1巻が発売されたコミックスの中から、編集部と書店員のお薦めマンガを紹介する「はじめの1巻」。今回は、「モーニング」(講談社)で連載、厳しいプロ野球の世界を中継ぎ投手が生き抜くさまを描いた森高夕次さんが原作、マンガをアダチケイジさんが手がけた異色野球マンガ「グラゼニ」です。
ウナギノボリ
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プロ野球選手の凡田夏之介は、高校を卒業してプロ入り8年目、26歳で年俸1800万円の中継ぎ投手。選手名鑑で各選手の年俸を見ることが趣味で、自分より年俸の高い選手を上、低い選手を下に見ている。「グラウンドには銭が埋まっている」という言葉を、心の中で「グラゼニ」と呼び、現役のうちにできるだけ稼げるようにと厳しいプロ野球界で日々、必死に戦う……という物語。
「グラゼニ」は昨年の12月に“月イチ連載”として始まりました。原作者の森高さんは当初、作品が好評だったら「1年目は月イチ連載。2年目は隔週連載。3年目は週刊連載突入」と、初期の「島耕作」的な成功の青写真を描いていましたが、1話目が想像以上の大反響。2話目が出る前に編集長から週刊連載化の打診が来て、急きょ、今年5月発売の号から毎号掲載となりました。
週刊化は正直「危険な賭け」かとも思いましたが、今のところクオリティを落とさず尻上がりに人気も上げてきています。
人気の原因は何でしょうね。年俸1800万円の中継ぎ投手が主役という意外さ。すでにやり尽くされた感もあるプロ野球という題材を、お金という側面からアプローチした目新しさ。そして年俸というある種のタブーに踏み込んだ際どさ、想像以上に生存競争が厳しくシビアなプロ野球界や野球選手生活の切なさ……などでしょうか。でも一番のポイントは「凡田夏之介」という主人公が思った以上に愛されるキャラになったことじゃないでしょうか。そこは作画を担当するアダチさんのお陰だと思っています。
年収1800万円と聞くと「おおっ」と思うけど、それがプロ野球選手の年俸と聞くと「あまり高くないな」と思ってしまう。上には億単位(の選手)も珍しくない。そんな世界で、引退後の生活の事まで考えながら、必死に今を生き抜く年俸1800万円の男・夏之介の姿が哀愁を誘います。「プロの世界は厳しい!」とはよく言いますが、どう厳しいのかが具体的な数字と共に語られていて興味深く読めました。年俸数億円のスター選手ばかりでなく、何とか一軍にしがみついている選手にも注目したくなる、そんな作品です。
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