注目映画紹介:「オカンの嫁入り」 人情の町・大阪で母娘のきずなを描く

映画の一場面。(C)2010「オカンの嫁入り」製作委員会
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映画の一場面。(C)2010「オカンの嫁入り」製作委員会

 大阪のとある町を舞台に、母と娘の切なくもいとおしい関係を描いた人情をテーマにした映画「オカンの嫁入り」(呉美保監督)が4日に全国で公開される。母親役は大竹しのぶさん、娘役に宮崎あおいさん。「酒井家のしあわせ」(06年)で長編デビューした呉監督が脚本も担当し、咲乃月音さんの小説を脚色した。

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 大竹さん演じる陽子が、ある日、酔っぱらって金髪でリーゼントの研二(桐谷健太さん)を連れ帰ってきた。「お母さん、この人と結婚することにしたから」という突然の宣言に戸惑い、反発する娘の月子(宮崎さん)。研二を交えての奇妙な共同生活が始まるが、やがて母と娘は、きずなを見いだしていく……。

 舞台が大阪という土地柄のせいだろうか、大阪弁のニュアンス、人間同士の関係性が、東京とは微妙に違う。陽子が勤める整形外科医院の院長(國村隼さん)や、母娘が住む家の大家(絵沢萠子さん)らと母娘の関係に、「人情の町」とうたわれる大阪らしさがにじむ。

 不器用ながらも心が通い合う母と娘の関係と、それを見守る人々の心根の優しさが見ていて心地よい。関西だからこそ描けた人情話なのかもしれない。ただ、途中から物語が急転回するのにはいささか戸惑った。涙の場面を引きずらない工夫は施してあるが、個人的には終始笑顔でいたかった。

 しっかりものの月子と、いつまでも大人になりきれない子どものような陽子。役柄にすっぽりとハマった大竹さんと宮崎さんの演技のうまさには改めて脱帽する。桐谷さんの、ヤンキー風兄ちゃんも実に味がある。そして、飼い犬が絡むエピソードを、月子と研二の関係にうまく使うなどした、呉監督のきめ細かい配慮に感心する。4日から角川シネマ新宿(東京都新宿区)ほか全国で公開。(りんたいこ/毎日新聞デジタル)

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