松田龍平:「同期っていいものだなあ」 警察の内部や友情を描く刑事ドラマ「同期」に主演

ドラマW「同期」で主演した松田龍平さん
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ドラマW「同期」で主演した松田龍平さん

 WOWOWのドラマWでは2週連続で警察小説を得意とする気鋭の小説家・今野敏さん原作のドラマを放送している。2週目の20日は松田龍平さんを主演に迎えて「同期」を放送。脚本は、ドラマ「東京DOGS」(09年)などの脚本やバラエティー番組の構成作家・演出家としても知られる福田雄一さん。演出は、映画「SR サイタマノラッパー」(09年)を手がけた入江悠監督が担当した。主演の松田さんに撮影中のエピソードなどを聞いた。(毎日新聞デジタル)

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 「同期」は、捜査1課の刑事、宇田川(松田さん)の同期でライバルの蘇我(新井浩文さん)は能力を買われて公安に引っ張られた。ところが、その蘇我が突然理由もなく懲戒免職となる。その行方を追う宇田川に警察内部からの圧力がかかり、しかも、ある殺人事件の容疑者として蘇我の名前が挙がる。初めて「警察組織」というものに疑いを抱いた宇田川はクビになってもいい、俺は蘇我を助ける、と熱い思いを胸に走り出すが……というストーリー。

 −−原作は小説ですけれども、警察小説とか、この作者の小説は読まれたりしますか。

 読んでないです。割と普段から読まないことが多いかもしれない。台本で全然足りなかったり、分からなかったりするときに(原作は)読んだりしますけど、今回のドラマも映画もだいたい2時間じゃないですか。その限られた中でやらなきゃいけないので、逆に読むと想像力がかき立てられ過ぎちゃってあれもやりたい、これもやりたいみたいなことになっちゃうから、割と台本の中のイメージで台本の中でふくらませて、今回もそういう感じでしたね。すごくシンプルな役だったので、そういう意味では原作を読まないで台本の中で役を生かしてやりたいなという意識でやりました。

 −−映画ではこれまでにもありましたけど、ドラマで刑事役は初めてですよね。刑事ドラマに対する思いみたいなのってありますか?

 特別に何かあるかっていったら特にないんですけど、でもすごく特殊な仕事じゃないですか。自分の人生の中であんまりかかわりを持たないというか、そういう意味で興味はそそられますけど、自分が知らないがゆえにどんな世界があるのか、それはいろんな職業で一緒ですけど、その一つというか、たぶん実際にやっている方しか分からない感覚があるんだろうと。僕が役者をやっているようにそれは誰にでもいえることじゃないですか。でもどこか共通しているものを見いだしながらやるから楽しかったりするわけで、共通できないかもしれことを想像しながらやるのは自分が役をやる上で、すごく楽しいことだな、と。

 −−刑事ドラマというジャンルですが、事件が起こって解決するだけでない、同期の友情だったり、警察の内部のことだったりを描いています。台本を読まれた感想は?

 率直にいうと2時間の枠でこれだけの話を描けるのかな、と。初めはもっと説明的なせりふがたくさんあって。それを1人の人間を演じるうえで、ちょっとおかしいなという部分で、その違和感をどうにかしたいという話をしていて。現場に入るときに入江監督が余計な部分を削って、そんな中で入れたのでよかったです。自分が信じていたものが急に信じられなくなる感覚というものは人の中に絶対にあるから、すごく興味深いと思う部分が僕の中にもあって、そういうものを描いている作品じゃないかと思いました。

 −−キャラクターとしては、宇田川という男をどういう男としてとらえて演じたんですか。

 すごくピュアなイメージがあったかな。ピュアというか自分に信じることにまっすぐで、そういう人って頭で考えないから、とんでもないことをしでかすというか、頭で考えないで思ったことをそれだけを信じてやるっていうのって、それってすごく武器になるし、でも下手したら殺されてしまうかもしれない、そのあやうさがある。でもそういう人が主人公になり得るんだろうなというのが、ありますね。

 −−そういう役を演じるにあたってこだわった部分は?

 いやあ、今回はわりと台本に忠実に。説明口調になってしまうシーンもそう見えないようにリアルにやれたらなという感じでした。あとは、宇田川は台本の段階でもすごく走るシーンが多くて、走る男というイメージがありましたね。実際、撮影も本当に走らされて、けっこう警官の格好って重いんですよね、いろんな装備をしているので。だから(本物の警官は)すごいなと思って。体力あるんだなと(笑い)。本当に走りにくくてびっくりしました(笑い)。

 −−すごく走る姿勢がよかったんですが、あれは意識したんですか?

 とにかく速く走れるイメージだったから、映像に映ると速さって難しかったりして、だから速く見せたいなというのは(姿勢をよくするという)見え方としてあったかもしれないですね。

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 −−同期の役を演じられた新井さんは、映画「青い春」(01年)でも共演されてましたね。まさに同期ですが、新井さんとの共演はいかがでしたか。

 最初、まったく(同期役の)イメージが新井君じゃなかった。あまりエリートな新井君って見たことがないし(笑い)。で、入江監督が新井君が大好きで、どうしても新井君でやりたいって。だからそこは僕はイメージがわかなかったけれど、逆にそれが面白い方向に行けばいいなという気持ちでやりました。普段も会ったりすることもある人だから、付き合いも「青い春」から長いんで、そういう関係性ってすごくあやうくて、プライベートな部分が見えてしまうってことが、邪魔になるってときもあるし、逆に生かせることもある。そこがどうなるかなっていうのが楽しみでした。

 お互いが鏡になるというか、同期ってすごくいいものだなあと思う。ただ割と(ドラマの中で)蘇我はすぐにいなくなっちゃうから、けっこう撮り方も最後の方に蘇我とのシーンを撮ったから、僕はまだ会ってない蘇我をずっと追いかけていて、早く会いたいなって(笑い)。そういう意味では元から知っている新井君だったからよかったというのはあるかもしれない。

−−この役をやるにあたって新井さんとは話をしましたか?

 いや、してないですね。あんまり話さないかもしれないですね。逆にお互いが現場でどうせ一緒になるし、それまでにたぶん自分でやったのを現場でぶつけて想像できなかったことが生まれるということが面白かったりするし、そういうのが楽しみで。自分の想像力じゃ限界があったりして、作品を作るっていうのは1人じゃできないことだから、だからこそ面白いものを追い求めているというか。自分の想像の範ちゅうを越えてしまう瞬間がある、そういうものがやっぱり楽しいなって。

 −−刑事ものといえば、「相棒」が重要ですけど、今回は竹中直人さんが相棒で、松田さんとしては竹中さんとどういう関係性でやりたいと思いましたか?

 竹中さんってすごく安心するんですよ、演じていて。見ていてもそうだけど。すごく説明できない安心感がある人だから、現場でもすごく楽しかったし、影響を受ける部分があるなって。すごく自由な人だから(笑い)。現場でずっと鼻歌を歌っているような人だから、本番直前まで自由だけど、それでだめになっちゃう役者さんもいるのかなって(笑い)。自由過ぎて気になっちゃって本番ぎりぎりまで鼻歌歌っているから。でも僕はすごくそれで楽しくできて、おいしくできてよかったなと思いますよ。

 −−栗山千明さんとのシーンで、松田さんが最初は柔らかい感じで接していたのがだんだん険しくなっていく表情の変化も素晴らしかった。栗山さんと演技を相対してみて、どう感じられましたか

 栗山さんはすごくやりやすいですね。これまでドラマ「ハゲタカ」(07年)もやりましたけど、理由は付けられないんだけどすごく芝居がやりやすい人っていうイメージで。今回も宇田川が刑事としている顔じゃない表情を見せる唯一のシーンが栗山さんとのシーンというか、一緒にいる女の子かわいいなという場面とか、宇田川の自宅に来てからのやりとりみたいなものが、ちゃんと自然な表情が出ていたからそれはよかったなと。最後のシーンとか(栗山さん)怖いですよね(笑い)。

 −−今回の作品で自身の想像を超えたものっていうのはどれくらいあったんですか。

 そうですね。僕の役は割とストーリーテラーというか、見ている人と一緒に進んでいく役だったから、割としっかりしなきゃいけないというか、あんまりブレないでいかなきゃいけない。入江監督の作品の「サイタマラッパー」(09年)という作品を見ていたんですけど、全然テイストが違うんですよ。(あちらは)ゆっくりした長回しの作品で、そのイメージがあったから、今回、すごくカットがあってスピーディーに撮ってるから、そこも結構意外でしたね。こんなに撮り方を変えられる監督だったんだって。

 −−脚本家の福田さんもいつもはっちゃけたコメディーをやっている人ですけど。脚本家の福田さんとはお会いになったんですか?

 いや、会ってないです。でもいままでの作品からしたら、めずらしいというか、硬派な作品ですよね。この話は2時間の中でやるというのはすごく大変だから、スケジュールだけでもよく頑張ったなと(笑い)。みんなほとんど寝てないで撮り終えたから、すごい、硬派なドラマにはなっていると思いますけどね。ただわりと僕1人で行くシーンが多かったから、もっと刑事全体で一丸となっているということは形だけという感じがしたので、もうちょっと犯人捕まえるときも(全体の)アクションがほしいというのがあったんですけどね。ただ役者さんがみんなよかったなと、すごくナチュラルで。

 −−今回の作品をやってみて、別の作品でも刑事を追い求めてみたいという思いはありましたか?

 そうですね。べつに刑事でなきゃいけないというわけじゃないですけど。割と今回気づく役というのが多くて、思い出すというか、フラッシュバックみたいな。そういう1人が中心になった作品というより群像劇であってほしいなと思いました。刑事1人で単体で動くっていうよりは群像劇の刑事ドラマに出てみたいなという気はしますけど。

 <プロフィル>

 1983年5月9日、東京都出身。故・松田優作さんと女優の松田美由紀さんの長男。99年に大島渚監督の「御法度」でデビュー。02年に「青い春」で主演を飾る。04年公演「夜叉ケ池」で舞台に初出演。07年、ドラマ「ハゲタカ」(NHK)でドラマ初出演。09年にはNHK大河ドラマ「天地人」に伊達正宗役で出演した。WOWOWのドラマW「同期」は20日午後10時に放送。

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