怪盗グルーの月泥棒:「3D、コメディー、感動の相互作用」メレダンドリ氏がヒットの理由を語る

東京国際映画祭に出席するため来日した「怪盗グルーの月泥棒 3D」のプロデューサー、クリス・メレダンドリさん
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東京国際映画祭に出席するため来日した「怪盗グルーの月泥棒 3D」のプロデューサー、クリス・メレダンドリさん

 米国の映画会社「20世紀FOX」のアニメーション部門を担当し、「アイス・エイジ」や「ザ・シンプソンズMOVIE」などのヒット作を製作してきたクリス・メレダンドリさん。新たに「イルミネーション・エンターテインメント」を設立、米大手ユニバーサル・ピクチャーズと独占契約した。第1弾の劇場版3Dアニメ「怪盗グルーの月泥棒 3D」は、3Dの良さを生かし、「3人の少女の愛の力」を描いて、全米で大ヒットし、日本でも10月30日に公開され、初週3位を記録した。メレダンドリさんに、ヒット作を生み出す秘訣(ひけつ)や、浦沢直樹さん原作の「PLUTO」実写版について聞いた。(毎日新聞デジタル)

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 −−「イルミネーション・エンターテインメント」の最初の作品「怪盗グルーの月泥棒 3D」が全米で当たりました。ヒットの要因はどこにあったと分析していますか。

 全米の観客は、とても驚いたんだと思います。多分コメディーを見るつもりで劇場へ行って、実際に見たら感動したんですね。3Dのテクノロジーを含むビジュアル体験、コメディー的な部分と、感動的なストーリーの三つが相互作用して、大ヒットにつながったのだと思います。

 −−イルミネーション社のポリシーを教えてください。

 中心になるキャラクター、主人公というのが、いちばん大事だと考えています。人々の心に残る、記憶に残るキャラクター作りを目指しています。成功するアニメーションの要素は、「ストーリー」と「才能あるアーティスト」。この二つを組み合わせるのが僕の仕事です。

 −−「怪盗グルーの月泥棒 3D」はジェットコースターなど3Dの効果的な表現が使われています。3Dのシーンで特にこだわった場面、シチュエーションなどは?

 スタッフには「3Dの空間を自由に使おう」と言いました。ジェットコースターのシーンはもちろん、舞台あいさつでお話ししたエンドクレジットでの3D、他にもたくさんありますが、グルーとライバルのベクターが空中戦を繰り広げるシーンあたりでしょうか。

 −−ミニオンのキャラクターが可愛らしく、米国でも人気だと聞きました。どういう経緯で生まれたキャラクターなのでしょうか。モデルはありますか?

 本作はスペイン人のアニメーターが持ち込んできた企画なんです。バナナでできたミニオンは、2人の監督がバナナが大好きなことが影響して生まれたキャラクターです(笑い)。

 −−ストーリーは、子どもたちとグルーのやりとりにほろりとさせられる場面もあります。ストーリー作りで気を配ったところは?

 今回のストーリーの中心は「3人の少女の愛の力」です。グルーは元々月を盗もうとしている悪党ですが、彼女たちの純粋な心、お父さんと慕う愛の力がグルーを変えることができるということが一番重要です。

 −−日本語吹き替え版に、日本のトップコメディアン、落語家の笑福亭鶴瓶さんと天才子役といわれる芦田愛菜ちゃんが出演していますが、仕上がりを聞いてどう思いましたか。鶴瓶さんらと話はしましたか。

 アニメを作る場合、声優さんとは親密で、製作期間中ずっとオリジナルの声を聞いて、それを頼りに描いていくわけで……他の方が声をやるというのは違和感というか意外な感じがするんですけど、鶴瓶さんと愛菜ちゃんについては、素晴らしい個性を持っていてとても魅力的だと思いました。2人の声を聞くと、興奮するし、素晴らしい演技力で、私はとてもラッキーだったと思います! 鶴瓶さんにはレコーディングのプロセスを最初に伝えたんですが、初めてということで、(この作品を製作するにあたって)どういうチャレンジがあったかということについても伝えました。愛菜ちゃんは僕が会った6歳児で一番可愛いし、一番頭がいいと思います。彼女はすごく楽で、簡単にアフレコができたと言っていました。ロサンゼルスのプレミアではセレブが大勢いて、みんなが「愛菜ちゃん、可愛い!!」と、僕に「あの子は誰?」って聞いてきて、アメリカのアグネス役の子が可哀そうなくらいでした。みんな愛菜ちゃんに熱狂してましたよ。

 −−「PLUTO」の実写映画を製作することが決まったと聞きました。製作はどこまで進んでいますか。キャストで決まっている人がいたら教えてください。どんな映画になりそうですか。

 今まさに脚本作りのスタートラインに立っているところです。なにしろ浦沢さんと(原作のプロデューサーの)長崎尚志さんによる豊富な題材があって、ストーリーがすごく壮大なので、1本の作品に全部を詰め込むことは当然無理です。キャラクターやストーリーには細かくこだわりがあるので、豊富な物語のどの部分を抽出するかをディスカッションしているところです。普通はストーリーを練るのが大変なのでぜいたくな悩みなのですが。実は先日発表するまでに2年の月日を要しました。題材を本当にリスペクトし、大切にし、責任を持ってやるということを説明しました。(製作が決まったことは)とても光栄に思いますし、とても責任を感じています。実写映画でCGアニメーションも盛り込まれます。

 −−日本のアニメやマンガで刺激を受けた部分はありますか? また一緒にやりたいというクリエーターがいたら教えてください。

 すでに多くの日本のクリエーターたちと接触して話をして、ここでは挙げられない名前もありますが、アニメを好きな人間はみんなそうですが、宮崎駿さんを尊敬しています。僕のすべての映画の中で一番好きな作品は「千と千尋の神隠し」です。もちろん一緒に仕事をしたいです。また、「時をかける少女」の細田守さんや森本晃司さんとも仕事をしてみたいです。毎回日本に来るたびに、日本の出版社やクリエーターたちと話をしていますが、私が一番楽しみなのは、これから先、日本のパートナーとコラボレーションして日本の作品を作ることです。

 −−最後に「怪盗グルーの月泥棒 3D」の見どころとメッセージを。

 ネタばれはしたくないので、一つだけ。エンドクレジットでの驚き3Dをお楽しみに。最後まで席を立たないでください。

 <プロフィル>

 クリス・メレダンドリさんは、米国の映画会社「20世紀FOX」に13年間勤務し、在職中に「20世紀FOXアニメーション」の初代代表となり、同社をアニメ映画界の大手と呼ばれるまでに育て上げた。在職中に製作総指揮を務めた作品に「アイス・エイジ」(02年)、「アイス・エイジ2」(06年)、「ロボッツ」(05年)、「アルビン/歌うシマリス3兄弟」(07年)、「ザ・シンプソンズMOVIE」(07年)、「ホートン ふしぎな世界のダレダーレ」(08年)などがある。メレダンドリさん率いる「イルミネーション・エンターテインメント」は10年から、ユニバーサル・ピクチャーズと年1、2本の作品を製作する独占契約を締結。11年に劇場版アニメ「Flanimals」とティム・ラッセル監督が手がけ、ラッセル・ブラッドさんが声の主演をする実写とCG(コンピューターグラフィックス)を合成したオリジナル作「IHop」の公開を予定している。

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