絲山秋子さんが08年に発表した小説を原作に、「デスノート」(06年)の金子修介監督が人間の弱さをいとおしく見せる秀作映画「ばかもの」(全国で公開中)を製作した。人間の弱さといえば現在、超が付くほどの人気作家の原作映画が話題だが、私にはこちらの方がグッときた。
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99年、19歳の大学生ヒデ(成宮寛貴さん)は、27歳の額子(内田有紀さん)と知り合い、初体験をする。年上の額子の不思議な魅力にのめり込んでいくヒデ。しかし、ある日突然「結婚する」と額子は言い放ち、ヒデの元から去って行く。03年、22歳になったヒデは大学を留年。友人の加藤(池内博之さん)の結婚式で出会った翔子(白石美帆さん)と付き合うようになる。ヒデは翔子のアパートで酒びたりの日々を送るようになる。そして05年、就職しても酒びたりのヒデはアルコール依存症になり、恋も仕事もままならなくなっていく……という物語。
大事なものを失った後、人間はどうなってしまうのか。主人公のヒデは、恋人を失ってどん底に落ちていく。ヒデの変化を19~29歳まで演じ分けた成宮さんの芝居には魅せられた。母性本能をくすぐる「アヒル口」で、アルコールにおぼれていてもなぜか許せるキャラクターを演じている。誰か目を覚まさせてやれ、と思いながらスクリーンを見ているが、母親をはじめとして誰もがヒデに優しい……。公開中の「酔いがさめたら、うちに帰ろう。」でもそうだったが、アルコール依存症から抜け出すことは、本当に大変なことだ。この作品も依存症になってしまう人を特別ではなく、誰にでも起こりうることとして描いた。人間の弱さを見せつけられ、不器用な愛が胸に迫ってくる。そして、不器用ながらも弱さから立ち直ろうとする人間の強さも同時に感じることのできる作品だった。
額子役の内田さんも、ぶっきらぼうな中に愛情を欲している可愛さがあり好演だった。主に高崎市でロケを行い、後半の群馬県片品村は大自然が美しい場所で、まぶしい木々の緑に抱かれる人間の姿に、生きるものの再生と希望を見たような気がした。有楽町スバル座(東京都千代田区)、シネマート新宿(東京都新宿区)ほかで公開中。(キョーコ/毎日新聞デジタル)
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