注目映画紹介:「くろねこルーシー」 前に一歩を踏み出せない占師を塚地が好演

「くろねこルーシー」の一場面 (C) 2012「くろねこルーシー」製作委員会
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「くろねこルーシー」の一場面 (C) 2012「くろねこルーシー」製作委員会

 「ねこタクシー」「犬飼さんちの犬」など、ペットと人とのかかわりをひと味違った視点の作品に仕上げてきたシリーズの最新作「くろねこルーシー」(亀井亨監督)が6日に公開される。うだつの上がらない中年の占師が黒猫との出会いを転機に前進していくさまを、温かく描き出してホロリとさせられる。ただ癒やされるだけでなく、そっと背中を押してくれる映画だ。主演の塚地武雅さんがいい味を出している。

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 鴨志田賢(塚地さん)は元サラリーマン。妻と息子と別居中のわびしい独り暮らしだ。占師をやっているが、客足はほとんどない。ある日、たまたま近所で黒猫に出会う。受験に失敗した日、リストラされた日、妻に別居を切り出された日……人生の節目で黒猫が目の前を横切ってきたことを思い出した鴨志田は不吉に思うが、その黒猫が軒下で2匹の子猫を産んで去っていってしまう。いやいや子猫の世話を始めて、なりゆきで「黒猫占い」を始めると大ヒットしたのだが……というストーリー。

 自転車に乗った塚地さんが登場するだけで、映画への期待値が高まった。この人は風貌自体が絵になっている。最近では「ひみつのアッコちゃん」でキーパーソンとなる守衛さんを演じていたが、今やお笑いだけでなく俳優としてもおなじみになってきた。愛想をつかしたはずの妻が、つい夕食の世話をしにやって来てしまうのも分かるような気がする。塚地さんが演じる鴨志田は、猫を守るうちにいつしか家族を守ることの本当の意味に気づいていく。占師自体が一歩を踏み出せないというキャラクター設定も面白い上、塚地さんの演技と相まってベストキャスティングとなった。自由奔放な猫の魅力も満載。黒猫2匹が狭い室内で動き回る姿が可愛らしく、いつまでも見ていたい気分になった。ところで、塚地さんの上司役・直江喜一さん(「3年B組金八先生」の加藤君)がミカンを……! 監督と脚本家が69年と68年生まれだったのでこんな遊び心のあるシーンも盛り込まれ、楽しい気分になった。6日から(キョーコ/毎日新聞デジタル)

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