アメコミ原作で米国での大ヒットを受けて続編の製作も予定されている「キック・アス」が全国で公開中だ。英国出身のマシュー・ヴォーン監督が脚本も担当。ヴォーン監督は「レイヤー・ケーキ」(04年)で監督デビュー、2作目の「スターダスト」(07年)はイマイチだったが、今作はかなり面白い仕上がりだ。ブラッド・ピットさんが代表を務める「プランBエンターテインメント」が製作した。
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スーパーヒーローになることを突然思い立ったアメコミオタクの高校生デイブ(アーロン・ジョンソンさん)は早速、通販で注文したウエットスーツを改良しコスチュームを作って「キック・アス」と名乗り悪者退治に乗り出す。そこに、高度な訓練を受けた美少女「ヒット・ガール」(クロエ・グレース・モレッツさん)と、その父“ビッグ・ダディ”(ニコラス・ケイジさん)が加わり、地元マフィアのボス(マーク・ストロングさん)に立ち向かっていく……というストーリーなのだが、映画が始まって早々、デイブにはとんでもない災難が待ち受けている。それが何かは本編を見ていただくとして、とにかくこの作品にはかなりサプライズが用意されている。
映画「ウォンテッド」の原作者でもあるマーク・ミラーさんによるアメリカンコミック(ジョン・S・ロミータ・Jr.さん画)が原作。俳優たちのコスチューム姿や勧善懲悪ものということでアクションコメディーにジャンル分けしそうになるが、もちろんアクションも笑いもふんだんに盛り込まれ、血しぶきの量はハンパではないが、物語そのものは結構シリアス。スーパーヒーローになりたくなった孤独な青年や汚名を着せられ復讐(ふくしゅう)に燃える男、父親に“洗脳”されたかわいそうな少女、悪人である父を崇拝する息子、そうした内面的に複雑な人間たちが多数登場する、なかなか奥が深い話なのだ。
デイブ役は、「ノーウェアボーイ ひとりぼっちのあいつ」(09年)で若き日のジョン・レノンを演じたジョンソンさん。「ビッグ・ダディ」を大まじめに演じたケイジさんともどもその頑張りようは称賛に値するが、今作の功労者は、大人もドン引きの下品な言葉を堂々とはき、アクションも体当たりでこなした「ヒット・ガール」役のモレッツさんだろう。彼女のキュートでワイルドなパフォーマンスにはシビれることうけ合いだ。シネセゾン渋谷(東京都渋谷区)ほか全国で順次公開中。(りんたいこ/毎日新聞デジタル)
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