注目映画紹介:「天使の分け前」ケン・ローチ監督最新作は不良少年の更生をコメディータッチで描く

(C)Sixteen Films,Why Not Productions,Wild Bunch,Les Films du Fleuve,Urania Pictures,France 2 Cinema,British Film Institute MMXII
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(C)Sixteen Films,Why Not Productions,Wild Bunch,Les Films du Fleuve,Urania Pictures,France 2 Cinema,British Film Institute MMXII

 仏カンヌ国際映画祭パルムドール受賞作「麦の穂をゆらす風」や「エリックを探して」などの作品で知られるケン・ローチ監督の最新作「天使の分け前」が13日に封切られる。長い年月をかけて熟成されていくウイスキーに人生をなぞらえた、味わい深い一本だ。

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 スコットランドのグラスゴーに住むロビー(ポール・ブラニガンさん)は、いわゆる不良少年だ。10カ月前に少年刑務所を出たばかり。最近も地元の不良たちとひと悶着を起こし、裁判所から300時間の社会奉仕活動を命じられた。その奉仕活動先で知り合ったのが、現場の指導者でウイスキー好きのハリー(ジョン・ヘンショーさん)と、作業仲間の若者たち。彼らとの出会いが、やがてロビーの人生を大きく変えていく……というストーリー。

 ローチ監督の作品といえば、暗く厳しい現実を描いた内容のものが多い。もちろん今作も、前科者が置かれる厳しい現実を描いてはいるが、コメディータッチを取り入れたことで深刻さが緩和され、笑いながら見ているうちに心が温かくなる、とてもすてきな作品に仕上がっている。物語がすてきなら、ロビー役のブラニガンさん起用の経緯もすてきだ。彼はかつてロビーのような問題児だったそうで、その彼に今作の脚本家のポール・ラバティさんがリサーチのためにたまたま取材をしたのが縁で、この役に抜てきされたのだとか。演技経験のない彼が映画の主人公となり、スカーレット・ヨハンソンさんと、「Under the Skin」(13年公開予定)という作品で共演するまでになったというのだから、まったくもってラッキボーイだ。

 ともあれ、クスっと笑えて、途中ハラハラもし、最後にはすがすがしい気持ちに包まれる。最初はさえなかったロビーが、最後はハンサムな青年に見え、それが彼の成長を証明していた。ちなみに、タイトルにもなった「天使の分け前(Angels’ Share)」とは、ウイスキーの原酒が樽の中で熟成中、年数%蒸発して失われる分のことをいう。13日から銀座テアトルシネマ(東京都中央区)ほか全国で順次公開。(りんたいこ/毎日新聞デジタル)

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