先日、私が以前に所属したギャガ(旧ギャガ・コミュニケーションズ)のOB会が開催されました。集まったメンバーは今もエンタメ業界で活躍しており、当然映像業界についての話題が中心でしたが、「どこそこの会社が倒産した」「DVDのイニシャル(初回の発注の数字)が1万枚いけばいいほうだ」とか、何かと世知がらい話題ばかりでした。
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その中で興味深いトピックスが、11年12月に東京・代官山に開店したコンセプトショップ「代官山蔦屋書店」です。「オトナのTSUTAYA」というキャッチフレーズで、店内にはコンシェルジュ(案内人)を配してデジタル端末を設置、カフェやラウンジで書籍や雑誌を読めるため、「新しい書店の形」として顧客から歓迎されているようです。
しかし一方で気になったのは、60歳以上のシニアを対象にした旧作DVDの無料レンタル展開です。既に全国展開しているサービスで、普段はDVDを見ないシニア層に訴求することが狙いだと発表されていますが、個人的には過剰なサービスだと思っています。時間と可処分所得のあるシニア層へ売り込みたい気持ちも分かるのですが、コンテンツ開発や市場の拡大という未来を考えるのであれば、少子化の時代といえども若い世代のファンの開拓や囲い込みに努力をするべきだと私は思います。
また、私の経験からいうと、旧作無料の施策はメーカー側に無理を強いていると考えています。実際、私はギャガ在職時にカルチュア・コンビニエンス・クラブ(CCC)の関連会社のレントラックジャパン(現在は吸収合併で消滅)に出向したことがあります。この会社のサービスは、メーカーからソフトを無料で仕入れ、PPT(Pay Per Transaction)という視聴回数に応じた利益配分を行うというシステムが根底にあり、当時は私もシステムの構築に尽力したものです。
このシステムのルーツは、店頭でなかなかレンタルが促進されないコンテンツや、メーカー側がどうしても売りたい(レンタルさせたい)コンテンツを店舗に仕入れてもらうために生まれたシステムで、店舗側には負担はありません。当時は若干の仕入れ時の最低保証金額のようなものがありましたが、その後、無償で仕入れ、レンタルされた回数に応じてメーカー側にレンタル料金が支払われるという形に変化していきました。
PPTシステムの導入当時はCCCやレントラックの自社映像商品やマイナーな映像商品しか在庫ができませんでした。しかし、小型路面店が廃業に追い込まれ、CCCやGEOばかりの構成になってしまったため、そのうち新作までもがその対象になったのです。個人的には、無料レンタルの存在は、現在の利益を食いつぶすばかりで将来的に流通の存在意義すら揺るがしかねないものだと感じています。
くろかわ・ふみお 1960年、東京都生まれ。音楽ビジネス、映画・映像ビジネス、ゲームソフトビジネス、オンラインコンテンツ、そしてカードゲームビジネスなどエンターテインメントビジネスとコンテンツの表と裏を知りつくすメディアコンテンツ研究家。ブログ「黒川文雄の『帰ってきた!大江戸デジタル走査線』」(http://blog.livedoor.jp/kurokawa_fumio/)も更新中。
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