男くさく、カッコいい映画をいつもみせてくれる香港のジョニー・トー監督。今作はフランスとの合作で、フランスの国民的歌手で俳優のジョニー・アリディさんを主人公コステロに迎え、香港の名優アンソニー・ウォンさんを脇に置いて、極上のハードボイルド・エンターテインメント作品に仕上げている。
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マカオの高級住宅地に住む幸せな一家が銃撃された。奇跡的に助かったアイリーンの元に、初老の男が訪ねてくる。男の名はコステロ。アイリーンの父親だ。夫と2人の子どもを殺されたアイリーンは、コステロに敵をとってほしいと願う。コステロは娘に復讐(ふくしゅう)を誓い、偶然知り合った殺し屋のクワイ、チュウ、フェイロクに全財産をつぎ込んで仕事を依頼する。その男気にほれた殺し屋たち。依頼者と殺し屋の4人の間に友情が芽ばえ始める。犯人を追って香港までやって来た4人は、森の中で犯人グループと激しい銃撃戦となる。負傷したコステロは、記憶を失う運命にあることをクワイたちに打ち明ける。果たして、忘れてしまう男に復讐の意味はあるのだろうか。そして、成し遂げられるのだろうか……というストーリー。
「復讐」は人間の感情の中でも、最もエネルギーのいるものだ。忘れてしまった方が楽になるかもしれないのに、記憶が消えそうになりながらも復讐に燃える男コステロの心情をアリディさんが表情だけで伝えてくる。コステロ役は当初、アラン・ドロンさんの起用を考えていたらしいが、顔のスゴみからいってもアリディさんで正解だ。「仕事はレストラン経営」っていわれても、「どう見ても違うでしょ」と言いたくなる。ファッションだって帽子にトレンチコートのフレンチ・ノワール風だ。顔のスゴみといえば、ウォンさんも負けていないが。
復讐の軸にあるのは、男たちのきずなと家族のきずな。人と人のきずなを、食事シーンに象徴的に盛り込んでいるのが印象的だ。ラスト30分の展開には男の必死さが伝わり、自分に乗り移ったかのように、もうハラハラ、ドキドキする。惜しいと思ったのは邦題だ。原題は「Vengeance(復讐)」。前作は「エグザイル/絆」だったのだし、タイトルは原題のままでよかったのでは?(キョーコ/毎日新聞デジタル)
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