本屋大賞:「光栄で怖い」冲方丁さんの「天地明察」 大和暦の渋川春海描く 「1Q84」抑え

「2010年本屋大賞」の大賞を受賞した「天地明察」の表紙 (c)角川書店
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「2010年本屋大賞」の大賞を受賞した「天地明察」の表紙 (c)角川書店

 全国の書店員が投票で「いちばん売りたい本」を決める「2010年本屋大賞」が20日発表され、冲方丁(うぶかた・とう)さんの時代小説「天地明察」(角川書店)が大賞に輝いた。沖方さんは「熱気に圧倒されています。夢みたいな話で、受賞が決まるまでは喜ばないようにしよう、自分の中のプレッシャーと向き合わないと喜べない、怖い気持ちでした。本屋大賞は多くの方の書店員さんの熱気が主役なんだなと感じまして、この熱気に従えばいいんだなと思いました。光栄であるとともにますます怖くなってきました」と語った。

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 冲方さんは96年大学在学中に第1回スニーカー大賞金賞を受賞しデビュー。ライトノベルやゲーム、コミック原作、アニメ制作など多方面で活躍。03年「マルドゥック・スクランブル」で、第24回日本SF大賞を受賞している。

 「天地明察」は、江戸時代、囲碁棋士の名門に生まれ、初代天文方となった渋川春海の若き日、和算に打ち込み、時の老中・酒井雅楽頭に見込まれ、日本初の独自の暦となる「大和暦」を作り上げていく姿を成長物語として描いた沖方さん初の時代小説。第31回吉川英治文学新人賞も受賞している。

 本屋大賞は今回が7回目で、過去の大賞受賞作は、04年「博士の愛した数式」(小川洋子)、05年「夜のピクニック」(恩田陸)、06年「東京タワー オカンとボクと、時々、オトン」(リリー・フランキー)、07年「一瞬の風になれ」(佐藤多佳子)、08年「ゴールデンスランバー」(伊坂幸太郎)、09年「告白」(湊かなえ)が受賞。すべての作品が映画やドラマなどで映像化されている。10年度は08年12月1日~09年11月30日の間に刊行された日本の小説で、全国323書店の385人が投票した1次投票で、ノミネート作品10冊を選出。2次投票はノミネート作品をすべて読んだ上で、304書店の350人が投票した。

 沖方さんは「渋川春海という人物を書きたくて仕方なかったんですが、実力が足らずにこれまで延び延びになってしまっていました。渋川春海に熱意と、挫折を経験しても勇気を持てるんだということを、10代の時に教えてもらいました」と話した。映像化については「それはまだ想像を絶する領域ですので、渋川春海を演じてみたいという方がいたらぜひお願いします。という感じです。福山雅治さんはちょっっとコミカルな表情を作られるときがあって親近感があります。でもちょっとかっこよすぎるかもしれませんね」と話していた。(毎日新聞デジタル)

 ◇2010年の本屋大賞の順位

 1位「天地明察」冲方丁(角川書店)▽2位「神様のカルテ」夏川草介(小学館)▽3位「横道世之介」吉田修一(毎日新聞社)▽4位「神去なあなあ日常」三浦しをん(徳間書店)▽5位「猫を抱いて象と泳ぐ」小川洋子(文藝春秋)▽6位「ヘヴン」川上未映子(講談社)▽7位「船に乗れ!」藤谷治(ジャイブ)▽8位「植物図鑑」有川浩(角川書店)▽9位「新参者」東野圭吾(講談社)▽10位「1Q84」村上春樹(新潮社)

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