BECK:出足好調、ヒットの理由は… 水嶋ヒロ、佐藤健らイケメン大集合とこだわりの音楽演出

「BECK」のメーンカット(c)ハロルド作石/講談社 (c)2010「BECK」製作委員会
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「BECK」のメーンカット(c)ハロルド作石/講談社 (c)2010「BECK」製作委員会

 水嶋ヒロさんが主演した映画「BECK」が4日に公開された。単行本累計1500万部発行という大ヒット音楽マンガが原作で、バンドメンバーに旬なイケメン俳優が勢ぞろい。「20世紀少年」3部作で知られる堤幸彦監督は演奏シーンや選曲など音楽演出にはとことんこだわり、公開2日で23万人を動員。興行収入は3億円、最終的に30億円を見込めるスタートを切った。ヒットの理由を探った。(毎日新聞デジタル)

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 「BECK」は、ハロルド作石さんが99~08年に「月刊少年マガジン」(講談社)で連載し、単行本全34巻で累計発行部数が1500万部を超える大ヒット作。映画化にあたっては10巻までのエピソードが描かれた。

 平凡な毎日を送る高校生のコユキこと田中幸雄(佐藤健さん)はニューヨーク帰りの天才ギタリストの南竜介(水嶋さん)と偶然出会う。最高のバンドを作ろうとしていた竜介は、ラッパーの千葉(桐谷健太さん)、ベースの平(向井理さん)を誘い、強引にコユキとドラマーとしてサク(中村蒼さん)も加え、バンド「BECK」を結成し、活動を始めた。コユキはバンド活動に没頭し、いつしか天性の歌の才能を開花させ、自分の才能を評価してくれる竜介の妹・真帆(忽那汐里さん)に淡い恋心を抱くようになる。BECKはライブを重ねて徐々に頭角を現し、CDデビューやライブハウスでの成功を手に入れる。そして、伝説のロックフェスティバル「グレイトフル・サウンド」への出演依頼が舞い込むが、音楽シーンを牛耳るプロデューサーの陰謀に巻き込まれ、彼らを引き裂くわなが仕掛けられる……という物語。

 この作品の魅力の一つが旬な若手俳優ぞろいのキャストだ。ドラマ「東京DOGS」や映画「ドロップ」など数々の話題作に出演し、一躍トップスターになった水嶋さんをはじめ、NHK大河ドラマ「龍馬伝」でも注目された佐藤さん、NHK連続テレビ小説「ゲゲゲの女房」や「新参者」「ホタルノヒカリ2」など話題作に相次いで出演している向井さんのほか、桐谷さん、中村さんら、関係者も「奇跡」という顔ぶれで、女性ファンのハートをつかんだ。

 もう一つは、音楽をテーマにした映画ならではの演出だ。堤監督は、自らもバンドでギターを弾いていたといい、「コユキが持っているテレキャスターというギターは、僕が生まれて初めて買ったギターと同じもので、そういうのも勝手に運命的だと思ってしまう」と思い入れも深く、演奏シーンを重視した。出演者はほとんど楽器を触ったことがなかったが、1カ月間みっちりと練習を積み、堤監督も「リハーサル室に集まったときには、もう『BECK』になっていて驚いた」と語るほどだった。

 また、メンバーがアルバイトで苦労している様子など、原作には描かれていない場面を追加し、「原作に込められたバンド少年の共通の思い、カッコ悪い日常を送っているやつらがバンドをやることで輝けるんだっていう、そんな青春群像劇をストレートに撮れればいいなと思っていた」と、ロック少年が共感するエピソードをふんだんに盛り込んだ。

 さらに、オープニング曲は、米国のロックバンド「レッド・ホット・チリ・ペッパーズ」の「Around the World」、エンディングテーマは英国のバンド「オアシス」の「Don't Look Back in Anger」という世界の超一流バンドのナンバーをラインアップ。クライマックスの野外ライブシーンは、フジロックフェスティバルの舞台監督や照明・音響などの技術スタッフの協力を得て、09年のフェス終了後に苗場スキー場のステージをそのまま借り切って撮影するという力のいれようで、特にコユキの歌が観衆の胸を打つ重要な場面は、堤監督も「音楽映像を何十年とやってきたけれど、こんなのは初めて」と自信を見せる。

 堤監督は「僕の中で“音楽と映画のコラボ”が一つのテーマだったので、それが完結してかなり満足」という。原作は、映画のその後も描かれているが、「2本目をやってみたいという気持ちはあるが、この先の原作を読むと(難しそうで)ビビる」といいながら、「不可能といわれるとついやりたくなってしまう」と笑顔を見せた。ロックスピリットあふれる青春劇はまだ続きそうだ。

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