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特集「ヤマトよ永遠に REBEL3199」:福井晴敏総監督×氷川竜介 アニメの歴史を変えた「宇宙戦艦ヤマト」 「3199」に受け継がれる魂

「ヤマトよ永遠に REBEL3199」の第3章「群青のアステロイド」のメインビジュアル(C)西崎義展/宇宙戦艦ヤマト3199製作委員会

「ヤマトよ永遠に REBEL3199」の第3章「群青のアステロイド」のメインビジュアル(C)西崎義展/宇宙戦艦ヤマト3199製作委員会

 人気アニメ「宇宙戦艦ヤマト」のリメークシリーズの最新作「ヤマトよ永遠に REBEL3199」の第三章「群青のアステロイド」が4月11日に上映される。「宇宙戦艦ヤマト」は昨年、放送50周年を迎えた。「宇宙戦艦ヤマト」はアニメの歴史を変えた名作で、「3199」は名作の魂を受け継いだ。「宇宙戦艦ヤマト」は当時、何が新しかったのか? 「3199」に受け継がれたものとは? 「3199」を手掛ける福井晴敏総監督とアニメ・特撮研究家の氷川竜介さんに聞いた。

 ◇設定、世界観のリアリズム

(C)西崎義展/宇宙戦艦ヤマト3199製作委員会

(C)西崎義展/宇宙戦艦ヤマト3199製作委員会

 「宇宙戦艦ヤマト」は1974年にテレビアニメ第1作が放送され、それまで“子供のもの”とされ、“テレビまんが”とも呼ばれていたアニメのファン層を大きく拡大し、劇場版アニメも大ヒットするなど社会現象となった。

 氷川さん テレビまんがの時代からアニメの時代へシフトさせた一種のルールチェンジ、ゲームチェンジャー的な作品です。同じ1974年10月に始まったのは「仮面ライダーアマゾン」「グレートマジンガー」「破裏拳ポリマー」「がんばれ!!ロボコン」と、児童向けテレビ番組は活況で、そこから突出して大人びていたんですね。「ヤマト」が出てくる前はロボットアニメばかりだったと言われることもありますが、「ヤマト」の前は「ゲッターロボ」「マジンガーZ」くらいでしょう。「ヤマト」が終わった翌月に始まったのが玩具主導の「勇者ライディーン」です。第2次怪獣ブームとも呼ばれる「仮面ライダー」中心の変身ブームは、「ヤマト」最終回のこと終わりかけていました。「ウルトラマンレオ」も終わり、「仮面ライダーアマゾン」が抜けた穴に「秘密戦隊ゴレンジャー」が入り、その「スーパー戦隊シリーズ」が50周年です。今年は“昭和100年”とも言われていますが、昭和50年終了の「ヤマト」で、“昭和100年”を二つに分けることができます。偶然かもしれませんが、節目がいろいろ同期していて、必然性を感じます。

 放送前年の1973年には「ノストラダムスの大予言」がベストセラーになるなど終末思想ブームもあった。

 氷川さん 1973年12月公開、つまり1974年のお正月映画が「日本沈没」でした。70年の大阪万博で浮かれた気分が反転して、終末ブームの時期です。「ヤマト」の「地球の絶滅まで、あと○日」は、大阪万博のカウントダウンの影響なんですね。時代が要求した作品です。1970年に日本映画界が一度崩壊してテレビの時代にはなりましたが、オイルショックなどもあり、1960年代のアニメのナショナルクライアント、食品や家電スポンサーが退潮して、代わりに玩具メーカーが出てきます。前年には虫プロダクションが倒産しています。「ヤマト」は大会社制作ではなく、プロデューサーが資金を集めたインディーズ作品でもありました。

 氷川さんは放送当時、「宇宙戦艦ヤマト」のファンクラブを作り、アニメを制作したオフィス・アカデミーを訪れた。

 氷川さん テレビのクレジットをたよりに電話帳をめくり、いろいろな会社に電話して、オフィス・アカデミーが制作していることを突き止めました。友だちと見学に行くことになりましたが、本音はセル画がほしくて、ヤマトのプラモデルに塗る本当の色を知りたかったんです。でもスタジオに行ったら、これは何かをしなきゃいけないと思わされ、そこから人生が変わって半世紀です。

 氷川さんをはじめ当時の若者は「宇宙戦艦ヤマト」のどこに魅了されたのだろうか?

 氷川さん ディテールを積み重ね、その積み方が理にかなっていると思わせる。“らしさ”ですね。現場に行って“すごくなる理由”が分かったのですが、設定など裏付けがしっかりあるんです。同時代のアニメだとボタンを押しただけでビームが出たりしますが、本物の機械を動かしているような段取り自体が見せ場になり、臨場感が出ています。その設定、世界観のリアリズムの裏打ちで、壮大なストーリーも信じられる仕掛けです。実際、「ヤマト」って古代進を出さなくても基本ストーリーが説明できるんですよ。侵略されて滅びかけている赤い地球、赤くさびた戦艦大和、地下都市があって宇宙戦艦の一部が見える……と3枚のビジュアルだけで説明が可能で、世界観こそが主役なんです。

 ◇日本の話であることが大きい

(C)西崎義展/宇宙戦艦ヤマト3199製作委員会

(C)西崎義展/宇宙戦艦ヤマト3199製作委員会

 氷川さんは1958年生まれで、福井さんは1968年生まれだ。子供だった福井さんに「宇宙戦艦ヤマト」はどのように見えたのだろうか?

 福井さん 私は「ヤマト」が当たり前になっている世代ですし、10歳違うと大分違います。「ヤマト」が生まれてからの数年間でものすごいパラダイムシフトが起こった。テレビまんがという言葉は、ほぼ絶滅しかけていました。物心がついた時には「アニメ」と言っていました。小学生の頃、お兄さんたちがアニメを見ていて、自分も背伸びをして見ていました。

 「宇宙戦艦ヤマト」が始まってから約5年後、1979年には「機動戦士ガンダム」が始まる。「ヤマト」「ガンダム」は日本のアニメの歴史を大きく変えた。今も共に新作が制作されている。

 福井さん 「ヤマト」が今も新作が作られているのはなぜか?を考えた時、「ヤマト」というタイトルが大きいと思います。ヤマト=戦艦大和=大戦中の日本、というように現実とリンクしているんです。日本以外には、絶対ないものです。大戦中に活躍できず、沈んだすごく強かったはずの戦艦が、地球の危機に際して、改造され、宇宙に行く話です。大戦中の鬱憤を晴らすかのように活躍する話かと思ったら、そうではない。相手を絶滅させてしまったことに対して悔恨の涙を流します。戦後の人間が戦時中の日本をどう受け止めるかは、あの時代まであまりできていなかった。戦後、若者たちの学生運動のようなムーブメントがあったけど、その後に“しらけ世代”とも言われるような、考えるだけ無駄となるような若者が増えていった。真空地帯に置かれた若者を引きつけるようなものが「ヤマト」にはあったんだと思います。「ヤマト」は、日本の話であることが大きかったはずです。そこが「ガンダム」との違いで、「ヤマト」がなくて、いきなり「ガンダム」だったら、ブームになっていないと思います。

 戦争を想起させるが、ファンタジーでもある。

 福井さん 「ヤマト」は、爆発したら、宇宙なのに煙がモクモク上がるけど、大戦中の日本を想起させるために必要な描写なんです。あれは完全な演出です。古代進がケガをした仲間の肩を担いで、煙が上がるシーンも戦記もののようです。「ヤマト」の前に「アニメンタリー 決断」という作品もありましたが、あの質感を意図的に宇宙に持ち込んでいるわけです。戦艦大和が宇宙で活躍するという寓話を成り立たせるための描写だった。戦艦大和の造形から離れた初期デザインのままだったら、おそらくああいう演出になっていない。造形に引きずられて、ベースの物語もあると考えた方がいいかもしれません。

 ◇震災後の日本をテーマに

(C)西崎義展/宇宙戦艦ヤマト3199製作委員会

(C)西崎義展/宇宙戦艦ヤマト3199製作委員会

 リメークシリーズは、第1作をリメークした「宇宙戦艦ヤマト2199」が2012年~13年に劇場上映された。「2199」は、出渕裕さんが総監督を務めた。福井さんは、2017~19年に劇場上映された「2199」の続編「宇宙戦艦ヤマト2202 愛の戦士たち」、2021、22年に劇場上映された全二章の「宇宙戦艦ヤマト 2205 新たなる旅立ち」にシリーズ構成、脚本として参加。福井さんは「3199」で総監督を務め、シリーズ構成、脚本も担当している。

 氷川さん 出渕さんとは10代のファン同士の頃から付き合いがあり、当時スタジオで集めた資料をもとに「ヤマト」の話をよくしていました。初代「ヤマト」は確かに素晴らしいけど、僕たちはベストとは思ってなかったんですよ。 もうちょっとこうすれば……という心残りも多かったんです。ですから「2199」では初代を再構築し、設定にも厚みをつけて、当時話していたようなアイデアを代表して実現してくれたと感じています。本格的なスペースオペラをやろうとしていますし、同時にどうしたら新しいファンに見てもらえるだろう?という努力もしていて、欲張りですよね。一番違うのは、女性中心に固有名のあるキャラクターが増えたことでしょう。それぞれバックボーンを背負ったドラマが絡み合う、群像劇として描いています。元の素材を調理し直し、全く新しい料理として今の時代に提供した。その中でも “ヤマト味”を大事にしているのが嬉しい。それだけに「2202」で後を継いだ福井さんは、大変だったと思います。

 福井さん 「2199」で作ってくれた設定に助けられています。設定を探すと、大体出てくるんです。初代「ヤマト」は、日本にとってあの大戦が何だったか? そこから何を学んだのか?がテーマにありましたが、この時代に大戦を振り返るのは違う。「2202」で引き継いでからは、震災後の日本をテーマにしています。震災だけでなく、SNSの台頭、民主主義の危機など時代性を取り入れています。初代「ヤマト」は当時、大人も一緒に見ていました。ソバ屋に行ったら、夕方に再放送をしていて、おじさんが見ているんです。ほかのアニメは見ないけど、何かが引っかかる。社会派だったからなんです。日本人らしい人たちが出てきて、大戦を想起させるようなことが起きている。下町のソバ屋のおじさんたちにそこが通じたんだと思うんです。

 福井さんは、リメークシリーズで“社会派”の魂を受け継いだ。

 福井さん 今の40、50代に寄り添って、共感できるようなものを目指そうとした。初代「ヤマト」の放送当時、子供だった方をターゲットにしました。その方たちの子供がハイティーンになったり、成人しているので、次の世代にも見てもらえる。そこを狙っています。

 ◇「ヤマト」に引き寄せられた

(C)西崎義展/宇宙戦艦ヤマト3199製作委員会

(C)西崎義展/宇宙戦艦ヤマト3199製作委員会

 リメークシリーズの最新作「3199」は、1980年に公開された劇場版第3作「ヤマトよ永遠に」を原作に新解釈を加え、再構成した。

 氷川さん 原作の「永遠に」は寓話性もあって、今でいうラノベっぽさもあり、その独特のライトさが好きなんです。「永遠に」は、当時「ヤマト」のテーマと言われていた“愛”を、古代と雪の別離で突き詰めてもいます。

 福井さん 氷川さんがAnimeJapan 2025内のイベントでサーシャのことを“かぐや姫”とおっしゃっていて、新たな視点が開けました。寓話性が高く、おとぎ話みたいなところもあります。敵がおどろおどろしく、ファンタジーに寄っているかもしれません。「3199」は、初代由来の社会性をコアにはしているけど、先にかぐや姫の話を聞いていたら、何かスパイスを入れていたかもしれません。

 氷川さん 「2205」ですでに「宇宙戦艦ヤマトIII」の要素も見えていたから、これから大改造が始まるとワクワクしました。知っているようで知らない世界って、面白いんですよ。「3199」は「永遠に」を本気でやる!という点に期待しています。原作を尊重しつつ、料理に例えるとコースの並べ方が違いますよね。

 福井さん 煮込みだったものを炒め物にしたり。

 氷川さん 「こう来ましたか」と、そこが楽しいですね。古代が人間くさく、今風の感情の動きをしているところも新鮮です。現在の世界情勢を踏まえつつ、それぞれの登場人物に意見があって、衝突もある。今の観客に届けたい部分が感じられて、いいですよね。

 福井さん 「3199」は「2205」の時にある程度やることを決めていて、結構前に構想していたので、世界が「ヤマト」に近付いてきたのかもしれません。こんなに生々しい話なのか……と近接してきた。我々に先見の明があったわけではなく、「ヤマト」が元々持ってる寓話性、風刺性が引き当てたところもあると思っています。「ヤマト」に引き寄せられたんです。「ヤマト」だからだからできているのか? 「ヤマト」だからそう見えているのか? そこは分からないところでもあるのですが。

 氷川さん 重くて複雑な内容ですが、スピード感があってスルッと見られるのもいいですね。長さを感じさせない疾走感があります。何度でも楽しめて、その都度発見がある作品になっています。劇場では、余計な情報も入ってこないので、劇場で集中して見てほしいですね。

 福井さん 情報量が多いですし、倍速視聴できないような作品にしようとしています。

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