池上彰:2013年を予測 世界は「緊張から修復へ」 問われる選挙後内閣

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 ジャーナリストの池上彰さんが9日放送の特別番組「そうだったのか! 池上彰の学べるニュース 総選挙直前 緊急解説SP」(テレビ朝日系)に出演し、総選挙の基礎的な仕組みから意外に知らないポイントまでを分かりやすく解説する。今年は「取材で1年の3分の1は海外だった」といい、精力的に活動を続ける池上さんは、2012年は「非常に国際関係が緊張する年だった」と分析、2013年について「国際関係の緊張状態が改善に向かう可能性がある」と予測している。番組収録後に話を聞いた。(毎日新聞デジタル)

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 ◇画期的だった日本の外交政策

 −−池上さんが選ぶ今年の重大ニュースは?

 それはもう解散・総選挙ですよね。新しい総理大臣の誕生が一番でしょう。あとは消費税増税法案が通った。それからユーロ危機、アメリカ大統領選挙、もちろん尖閣問題、中国の反日暴動、韓国の李明博大統領の竹島上陸ですよね。それと、オウム真理教の指名手配容疑者逮捕もなかなかのものでしたね。スカイツリー開業、五輪もあったじゃないですか。北朝鮮の金正恩の(第1書記)就任もありましたね。2度にわたるミサイル発射も。2回目はどうなっているか分かりませんが。山中(伸弥・京都大)教授がiPS細胞でノーベル賞受賞。いっぱいあるじゃないですか。

 −−日本ではあまり大きく報じられていないが、注目すべきニュースとは?

 いろいろあるんですけど、例えばパレスチナを国連の総会が「オブザーバー国家」に昇格させたということです。さらに言うと、画期的だったのは、日本がそれに賛成したこと。アメリカとは同一歩調をとらずに日本独自でパレスチナの国家を承認したというのは、日本の外交政策としては画期的なことですよ。意外にそういうことは日本で報道されていませんけどもね。これまでだったらアメリカに遠慮して棄権していたはずです。

 −−今年の日本のテレビ報道について感じたことは?

 日本にほとんどいなかったので、ほとんど見てないんですよ。海外取材で1年の3分の1は海外でしたからね。日本にいる間は本を書いていたので、テレビを見ていなかった。テレビに出るのが忙しくて見る暇がない(苦笑)。

 ◇国際関係は緊張から改善へ

 −−来年注目すべきニュースは何でしょうか?

 総選挙後の新内閣がどのような方針を打ち出すのか。とりわけ中国や韓国との関係をどうしていくのか、ということが非常に問われる年だなと思います。2012年というのは、いろんな国で政治リーダーを選ぶ年でしたよね。選挙となると、それぞれが自分に都合のいいように、言ってみれば、外に敵を作ったり、よその国を批判することで、自分の支持を得ようとする動きが高まる。そういう意味で、2012年という年は非常に国際関係が緊張する年だったですね。

 それが、主な国のリーダーが全部代わりました。2013年は今度は修復にかかっていく年なんですね。いつまでもそれぞれの国の関係が悪い状態のまま続くと、やっぱり経済的にもどちらにもいいことはないわけですから、どのように修復していくのかという修復過程に入る。それが2013年だなと思います。国際関係の緊張状態が改善に向かう可能性がある。そのときに日本のリーダーがどのような道を歩もうとしているのかというのが非常に注目だと思います。

 ◇プロの力が問われるネット時代

 −−ネットの存在感が増す中、報道はどうあるべきでしょうか?

 テレビにしても新聞にしても既存のメディアは本当の意味でプロの力が問われると思うんです。ツイッターでもブログでも、みんながどんどん発信できるようになりましたよね。役所でもどこでも広報資料を全部ウェブに出して公開をする。誰でも一次資料にアクセスできるようになる。その時にプロとして、これをどのように見て、どのように解釈すべきかということを、きちんと分析してみんなに分かりやすく伝えるという本来の業務が、これまで以上に問われる。ある程度力がある人は既存メディアを見なくても、自分で一次資料を見ることができるわけですし、自分の意見を発信できるようになっている。そんな時に、どれだけ違いを出すことができるのか。プロの力が問われるなと。非常にしんどい時代だなと思いますね。

 −−受け手側の視聴者や読者は、どんな事に気をつけてニュースを見るべきか?

 ツイッターならツイッターをしている人の個人の思いが出ているわけですから、事実関係として思い違いがあったりということはいくらでもあるわけですよね。ブログでも。大津のいじめ自殺に関しても、間違った人が名指しでいじめの加害者扱いされたり、加害者の関係者だと勘違いされたり、あるいはそれをブログに書いたり、書いてそれを拡散させて被害が広がったりということがいくらでもあるわけですね。思い込みでいくらでも間違いが拡散するのもまたネット時代なのかなと。いろんな事が間違えたりすることもあるということも含めて、受け手の側のリテラシー、読み解く力がこれまで以上に問われていると思いますね。

 ◇わくわく感伝えたい

 −−池上さんが考える「いい質問」とは。

 番組的にいい質問というのは、この後にやろうと思ったことをちょうどタイミング良く、結果的に引き出す質問があると、「いい質問ですね」と思わず言いたくなるんですけど、私が考えるいい質問は、すごく初歩的な基本的な素朴な質問だけど、本質を突いている。ものすごく素朴なのかもしれないけど、本当に本質を突いていて、それゆえに答えようとすると本質的な解説になる。そういうものが私にとってのいい質問だと思うんですね。

 −−取材する上で心がけていること、心構えを教えてください。

 まあ好奇心といいますか、とにかく知りたい。新しいことを知ることはとってもわくわくすること。初めて行く場所、初めて会う人、初めて見るニュース、やっぱりすごくわくわくするし、そのわくわく感を視聴者に伝えたい、あるいは本の読者に伝えたいって思うんですね。そのためには自分がどうしたらいいんだろうか。自分が「ええ!そうなんだ」「ええ!知らなかったー」という驚きを他の人にも伝えたい。「実はこんな話があるんだよ」「こんなに面白いんだよ」と言って、それを聞いた人が「ええ!面白いねえ」と言ってもらえるようにするためには、どういうふうにしたらいいのかなといつも考えるということです。自分が新しいことを知って、その驚きを他の人にもそのまま伝えたい。驚いてもらうには、どこから説明したらいいのかなとかいうことを、いつも考えていますね。

 「そうだったのか! 池上彰の学べるニュース 総選挙直前 緊急解説SP」は、レギュラーの劇団ひとりさん、土田晃之さんに加え、HKT48の指原莉乃さん、優木まおみさん、伊集院光さん、北斗晶さん、平泉成さんがゲストで出演。総選挙のほか、米国の「財政の崖」問題、韓国大統領選を取り上げる。9日午後9時~同11時10分に放送予定。

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