ポーランドのイエジー・スコリモフスキ監督の最新作「エッセンシャル・キリング」が30日、公開される。スコリモフスキ監督は、08年に17年ぶりの監督作「アンナと過ごした4日間」を発表して話題となったが、もう最新作が登場する。ヴィンセント・ギャロさんが主演を務めた。逃げ回る捕虜をただただ見せる映画だが、人間の生き物としての本能がむき出しになっている。
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舞台はアフガニスタンの大地。空から米軍のヘリコプターが偵察している。バズーカでアメリカ兵を吹き飛ばしたアラブ人兵士ムハンマド(ギャロさん)は米軍の捕虜となった。厳しい拷問を受けたのちトラックで移送されるムハンマドは、車が事故を起こした混乱を利用して逃亡する。しかし、米軍はどこまでも追ってくる……。
これはテロリストについての映画ではない。もちろん、戦争映画でもない。逃亡する男が、たまたまアラブ人兵士だというだけのことで、逃亡者1人に対して大勢が追ってくる緊迫感は、野生動物のドキュメンタリーさながらの映像だ。ここには、捕獲するものとされるものという関係しかない。
雪の中の森をどこまでも逃げていくムハンマドを演じるギャロさんは、なんと力強いのだろう。必死になって歩く背中や凍(い)てつきそうな川で洗った手、ギリギリの精神状態を表した鋭い目。大自然の風景の中に主人公の「生きよう」という動物的な本能がむき出しになって見える。第67回ベネチア国際映画祭で審査員特別賞と最優秀男優賞を受賞した。30日からシアターイメージフォーラム(東京都渋谷区)ほか全国で順次公開。(キョーコ/毎日新聞デジタル)
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