ダンダダン
第8話「なんかモヤモヤするじゃんよ」
11月21日(木)放送分
新潮社は21日、マンガ家が描きたい作品を前面に押し出し、新人作家の登用にもこだわった月刊マンガ誌「@(アット)バンチ」を創刊した。10年夏に休刊した「コミックバンチ」の後継誌で、文芸書で知られる新潮社が単独で挑む初のマンガ誌だ。「ウロボロス」や「BTOOOM!」の旧バンチ人気作に加え、松本次郎さんやカサハラテツローさんら人気作家や新人作家を積極的に起用。同誌の里西哲哉編集長に雑誌の狙いなどを聞いた。(毎日新聞デジタル)
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−−10年夏のコミックバンチの休刊は話題になりました。
バンチは00年から準備をして01年に創刊し、瞬間で70万部、実売率が102%というありえない数字が出たこともありました。ですがコミックスはそれなりに売れたものの、雑誌の方の調子が上がらなくて、10年を契機に(旧バンチの編集を手掛けたコアミックスと)お互いの事業を見直しましょう……となりました。コアミックスさんは、旧バンチの色合いを残した雑誌(コミックゼノン)をすぐに創刊しましたが、我々は中身からしっかり見直しましょう……となったんです。
−−週刊誌から月刊誌に変わりました。
ここ10年でマンガの刊行形態や作り方が変わりました。青年向けのマンガ週刊誌を単独でやるのはなかなか大変ですし、青年向けのマンガを週刊ペースで描ける作家さんが減りました。そうした状況を考え、作家が本当に出したいマンガを出したいという方向性から月刊誌にしました。
−−ターゲットは、マンガ好きで青年向けですね。
旧バンチは、(元ジャンプ編集長の)堀江信彦さんを中心に「マンガはジャンプ」という世代で、広く浅く分かりやすく、少年誌的な雰囲気がありました。しかし今は読者の価値観も多様化したので、なかなか大変だったんです。そこで「@バンチ」では、我々が世に送りたい、本屋に行って手に取って注目してくれる熱心なマンガファン向けの雑誌にシフトしたい……となったのです。
−−17作品のうち、3作品が商業誌の連載初デビューとなります。
マンガ誌は、(イラスト系SNS)の「pixiv(ピクシブ)」、コミックマーケット、(オリジナルマンガの同人誌即売会)コミティアなど、商業誌に出ていない才能をどう見いだすか……など新人発掘にシフトしているんです。今は作家の持ち込みが減っていますが、持ち込みをしない才能のある人も多かったりします。後者の人たちは、ウェブで公開して熱狂的な人気を得ても、周囲の評価で満足しているんです。そういう人を見つけて、商業誌で描いてもらえるようにする……という感じですね。新人の発掘方法も随分変わりました。
−−しかし新人のために雑誌のスペースを確保するのも大変では?
エンターブレインの「フェローズ」(08年創刊)からがきっかけで、最近ではヤングジャンプ増刊号の「アオハル」や「ガールズジャンプ」なども出たように、特に青年マンガ誌で「新人を出す場を作ろう」と取り組む流れがあります。「@バンチ」でも作家のやりたいことを前面に押し出し、編集がフォローする流れです。逆に「何でもやります。でも編集側で企画を考えて」というスタンスだと、うまくかみ合わない感じですね。作家には「描きたいマンガ」を打ち出してほしいし、作家さんを大事にしたいと考えています。
−−@バンチの詳細は?
旧バンチの継続作品が五つですね。「ウロボロス」はドラマ化、「BTOOOM!」はアニメ化の引き合いがそれぞれ来ていて、今後に期待しています。松本次郎さんとカサハラテツローさんの2人はベテランですが、作家性を重視する@バンチの方針に合っていますね。2号目から、漫F画太郎さんのマンガ「罪と罰」も注目を集めています。あまりコアすぎると本当のファンしかついてこれなくなるので、(普通のマンガが好きな人も読めるよう)一般性を持たせるなどバランスは考えています。
−−新潮社単独でマンガ雑誌に挑みます。
マンガ誌を多く持つ大手の出版社ならば、増刊号を出して、本誌の目玉作家が援護射撃をしますから、それがないという意味では大変です。創刊の大変さ、不安もありましたが、我々がやりたい方向で楽しくやれましたね。
−−作家ごとに面白いページを持たせるそうですね。
掲載マンガの最後に、作家の好きに使っていい「マイページ」を設けました。人によっては、作品の設定資料を公開したり、エッセーマンガにしたり、コラムを書いたり、次号の予告にしたりとかさまざまです。「@バンチ」では、作家と読者をより近くにするという思惑があり、作家の人となりが見えればと思っています。雑誌を売るのも必要ですが、作家をどう売るかも大切ですから。
−−ウェブでもマンガを連載していますね。
「ウェブ@バンチ」(http://www.comicbunch.com/)では、描き下ろしマンガも読めます。今でも無料の会員登録をすれば「ウロボロス」や「BTOOOM!」でそれぞれ90ページ以上読めます。これからも過去の作品や、レアなマンガが読めるようにするつもりですし、読者が集まるコミュニティーの場になればと思っています。雑誌は700ページが限界なのですが、ウェブではページの制限もないし、カラーにもできます。ウェブと本誌の連動は意識していますね。
−−読者に向けて一言。
マンガが読まれないといわれていますが、才能のある作家は10年前より増えています。「@バンチ」では、新しい才能と巡り合えるマンガ誌を作りますので、ぜひ刺激を受けてほしいですね。作家と読者の懸け橋になれたらと思います。
「BTOOOM!」井上淳哉▽「ウロボロス−警察ヲ裁クハ我ニアリ−」神崎裕也▽「人間失格」古屋兎丸▽「ウッドストック」浅田有皆▽「片桐くん家に猫がいる」吉川景都▽「女子攻兵」松本次郎▽「ザッドランナー」カサハラテツロー▽「めいなのフクロウ」水あさと▽「エリア51」久正人▽「GANGSTA.」コースケ▽「あねちゅう!溺愛悶絶美奈子さん」青稀シン▽「アヴァール戦記」中村珍▽「寿司ガール」安田弘之▽「そそぎすぎ珈琲館」長崎ライチ▽「Naviko」ancou▽「軍靴のバルツァー」中島三千恒
さとにし・てつや=74年滋賀県生まれ。01年新潮社入社。週刊コミックバンチの編集部員となり、07年から同誌副編集長。10年から「@バンチ」編集長。
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