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悪魔くん:“二代目悪魔くん”梶裕貴はニュータイプ? 古川登志夫と語る33年ぶり新作アニメ

「悪魔くん」の一場面(c)水木プロ・東映アニメーション

 水木しげるさんのマンガ「悪魔くん」の新作アニメシリーズが、Netflixで配信されている。1989~90年に放送、公開されたテレビ、劇場版アニメ以来、約33年ぶりの新作アニメで、三十数年後の世界が舞台となり、悪魔に育てられた天才少年・二代目悪魔くん/埋れ木一郎が、相棒のメフィスト3世とともに、悪魔の引き起こす怪事件に挑む。1989年版アニメの初代悪魔くん/埋れ木真吾役の三田ゆう子さんが初代悪魔くん、メフィスト2世役の古川登志夫さんが続投。梶裕貴さんが二代目悪魔くん/埋れ木一郎を演じ、古川さんがメフィスト2世の息子のメフィスト3世も演じることが話題になっている。梶さん、古川さんに約33年ぶりの新作アニメへの思いを聞いた。

 ◇33年ぶり新作にプレッシャーも

 --約33年ぶりの新作アニメとなりました。

 古川さん またやれることがうれしかったです。僕自身、ガチの水木先生ファンですしね。しかも、2世だけでなく3世もできるということがうれしかったです。

 --平成版の放送終了後、メフィスト2世を演じる機会はあった?

 古川さん ほとんどなかったんです。なかなかこういう機会がなかったこともあって、うれしかったです。タイムラグがあるので、声が出るのか?ともなりましたが。

 梶さん 何をおっしゃいますか! タイムラグなんて全く感じませんでした。あるとすれば、変わらぬ美声に、さらに深みが加わった点かと。

 古川さん 梶さんとは「悪魔くん」の前にも別作品で共演させていただく機会があったんです。また、共演させていただけることもうれしかったです。

 梶さん こちらこそ……心の底から光栄です!

 古川さん 最近の若い人はすごいなあ……と思ったり。

 梶さん 今回、こうやってバディー役として出演させていただけることが夢のようです。オーディションが3次審査まであり、選考期間中はずっと胃が痛かったです。一つ通過するごとに勝手に期待してしまい、同時に、落ちた時のことを考えると……(笑い)。1989年版は、今も変わらず多くの方に愛され続けていますし、相当なプレッシャーも感じていました。でも、いざ収録が始まってみると、古川さんはじめとする大先輩方が本当にお優しくてお優しくて。過度なプレッシャーなど杞憂(きゆう)だったんだなと思いましたね。もちろん、緊張感はずっと抱えていましたが。

 古川さん 梶さんは、とにかくうまいんです。リスペクトしかないですよ。見事に梶さんの悪魔くんを演じられています。あの抑えたところが素晴らしいんです。

 梶さん せりふを文字だけの印象で判断すると、一見どうしても、一郎は「嫌なヤツ、鼻につくヤツ」に感じられがちかもしれないですが……本人の中では決して悪意があるわけではなく、客観的事実をストレートに言ってしまっているだけなんですよね。加えて、頭が良すぎるので、物事を徹底的にロジカルに説明できてしまうし、説得力もあるんです。その辺りが、どうしても無神経に聞こえてしまう難しいキャラクターだなと。でも実際は、決してクールでもヒールでもなく、空っぽ、なんですよね。愛や人間としての感情を知らないだけなんです。なので、その辺りの表現については、オーディションの時から課題の一つだろうなと感じていました。メフィスト3世や真吾(初代悪魔くん)と関わる中で、彼が少しずつ“人間らしく”なっていく様を、どのようなグラデーションでもって着地させるか。慎重に、丁寧に向き合っていきました。

 古川さん グラデーションが素晴らしいんですよね。監督(佐藤順一総監督)にもその都度、質問をして、議論をしていましたよね。僕なんかは適当にやってしまうんですけど、理論的な演技プランで、非常に勉強になりました。ニュータイプだ!と思いました。

 梶さん 古川さんが“ニュータイプ”とおっしゃると、重みがありますね(笑い)。アフレコでは、ディスカッションする機会と時間をいただけたことがありがたかったです。

 古川さん 梶さんが質問すると、監督は「どうなんでしょうね?」「梶さんはどう思いますか?」と言うことがあるんです。コミュニケーションしながら、引き出そうとする。丁寧に丁寧に作っていました。

 --梶さんの演技はボソボソとしゃべっているようで、言葉がしっかり伝わるところもあります。

 古川さん あれは技がないとできないんですよ。僕は“引き算の演技”と言っているんです。やるぞ!と足し算をしたくなるものですが、そこを抑えるというのはフラストレーションがあるものです。梶さんは、その“引き算の演技”をこの若さでできてしまう。僕が梶さんくらいの年齢の頃にできたのか?というと、怪しいです。メフィスト3世は直情的でいいので、僕は自由にやっていますが。

 梶さん 恐縮です。メフィスト3世は半分悪魔ですが、すごく人間らしくて、一郎との対比が面白いんですよね。僕としては、古川さんのお芝居が側にあってくれたからこそ一郎の演技に集中できたと感じています。これまでの自分は、どちらかというと感情的な役が多かったのですが、そこから一歩進み、本作で、古川さんとのバディとして、この難役に挑戦させていただけたのは感謝しかありません。

 --一郎とメフィスト3世のやり取りが印象的です。

 梶さん ラーメン屋さんのシーンで終わるエピソードが結構あり、そこでは大体、最後に少しアドリブが入るんですが、そのやり取りが楽しかったですね。自然に言葉が出てくるような感覚がありました。二人の凸凹感が愛しいんです。

 ◇親子の演じ分けは?

 -ーメフィスト2世、3世をどう演じ分けようとした?

 古川さん 親子なので、声が似ていてもいいんじゃない?と開き直っているところもあったんです。2世は年齢的な老け感も考えていたのですが、二人が一緒に戦っているシーンは、一緒になっちゃうんですよね(笑い)。

 梶さん 全然違いましたよ! 演じている役者さんが同じだからこそ親子と分かるエモさもあり、そこには1989年版からの歴史があるんだなと感動しました。収録の時からそう思っていましたが、完成した映像を見ると、なおそう感じるんです。声も違うのですが、心の部分が全く違っていて、「ここまで変えられるんだ……!」と勉強させていただきました。古川登志夫さん、ここにあり!です。

 古川さん まあ、割りきってやっていましたけどね。

 --一郎はおなじみの「エロイムエッサイムエロイムエッサイム、我は求め訴えたり」というセリフもあります。

 梶さん 子供の頃、ポーズ含めてマネをしていましたし、作品において印象的なフレーズなので、やはり緊張しましたね。オーディション時のセリフにもあったのですが、どうしても(初代悪魔くん役の)三田ゆう子さんを意識してしまうんです。憧れが強すぎて(笑い)。でも、あえて変えなくてはいけない。難しかったです。第1話で、古川さんが聞かれている中やるのは、緊張感がすごかったですね(笑い)。

 古川さん 梶さんと三田さんでは「我は求め訴えたり」の言い方が違うんですよね。三田さんは「我は求め、訴えたり」ですが、梶さんは「我は、求め訴えたり」と言っている。「我は求め」「我は訴えたり」と「我は」が両方に掛かっている。その違いが面白い。梶さんは、そこまで考えている。これまでを踏襲するのではなく、あえて変えているんです。

 --全12話が配信中ですが、今後の展開も気になるところです。

 古川さん あの終わり方は謎が残っていますしね。

 梶さん 続きが気になりますよね。最後、衝撃の展開が……!と思ったら、さらに、もう一つのサプライズを残して終わっていきますし。僕も一ファンとして、絶対に続きが見たいです!どうか皆様のお力をお貸しください。引き続き、作品の応援をどうぞよろしくお願いいたします!

 古川さん 皆さんあっての作品ですし、今回の新作と1989年版アニメの共通項、あえて意図的に変えている部分の両方を楽しんでいただけるとうれしいです。

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