最近テレビやCMでちょくちょく見かけるけれど、実はあんまりよく知らない……そんな、いまさら聞けない“ネクストブレーク芸人”の基礎知識を、本人たちの言葉を交えて紹介する。12年10月に、若手芸人の登竜門といわれるお笑いコンテスト、24年度「NHK新人演芸大賞」演芸部門で大賞を獲得し、劇場出演はもちろん、テレビのバラエティー番組でも活躍し始めた「うしろシティ」に、芸人になったきっかけや最近の活躍ぶり、今後の活動について聞いた。(毎日新聞デジタル)
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金子学さん(かねこ・まなぶ。81年3月25日生まれ、新潟県出身のA型。趣味はパン屋に行くこと、読書、キャンプ、特技は恋愛相談に乗る、寒さに強い)、阿諏訪泰義さん(あすわ・たいぎ。83年1月8日生まれ、神奈川県出身。趣味はお酒、特技は料理、本格カレーが得意)のコンビ。松竹芸能所属。結成4年目で、コントを得意とする。「キングオブコント2012」(TBS系)のファイナリストとなる実力派で、芸歴10年以下のプロの芸人が出場できる若手お笑いコンテスト、24年度「NHK新人演芸大賞」演芸部門で、出場261組の中で、「オリエンタルラジオ」や「銀シャリ」、「ジャングルポケット」などを押さえ、大賞に輝いた。両番組で披露したネタは、2月に発売したお笑いコンビ「さらば青春の光」とのコラボDVD「cafeと喫茶店」に収録されている。
小さいころからお笑い芸人になりたかったという阿諏訪さんは「20歳のときに実家の建設会社を継ごうかなと思っていたら、当時の雑誌で、『ドランクドラゴン』の塚地(武雅)さんが、24歳で会社をやめてお笑いを目指したといっていて、『あ、俺まだ20歳だな』って思った。10年くらい無駄にする覚悟で始めました」ときっかけを語った。一方、金子さんは大学の友人に誘われたのがきっかけだといい、「1年くらいやったころに解散になったけれど、そのころには自分もお笑い芸人をやりたくなっていた。小さいころは、お笑いは見てなくて、お笑いを見ていた時間よりやっている時間の方が長い」と苦笑する。
「うしろシティ」を結成する前、2人はちょうど前のコンビを解散したばかりで、「『ちょっとめしでも行く?』とかいって会っている間に、ネタを書いて、一緒にやるようになった」(阿諏訪さん)という。しかし、人見知りだという阿諏訪さんは「芸人の友だちもあんまりいなかった。だから最初は緊張しました。こいつ(金子さん)、何考えているか分からないじゃないですか」と、当時を振り返る。金子さんも「楽屋でいつも1人でいる阿諏訪を見て、もしかしたら、人見知りなのかなって気づいた。(当時)何を思っていたのか、そういうことを(阿諏訪さんが)何もいわないで、1年くらい過ぎました。腹を割って話してなかった」と同意する。
コンビ名も、オーディションを受けるためになんでもいいと思って付けた「仮のコンビ名」だったといい、「本当に(こだわりは)ないっすね。適当です。いろいろ単語を並べてみたりして、迷った先に、なんでもいいやって付けたのが今の名前」と金子さん。阿諏訪さんも「ちょっと面白いコンビ名もカッコつけているのもアレだし、ずっとつきまとうものなので、考えても分からないと思った」と由来を明かした。仮の名前という意識は結成して2、3年くらいまであったといい、金子さんは「たまにエレベーターで『そろそろ、コンビ名どうする?』って話してました」とちゃめっ気たっぷりに語った。
現在の活動の拠点は新宿角座(東京都新宿区)でのライブ。ネタは2人で協力して書いており、「ライブ前に早めに集まって、その日のネタの話をする。『今日こういう面白いことがあって、ネタになんないかな』って。それでお互い自分のせりふの部分を考える」(金子さん)といい、その日にすぐ、できたてのコントを披露して、改良することもあるという。金子さんは「できたてほやほやでやっちゃうというか、やりたいと思うのは、(所属事務所専用の)劇場があるから。月に1、2回だというなら、集中してネタを練るんでしょうけれど、(出演が)毎日に近いから、いい意味で楽。いろんなネタをやってみようという気になれる」と、お笑いへのこだわりを語った。
一方、「NHK新人演芸大賞」で披露したネタ「美容室」は、劇場で披露しながら練ったものではなく、単独ライブで見せたものだといい、「自分たちが主役じゃなくて脇役をやりたいな、という話で、最初はコンビニ店員とお客さんのネタだった」と阿諏訪さんは語る。金子さんは「最初うまくいかなくて寝かせていたネタ。コンビニじゃないかもなって」と生みの苦しみを明かした。ネタのアイデアは、「2人ともコンビニで店員と客がしゃべってるのに聞き耳を立てたり、喫茶店の会話を聞いたりして面白がってたりする」と身近なところから情報を集めている様子。金子さんは「毎日みんな何かが起きてるんだなと思うと、ネタにしようと思う」と語った。
「NHK新人演芸大賞」の受賞の影響として、金子さんは「ご飯を食べる仕事とか、ロケとか、やったことのない仕事が増えた」という。印象に残っている仕事を金子さんは「たいがい僕がやらされるんですが、つらい方が結果(放送)になる。ジェットコースターに乗ったり、へび料理店で大嫌いなへびを食べさせられるとか。へびを首に巻かれるとか」と振り返り、仕事の幅が広がったことについては、2人とも声を合わせて「楽しいですね」と笑顔を見せた。
活動拠点としているライブにも「見に来てくれる人、生で見たいといってくれる人が増えた。僕らだけじゃなく、松竹全体が盛り上がっている」(金子さん)と話す。ファンは中高生が多いといい、「子供がお母さんとか、お父さんを連れてきたりする」(阿諏訪さん)と人気を喜んでいるが、先に爆発的なブレークを果たした後輩の「キンタロー。」さんについて、阿諏訪さんは「すごいな~。ちょっと前まで共演してましたよ」とマイペース。金子さんも「スゲー。近くで見られてよかった。でも自分が目指す場所はそこじゃない」といい、やってみたいのは「若手芸人が集まるコント番組。夢ですね」と熱を込める。
そんな2人の最近の悩みは、意外にも後輩の反応。阿諏訪さんは「後輩があいさつしてくれるんですけれど、僕は人見知りなんで……。名前だけじゃなくて、芸歴とか出身とかいっぱいいわれるんですけれど、全然覚えられないんですよ」と困惑している様子。金子さんは「(街中で、顔を覚えられて)指を指されたりするようになったのは、気持ちいいだけで、嫌なことは全然ない。ただ、後輩たちが(番組収録の)見学に来たりすると、すべれない空気を作ったりする」とプレッシャーを感じているようだ。