黒崎真音:“アキバの歌姫”が衝撃デビュー 前代未聞のアニメ全話別楽曲に挑戦

黒崎真音さんのデビューアルバム「H.O.T.D.」のジャケット
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黒崎真音さんのデビューアルバム「H.O.T.D.」のジャケット

 オタクの“聖地”秋葉原のライブバーから生まれたシンガー、黒崎真音(くろさき・まおん)さんが、7月から放送されているアニメ「学園黙示録 ハイスクール・オブ・ザ・デッド」のエンディングで、1話ごとにジャンルも異なる楽曲12曲を歌うという前代未聞の企画に挑戦している。22日には、この12曲を収録したアルバム「H.O.T.D.」を発売、注目を集める「アキバの歌姫」とは……。(毎日新聞デジタル)

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 音楽好きの家庭で育った黒崎さんは、中学時代は吹奏楽部でトランペットを担当、高校時代もライブをしたこともあるが続かなかった。社会人になっても、ヘアメークや店員などの仕事で、歌とは無縁の世界にいたという。黒崎さんは「実はへこみやすい子だったんです。他人から否定されると強い意志を持てなくて……。私より歌がうまい人がいるし……」と振り返る。そんな黒崎さんの転機は、友達に誘われたアニソンのライブだった。

 元々マンガやゲーム、アニメ好きだった黒崎さんは、影山ヒロノブさんのJAM Projectや水樹奈々さんが出演するライブで、栗林みな実さんの「翼はPleasure Line」に引かれた。黒崎さんは「アーティストのキラキラ感はもちろん、お客さんの一体感もあった。私はこういう空間を作れる人になりたい」と強く思ったという。

 黒崎さんは「アニソンで感動をみんなに与えたい」と、歌を歌える職場を探すようになり、2年前に秋葉原のライブバー「ディアステージ」へ入った。今ではアキバの名所として知られるが、当時はステージもない小さな店で、歌に情熱を懸ける仲間たちと力を合わせて盛り上げていった。

 そんな黒崎さんを見いだしたのは、元ジェネオン・ユニバーサル・エンターテイメントジャパンで、現在はフリーとしてプロモーションを手掛ける中西秀樹さんだ。多くのアニソンシンガーを発掘、アイドルにも精通している中西さんは2年前、「ディアステージ」の評判を聞き来店。黒崎さんを見て、「歌も歌えて、踊れて、ビジュアルもいい。彼女は一つ抜けていました」と評価した。すぐに関係者に推薦し、当時制作が進んでいたアニメ「ハイスクール・オブ・ザ・デッド」への起用が決まった。そして黒崎さんの歌唱力を生かすため、前代未聞の1話ごとに変わるエンディングの企画が持ち上がったという。

 アニメ「ハイスクール・オブ・ザ・デッド」は、人を襲う生ける屍(しかばね)「奴ら」が増殖して混乱した町を舞台に、少年少女が力を合わせて脱出するというバイオレンスアクション。1話のエンディングは、主人公の孝が、生きる屍となった親友を泣く泣く倒すシーンで、ミディアムテンポの重く激しい曲「君と太陽が死んだ日」が流れる。「もう振り返らない 声を枯らして叫(さけ)べ」と歌い上げ、絶望的な世界に立ち向かう主人公の意思を表現した。まさにアニメと曲を連動させているからこそできる演出だ。

 孝とヒロインの一人・冴子が協力して「奴ら」の包囲をくぐり抜けて、引かれ合う姿を描いた9話では、甘い雰囲気を思わせるアイドルホップス調の曲「宝石のスパイ」、ヒロインの一人・沙耶が仲間への信頼と、父への“反旗”を宣言する10話では、ロック調の「THE last pain」が流れる。

 1話を、ディアステージの仲間と視聴した黒崎さんは「心臓がどきどき。感動したけどぼうぜんとして、あまり記憶がないんですよね。むしろ周りがわーっと騒いだような……」と笑う。今でも週に一度、アニメ「ハイスクール・オブ・ザ・デッド」の放送翌日に、ディアステージでミニライブを開き、エンディング曲を生で披露する。500円で歌姫の歌声が生で聴けるとあって、回を重ねるごとに客が増えている。多忙になった黒崎さんは現在、週1回歌うのが精いっぱいだという。黒崎さんは「他のアーティストがライブで『ファンと会えてうれしい』と言うのを、デビュー前までは『それって本心?』と意地悪に思っていました。でもこれは本当なんです。みんなの言葉にパワーをもらうのを痛いほど感じます」という。

 10月スタートのアニメ「とある魔術の禁書目録(インデックス)」のエンディング曲に黒崎さんの作詞の「マジックワールド」が起用された。黒崎さんは「少ない可能性から希望を見いだす。主人公の『人を守りたい』という気持ちに共感し、前に進んでいきたいという思いを込めています」と語る。アキバの歌姫がどこまではばたくのか、目を離せない。

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