ラノベ質問状:「のうりん」 1年がかりで農業高校を取材 早くもドラマCD化

白鳥士郎さん作、切符さんイラストの「のうりん」(ソフトバンク クリエイティブ)
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白鳥士郎さん作、切符さんイラストの「のうりん」(ソフトバンク クリエイティブ)

 話題のライトノベルの魅力を担当編集者が語る「ラノベ質問状」。今回は、農業高校を舞台にした学園ラブコメディー「のうりん」(白鳥士郎著、切符画)です。ソフトバンククリエイティブGA文庫編集部の小原豪さんに作品の魅力を聞きました。

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 −−この作品の魅力は?

 機関銃のように速射される古今取り交ぜたパロディーネタの数々と、登場キャラクターたちの強烈さが、最大の見どころではないかと思います。「こいつらバカだなあ」と頭を空っぽにして楽しんでいただける作品です。一方で、農業高校という物語の舞台を最大限に生かしたストーリーにもなっているため、読んでいるとだんだん農業に興味がわいてきて、かつそういった好奇心をしっかり満たしてくれる作品にもなっています。

 主人公・畑耕作の通う農業高校に、あこがれのアイドルそっくりの木下林檎が転校してきて、幼なじみの少女・中沢農や、親友の過真鳥継といった面々とともに、にぎやかな学園生活が始まる。それだけ聞くとオーソドックスな学園ラブコメっぽい作品なのですが、逆にいうとオーソドックスなのはそこだけですね。登場人物についても、まともな人はいないというか、みんなどこか変というか、自重しないというか……それでいて、みんな根っこの部分はしっかりしているところが、表面のカオスぶりからは想像しにくい抜群の安定感につながっていると思います。

 −−作品が生まれたきっかけは?

 「らじかるエレメンツ」「蒼海ガールズ!」に続く白鳥先生の3シリーズ目ということで、プロット案をいくつかいただいたのですが、前の2シリーズの経験からして「白鳥さんが書くなら、題材を問わず面白いものになるだろう」という判断はありました。なので、あとは市場の要求とよほど外れていなければ、本人が一番書きたい題材を選んでもらおうというスタンスでした。そうした中で、白鳥さんの大きな武器である日常コメディーの楽しさを生かすことができ、また、既存のライトノベルにはあまりなかった要素も差別化として入れ込んでいきたい、という考えから最終的に「農業高校もの」になった、という形です。

 −−作家さんとイラストレーターさんはどんな方でしょうか。

 作者の白鳥さんは、とてもまじめでクレバーな方という印象ですね。作中で繰り出されるハイテンションなギャグの数々からするとギャップがあるように思われるかもしれませんが、作品内でのネタの使い方の絶妙さや、綿密な取材を生かしたしっかりした視点、根底に流れるストーリー性などは、やはり白鳥さんの作品に対する真摯(しんし)さから生まれてきているところが大きいと思います。執筆においては、1年がかりで農業高校さんを取材するなど大変精力的に動かれていましたし、ギリギリのタイミングでも新たに時事的なネタを盛り込んでいくなど、少しでも読者さんを楽しませるべく、完成度を高めていこうとする姿勢には頭が下がります。

 イラストレーターさんの切符さんは、ムチャ振りかと心配になるようなこちらのお願いにも、きっちり対応して素晴らしいイラストを仕上げてくださいます。特に本作の場合、当初から白鳥さん提案のコンセプトとして、挿絵イラストの中にキャラクターのセリフを入れて本文のオチに使ったり、有名なネタのパロディーをイラストでやったりといった使い方が考えられていたのですが、これらが実現できたのは、切符さんがそれらのコンセプトに積極的に協力してくださり、かつかわいく魅力的なイラストを仕上げてくださるおかげだと思っております。あとは主人公たちのクラスの担任であるベッキー先生(アラフォー)なども、切符さんのデザインのおかげで、許される存在になっている部分が大きいのではないかと思います。

 −−編集者として、この作品にかかわって興奮すること、逆に大変なことについてそれぞれ教えてください。

 やはり一読者として、まっさきに原稿を楽しめるのは何にも代えがたい喜びです。大変なことというわけではないのですが、白鳥さんの作品の場合、原稿チェックの段階でつい声を出して笑ってしまい、編集部内で奇異な目で見られるのが困りものです。最近は「ああ、またか」と生温かい目で見守ってもらえるようになりましたが。

 −−今後の展開、読者へ一言お願いします。

 1巻では明かされていない部分、具体的には1巻のラストにおける農のつぶやきがいったい何を意味しているのか、林檎や農の行動の底にあるものが気になっている読者さんも多いかと思います。2巻ではそのあたりにもきっちり焦点があたる予定です。濃い新キャラもばんばん登場してきますので、そのあたりも楽しみにしていただければと思います。

 ありがたいことに、早くもホビレコードさんにてドラマCD化が決まるなど、作品としてこれからどんどん育っていく「のうりん」を、どうぞよろしくお願いします!

 ソフトバンク クリエイティブ GA文庫編集部 小原豪

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