年末が近づくと何かと忙しい。街角や店舗にはクリスマスツリーときらめく電飾が増える。BGMもクリスマス系の楽曲が多くなり、頼んだわけでもないのにいやが応でも師走感が高まる。エンタメの世界も同様で、年末年始はエンタメ業界にとっては稼ぎどきだ。クリスマスは家族需要や個人需要が高まり、年末年始は自宅でできる娯楽やサービス需要が高まる。
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ところが、最近はどうやらそうでもないようだ。全般的な景気は閉塞(へいそく)感を増し、コンテンツへの期待感も薄い。そんな需要がどこへ向かうのか?という答えの一つが「薄い」ソーシャル系コンテンツだったりする。「娯楽の王道」だったテレビも、年末に向けて視聴率という数字を賭けて特番を連発する「のろし」を上げているが、「娯楽の王道」だった時代は確実に揺らいでいる。
コンテンツビジネスにかかわる身としては、昨今の市況の分析になかなか苦しむことがある。「娯楽の王様」のテレビにしても、ギャラが安めの芸人や、衝撃の瞬間的な映像を重視し、コストカットを進めながら視聴率を稼ぐ「効率化」を図っている。家庭用ゲーム用ソフトも、予約本数の大幅な落ち込みが目立つ。シネコンを中心にした映画館も減少傾向がニュースになったばかり。出口はないような袋小路のようなエンタメ業界の年の瀬……。
今年、世の中を騒がしたソーシャルコンテンツはどうだろうか? 年末に向けてEXILEをキャラクターに起用した「聖戦ケルベロス」も登場し、DeNAがプロ野球球団の「横浜ベイスターズ」の買収というニュースで日本中の注目を集めた。そんな多くの話題を提供してくれたソーシャルコンテンツだが、来年の展開はどうだろうか。「熱しやすく冷めやすい」のが日本人の気質。来年になれば「ああ、そんな言葉がはやったね」とならなければいいのだが。
メディアの変遷とともにコンテンツも変わっていく。インターネットでは例えば、ゲームの攻略サイトが充実する一方で、ゲーム攻略本の売り上げが減少するなどメディアの“淘汰(とうた)”が進んでいる。またコンテンツのリッチ化が進み、携帯電話の回線が混み合う中で「無制限プランの撤廃」という議論が進む一方、テレビの視聴率は「20%を超えれば大ヒット」という一昔前には考えられない状況になっている。
ネットの回線容量が上がるとリアルメディアの容量が減る……というシーソーゲームのような様相を呈しているが、ビジネスではリアルとネットのどちらになってもチャンスを見いだせるようにしておくことも重要なことだ。来年は辰(たつ)年。どんな龍が飛びだすのか? 今から楽しみである。
◇著者プロフィル
くろかわ・ふみお 1960年、東京都生まれ。音楽ビジネス、映画・映像ビジネス、ゲームソフトビジネス、オンラインコンテンツ、そしてカードゲームビジネスなどエンターテインメントビジネスとコンテンツの表と裏を知りつくすメディアコンテンツ研究家。ブログ「黒川文雄の『帰ってきた!大江戸デジタル走査線』」(http://blog.livedoor.jp/kurokawa_fumio/)も更新中。
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