俳優の水谷豊さんと女優の伊藤蘭さん夫妻が10日、東京都内で行われた映画「少年H」(降旗康男監督)の初日舞台あいさつに原作者の妹尾河童さんとともに登場。妹尾さんから「お父ちゃんがよかった。水谷さんがもうちょっと大きかったらダメだった。お父ちゃんと同じ寸法だったんだよね」と賛辞を贈られた水谷さんは「ですから僕、小さく生まれたことをこんなに感謝したことはなかったですね」と応じた。
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日ごろは舞台美術デザイナーとして裏方に徹し、ほとんど公の場に出てくることはないという妹尾さんだが、水谷さんの呼びかけに応じて観客席から「僕は絶対いやだって言ったのに、あなたは禁を破った。僕の生き方を変えた。ひどいですね」とジョーク交じりにステージに登場。過去4度にわたり映画化を断り続けてきたという妹尾さんは「本当にすばらしかった。原作者冥利に尽きる」と作品の出来を喜び、同映画で夫婦役を演じた水谷さんと伊藤さんの演技を「(作品にも登場する自身の妹で)今年81歳になる好子が、試写を見て『お父ちゃんとお母ちゃんに会えた! 話し方も一緒やった!』って。娘が言うから本物だと思う」と演技を絶賛した。
「少年H」は、1997年に出版された妹尾さんの自伝的長編小説が原作。美しく異国情緒あふれる神戸の街が戦争によって荒廃する中、自分の目で見て、自分の頭で考えて自分の言葉で語ることの大切さを教える父とどんな苦境の中でも「愛」を忘れず夫を信じ、子供を慈しむ母の元で強くたくましく育っていく少年Hの姿が描かれている。映画では少年Hを吉岡竜輝さんが演じている。この日まで、第35回モスクワ国際映画祭への参加や各地での宣伝キャンペーンを行ってきた水谷さんと伊藤さん夫婦は、総移動距離2万1855キロという旅を振り返り「映画がなければ一緒にこんなにたくさんのところには行かなかったですね」としみじみ語っていた。(毎日新聞デジタル)
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