1巻が発売されたコミックスの中から、編集部と書店員のお薦めマンガを紹介する「はじめの1巻」。今回は「月刊!ビッグコミックスピリッツ」(小学館)で連載、他人とのコミュニケーションが苦手な女性が、朗読の才能を発揮して、奥深い世界を紹介する片山ユキヲさんの「花もて語れ」です。
ウナギノボリ
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主人公の佐倉ハナは、就職で上京してきた内気な少女。緊張するとか細い声しか出せず、それが原因で入社式にも遅刻、さらに同僚ともうまく交われず、くじけそうになる。そんなときにハナは朗読に出会い、その魅力にとりこまれていく。そして朗読になると人が変わったかのように声を出し、才能を発揮し始める……というストーリーだ。コミックスの帯には、声優の坂本真綾さんが推薦文を寄せている。
「きっと伝わる、伝えたい気持ちがあれば」
この作品に登場する、主人公の先生の言葉です。伝えたいけど、伝えられない。伝えたいけど、伝わらなかったときが怖い。そんな思いは誰もが味わったことがあるのではないでしょうか。
片山先生は、「朗読」というテーマを通じて、そんなもどかしさ、切なさ、そして思いが伝わったときの喜びを、熱く、優しく、描き出します。
そして特筆すべきは、朗読シーンの大迫力!
実は、最初の打ち合わせの時点で、片山先生にはすでに朗読シーンを薄墨で描く、というアイデアがあったのですが、それでも私は、本当にマンガで朗読を表現できるのか、半信半疑でありました。
ところが、出来上がった作品はまさに衝撃! 斬新かつダイナミック!
ありとあらゆる漫画技法を駆使して描き出された朗読シーンは、マンガにしかできない、マンガ表現のひとつの到達点と言って過言ではありません。
朗読イコール地味、と思ったら、驚くこと請け合いです。ハリウッド映画なみの大迫力が、この作品の中で、あなたを待っています!
ハナが朗読で思いを伝えられるようになっていく過程にはとてもドキドキしました。当然ながらマンガから音は出ませんし、声を出してマンガを読む人もそういないと思います。なのにこの作品を読んでいると、朗読することで放たれる言葉や声の持つ力が不思議なほどに伝わってくるのです。素朴な絵柄で温かく描かれる魅力的な表情や、朗読部分の書き文字にも味があって、どんな声で読んでいるのかが想像しやすくなっているからかもしれません。思わず声に出して読みたくなるマンガのナンバー1ですね。
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