1966(昭和41)年に発生した「袴田事件」を題材に、人が人を裁くことの重さを問いただす映画「BOX 袴田事件 命とは」が29日、公開された。道元禅師を描いた「禅 ZEN」の高橋伴明監督の最新作で、心に響く作品だ。
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昭和41年、みそ製造会社で一家4人が殺害され、自宅に放火された。従業員であった元プロボクサーの袴田が逮捕されるが、袴田は無実を主張。裁判を担当することになった主任判事の熊本は、供述調書を調べるうちに、証拠不十分な上、連日長時間の取り調べを受けた袴田の動機が日替わりであることに着目し、無罪を確信するが、裁判官の合議の末、死刑判決を下すことになってしまう……という物語。
この映画は、昭和11年、2人の男の子がこの世に生を受けるところから始まる。この冒頭はさりげなく見過ごしてしまいそうになるが、非常に意味深い。1人は裁判官に、1人は裁かれる側になるが、一つの事件によって合わせ鏡のような存在になるからだ。
裁く側、裁かれる側、2人の男の苦悩が生々しい。独特なカメラワークと照明の中、登場人物の感情が生々しくリアルに浮き彫りになっている。例えば、取り調べシーンでは、供述に至る人間の心理が手にとるように分かる。犯行を認めさせようと追い詰める警部を演じる石橋凌さんの迫真の演技と、刑事の暴力を受ける袴田を演じる新井浩文さんの体当たりの演技、そして無罪と思いつつ、死刑判決文を書いた熊本を、萩原聖人さんが人間味あふれる芝居で見せる。40年近くに及ぶ苦悩を、2時間足らずの時間の中に凝縮させた。
「袴田事件」は今もなお、再審請求が続いている。「人が人を裁くということは、同時に自分も裁かれること」というせりふが心に残る。真実の仮面をかぶった権力の恐ろしさ、人間の弱さ、勇気、さまざまなものを見つめ直すだろう。(キョーコ/毎日新聞デジタル)
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