25日(日本時間)に発表される第85回米アカデミー賞で作品賞、主演女優賞など5部門でノミネートされている「ゼロ・ダーク・サーティ」が15日に全国で公開された。前作「ハート・ロッカー」がアカデミー賞作品賞、監督賞、脚本賞などに輝いたキャスリン・ビグロー監督と脚本家のマーク・ボールさんのコンビで作り上げた。2度目の作品賞受賞に期待がかかる。
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映画は、11年5月に実行された、米海軍特殊部隊(ネイビーシールズ)による9.11テロの首謀者ウサマ・ビンラディン殺害事件を取り上げている。ビンラディン殺害にいたるまでに、米国側はどのように情報を集め、どのように計画を進めていったのか。そして、計画の中心的人物が、驚くべきことにCIAの若き女性分析官であったことなどが明らかにされていく。
CIA女性分析官マヤに扮(ふん)するのはジェシカ・チャステインさん。彼女はこれまで、「ヘルプ~心がつなぐストーリー」(11年)や「ツリー・オブ・ライフ」(11年)、「テイク・シェルター」(11年)といった作品に出演しているが、どれ一つとして同じような役柄、表情を見せたことがなく、今作においても、仲間による捕虜拷問に目を背けていた前半から、ビンラディン捕縛に執念を燃やす後半への見事な変ぼうぶりを披露し、その演技力の高さを改めて見せつけている。
ビグロー監督とボールさんがこうした題材をエンターテインメントとして見せ切れる手腕に感服しながら、その一方で、2人に今作を撮らせた動機、突き動かしたものはなんだったのだろうと考え込んでしまう。強い米国を示したかったのか、あるいは、米国の威信を取り戻すためか。それとも9.11の犠牲者への弔いか……。そんなことを考えると、手放しで面白かったといえなくなる。なお、タイトルの「ゼロ・ダーク・サーティ」とは、午前0時半を意味する米軍の専門用語で、ネイビーシールズがビンラディンの潜伏先に突入した時刻を指している。15日からTOHOシネマズ有楽座(東京都千代田区)ほか全国で公開中。(りんたいこ/毎日新聞デジタル)
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