いよいよ師走も終盤である。エンタメの世界も一般の消費財と同様に、クリスマス需要や年末の駆け込み需要を当てにしている。
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さて、気になるトピックが二つある。一つは、韓国ネクソンの東京証券取引所への上場だ。インターネット上の掲示板では「なぜ日本なのか?」「売却株式数が多すぎる」などと白熱した議論が交わされていた。韓国で上場するよりも得られるキャピタルゲイン(資産の売買で得られた利益)や、世界展開を前提に考えれば、バリュー(価値)は日本での方が高いという経営判断だろう。GREEやDeNAのように成長できるかという視点、韓国のオンラインゲーム会社の上場とあって、上場初日の初値と終値は関係者の注目を集めていた。残念ながら公開初日の終値は公募価格(1300円)割れとなったが、今後の動向も気になるところだ。
そしてもう一つは、ゲームファン待望の新型携帯ゲーム機「PSVita」の発売だろう。東京都内の駅の看板には、俳優の瑛太さんと松田龍平さんの特大ポスターが張り出され、テレビコマーシャルも目に付く。さまざまな関係者の話を総合すると、「PSVita」は当初50万台程度の流通を見込んでいたようだ。それが予約開始の段階でハケてしまったので、急いで20万台を追加した……と聞かされている。だから現在は、予約受け付け時の人気ぶりがウソのように予約なしでも購入できるのだろう。週末の売れ行きを含めて、こちらも注目を集めそうだ。
とはいえ、今年の話題といえば、携帯電話のソーシャルゲームが市場を席巻したことだろう。ソーシャルゲームのアイテム課金は、個人の名誉欲を刺激し、ゲームを効率的に遊べるようにして、レアアイテムの権利を得るなどの要素がウケて、テレビゲーム機とは異なる新たなユーザーを取り込んだ。そしてコンテンツのリッチ化が進み、スマートフォンの普及と比例するようにビジュアルリッチなゲーム制作へパブリッシャーは傾倒しているのが現状だろう。
来年は果たしてどんな新しいものが見えてくるのか。そして、何がその中で残るのか。オンラインゲームとスマートフォンのコンテンツ、そしてネットワークダウンロードコンテンツを中心に据えた「PSVita」の境目が徐々になくなっていく中で、ネクソンの株式公開、DeNAのプロ野球球団保有、ソーシャルゲームに傾倒していく家庭用ゲームパブリッシャーの変容ぶりなど話題には事欠かない。次回の新年のコラムでは12年の展望を考えてみたい。
◇著者プロフィル
くろかわ・ふみお 1960年、東京都生まれ。音楽ビジネス、映画・映像ビジネス、ゲームソフトビジネス、オンラインコンテンツ、そしてカードゲームビジネスなどエンターテインメントビジネスとコンテンツの表と裏を知りつくすメディアコンテンツ研究家。ブログ「黒川文雄の『帰ってきた!大江戸デジタル走査線』」(http://blog.livedoor.jp/kurokawa_fumio/)も更新中。
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