妖怪人間ベム:狩山俊輔監督、製作の河野英裕さんが明かす ベム衣装の秘密と杏さん起用の裏話

「映画 妖怪人間ベム」の製作のこぼれ話を語った河野英裕プロデューサー(左)と狩山俊輔監督
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「映画 妖怪人間ベム」の製作のこぼれ話を語った河野英裕プロデューサー(左)と狩山俊輔監督

 15日に全国で公開され、好スタートを切った「映画 妖怪人間ベム」。映画化の前に1968年に放送されたアニメを11年に実写ドラマ化する際には、制作側にはそれなりの勇気が必要だったようだ。その当時の思いを振り返っていただき、オリジナルのアニメを知るからこそ気になるベムの衣装の秘密と、アニメから抜け出てきたようなベラ=杏さん起用の経緯について、狩山俊輔監督と製作を担当した河野英裕プロデューサーに聞いた。(りんたいこ/毎日新聞デジタル)

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 −−あのアニメを実写ドラマ化するというのは、かなりの冒険だったと思います。

 河野さん:(アニメの)ストーリーはよく覚えていなかったんですが、「早く人間になりたい」というコンセプトが、この上なく秀逸でした。そのコンセプトさえあれば、人間ドラマも描けるし、妖怪人間というギミック(仕掛け)も入っているしで、土曜日午後9時というあの(日本テレビ系のドラマ)枠、子供たちが熱狂的に見てくれて、大人まで楽しめるエンターテインメントの枠に、最高の原作だと常々思っていました。

 −−では、企画が通って実現できるとなったときは「よっしゃあ!」と?

 河野さん:いえ、ヤバイと思いました(笑い)。あの原作に手を付けることは、正直、怖かった。ただ、妖怪ドラマを作るのではなく、人間ドラマを作っていけば、決して恥ずかしくないものになる“かもね”とは思っていました。とはいえ、ドラマの1話目の(完成前の)オフライン編集を見たときは、それこそヤバイと思いました。というのは、これは人間ドラマも入っていますが、やっぱり、アクションや妖怪が一つの見せどころ。でも、(ドラマは)時間やお金などいろいろ制約がある中で、監督以下スタッフは最大限に努力してくれましたが、やっぱりかなわない部分もあった。で、オフライン編集を見たとき、「さあ、どうしよう」となったわけです。でも、それがあったから踏ん張れたんだと思います。

 −−ベム、ベラ、ベロを演じるKAT−TUNの亀梨和也さん、杏さん、鈴木福君はそれぞれぴったりのキャスティングです。中でも杏さんはアニメのベラにそっくりですが、最初からスムーズに出演者は決まったのですか?

 河野さん:いいえ、かなり迷いました。まず、ベラを演じる女優さんは、身長が高いことが条件でした。あとは、ぶち切れなきゃならないし、辛辣(しんらつ)なこともいわなきゃいけない。でも、根っこには母性があるという両極端の役を演じられる人。杏ちゃんは、これまでの作品をいろいろ見ていて、母性の方は大丈夫だと思っていましたが、いい切れっぷりを見せられるかどうか、正直、僕には分からなかったんです。でも、周囲のみんなの助言があり、よし、杏ちゃんで行ってみようと。結果、見事でした。

 狩山監督:ベラは3人の中で、原作に一番忠実でなければならないキャラクターだと思っていました。ベムは、見た目も年齢も原作(アニメ)と大きく違うし、ベロについては、アニメの方では、ほとんど主役のような立ち位置でした。今回、ベムを主人公に据えたとき、作品がどう転がっていくんだろうという不安はあったんですが、アニメから本当にベラが抜け出てきたような忠実さをもってやってくれた杏ちゃんの最初のお芝居を見たときは、正直、ホッとしたし、あの3人の輪というのは、その瞬間に大丈夫だろうと確信しました。

 −−原作アニメを知る人間にとっては、ベムの衣装が柄本明さん演じる名前の無い男の衣装になっていたことが不思議でした。

 河野さん:柄本さんに、あの衣装を持っていこうというのは、(監督の)狩山のアイデアです。その前には、あの衣装をベムに着せようとしたんですよ。でも、いま一つしっくりこなかった。

 狩山監督:(ドラマのベムの衣装は)原作のベムのとは随分違いますよね。一度は、デザイン違いながら、素材を原作に寄せてみようと作ってはみたんですが、うまくいかなかった。ソフトになり過ぎたんです。それで、殻に閉じこもったようなベムの硬さを出すために、彼らは何百年も前に生まれた設定で、当時はなかったと思いますが、あえて革のパンツをはかせることにしました。あとは単純に、本当にスタイルのいい亀梨くんが似合う、カッコいいものを目指しました。

 河野さん:無理にはめ込むより、亀梨くんが一番似合うベム、カッコいいベム、哀愁漂うベムを作るべきだということで、あの衣装になったんです。やっぱり最終的には出演者。出演者がどれほど魅力的に輝くかが肝心ですから。

 <狩山俊輔監督のプロフィル>

 1977年生まれ、大阪府出身。テレビドラマ「セクシーボイスアンドロボ」(07年)、「1ポンドの福音」(08年)、「銭ゲバ」「サムライ・ハイスクール」(ともに09年)、「怪物くん」「Q10」(ともに10年)、「ダーティ・ママ!」(12年)などを演出。11年にドラマ「妖怪人間ベム」を演出し、今回の映画化で監督を務めた。

 <河野英裕プロデューサーのプロフィル>

 1968年生まれ、熊本県出身。テレビドラマ「すいか」(03年)、「野ブタ。をプロデュース」(05年)、「マイ★ボス マイ★ヒーロー」(06年)、「銭ゲバ」(09年)、「Q10」(10年)、「妖怪人間ベム」(11年)などのプロデューサーを務める。ほかにスペシャルドラマ「車イスで僕は空を飛ぶ」(12年)などがある。

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