。体力的にどこまでできるかなと一回試してみて、終わった後に音響監督の飯田さんに「あ、疲れますね」と言ったら、「あんたが勝手にやったんだよ」と言われました(笑)。相変わらず相談に乗っていただける現場でしたし、かなりいろいろなものを拾って、しかも使っていただいてるという状況は10年前と変わらないですね。
渕上さん 10年近く渚を演じる機会はほぼなかったので、「渚を思い出せるかな」「『暗殺教室』の現場を思い出せるかな」という不安は多少ありましたが、アフレコ現場に入ってみると、当時と同じような「暗殺教室」の現場の空気に染まってしまうというか。不安も一気になくなっちゃって。マイクの前に立つと、素直に出てくるものをやるだけというような空気感になっていました。あと、これは私だけじゃなくみんなに対してなのですが、一度テストをやった後に音響監督の飯田さんから「みんな無理に若くやろうとしなくていいですよ」と言われたんです。多分私だけじゃなくて、不安を抱えたり、いろいろ考えて現場に来た人もいらっしゃったかもしれないのですが、その一言があった瞬間から、当時と同じようなラクな空気感にガラッと変わった印象があります。
福山さん 確かに、そういう空気になってた。
渕上さん アフレコが始まってみれば、当時と何ら変わらない。そんな空間でした。あと、本当ににぎやかで、アフレコ現場でこんなに活気がある空間があるのかなというくらい騒がしかったです。
福山さん 僕は一人で録(と)ったので、みんなのその感覚は味わえないですけど、出来上がりを見た時に「あ、一人のほうがよかったな」と思ったんです。それは、映画を見ていただいたら分かると思います。僕には「殺せんせーがいなかった」というのが、逆によかったと思います。
--渕上さんは、劇場版では渚そっくりの少女・蛍も演じています。
渕上さん 蛍を演じる時は、正解がないのでどうしようかなとすごく考えました。原作で登場した時から「いつか演じられたいいな」という淡い期待はあったのですが、いざ演じるとなると、顔は渚そっくりだけど性別も年齢も違うので、どれくらい変えたほうがいいのか、はたまた全く同じがいいのか、どうしたらいいんだろうなと、あえてふわっとした状態でアフレコに臨みました。収録で細かく調整していただいて、キャラ作りをして進めていったので、「暗殺教室」の懐かしい現場ではあるけれど、新作を録っているようなワクワク感もあり、いろいろな感情を味わわせていただいたので、蛍役をやらせていただけて本当に光栄だな、幸せだなと感じました。
◇エンドロール後の“ラストシーン” 「あれは、きますよ」
--新作劇場版の見どころを教えてください。
福山さん ずっと見ていただいている方には、ノスタルジーもあり、アルバムでもあり、同窓会でもあるスペシャルな一本にもなっていますし、まだ(テレビアニメを)最後まで見ていない方は、なぜこれほどまでに3年E組のみんなの中に殺せんせーがいるのか、映画を見た後にテレビアニメ本編で知ることができる。この映画から入ったという方には、「暗殺教室」の面白いところが全部入っています。10周年を迎えるにあたってのスペシャルな感謝を伝える劇場版のはずなんですが、もう一度「暗殺教室」を楽しむための入り口にもなっている。とても意味合いの深い一本になっているので、これまで見ていない方も興味があれば遠慮なく見ていただきたいです。どんな方も必ず納得いただけるものになっていると思います。
渕上さん 冒頭から「何やってんだろう?」と思うくらい、素晴らしいクオリティーの高い映像が流れるんです。
--冒頭では、かなり迫力のある宇宙の描写があります。
福山さん あれ、妙に凝っていたよね。作画のよさをあのシーンに割きすぎじゃないかって。
渕上さん 私も最初、見る作品を間違えたかなって、びっくりしちゃって。それくらい、10周年にふさわしいクオリティーになっています。あとは、面白いエピソードもあれば、途中で歌い出すようなエピソードもあって、いろいろなものが詰め込まれてるので、全てが見どころと言える作品だなと思います。
--エンドロールの後には、10年後の3年E組の姿が描かれるというサプライズがありました。あの“ラストシーン”を見て感じたことは?
福山さん 俺、試写会でみんなと一緒に見なくてよかったと本当に思いました。あれは、きますよ。テレビアニメでもそうでしたが、僕はどうしても生徒たちを送り出した側になるので、あの場所にはいない人じゃないですか。だから、もし仮に10年前の自分がテレビアニメが終わった後、あのシーンを見た時に同じように感じるかというと、ちょっと違うと思うんです。当時だとフレッシュすぎて。10年経った今の自分がこれを見て、みんなのセリフを聞いて、「俺は今、このシーンにこう感じるような大人になったのか」と教えてもらえたのは、自分の中ではとても意外でした。なので、本当にすてきな作品に関われたんだなと改めて感じたシーンでした。
渕上さん ああいうことができる作品ってなかなかないと思いますし、ありとあらゆる方面に愛されている作品なんだなと実感しました。試写で見ていて、もちろん収録をしてるので最後の最後にあのシーンが来ると分かっているんですけど、それでも終わった後にすぐ席を立てないというか、余韻がすごいなと思いました。なので、見てくださる方々が最後びっくりするのか、うるっときてしまうのか、10年後のキャラクターたちの姿が見られてうれしいなのか、どの気持ちが先に出るんだろうかと考えてしまいます。
スタッフ、キャストがまさに楽しんで作ったアニメ「暗殺教室」の魅力は10年の時を経ても色あせない。新作劇場版は、懐かしさもありながら、10年経ったからこそ描ける新しさも加わったスペシャルな一作となっている。令和に復活した「暗殺教室」の世界にじっくりと浸りたい。(しろいぬ/MANTANWEB)