グランド・イリュージョン:アイゼンバーグに聞く「マジックショーをする場面が一番好き」

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 映画「グランド・イリュージョン」が全国で公開中だ。今作は、奇想天外なマジックショーをしながら不可能に見える盗みを同時に行う4人組のイリュージョニストチーム「フォー・ホースメン」と、FBIとの攻防を描く。「ソーシャル・ネットワーク」(2010年)で注目を浴びたジェシー・アイゼンバーグさんが主演、「トランスポーター」(02年)のルイ・レテリエ監督がメガホンをとった。来日したフォー・ホースメンの一人、アトラスを演じたアイゼンバーグさんに話を聞いた。(遠藤政樹/毎日新聞デジタル)

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 「脚本を読んでの印象は、ぐいぐい引っ張ってくれるというか、分かっているつもりで読み進んでもどんでん返しがあったりなど意外なところをどんどん突いてくれるので、読んでいてすごく興奮しましたし、素晴らしい脚本だと思いました。あれだけ読み手を右往左往させ、びっくりさせるような脚本は珍しいと思うので引かれました」とアイゼンバーグさんは脚本の第一印象を語る。「キャラクターに引かれたのももちろんありまして、非常にこれは面白い男だなと。世界一のマジシャンということもありますが、それを自分でちゃんと分かっていて自信満々(という設定)。そういう人を数カ月間演じられるというのは楽しいかもしれないと思って引き受けました」と出演が決まったときの心境を明かした。

 アイゼンバーグさんが演じたアトラスはトランプマジックの名手という役柄。マジシャンという特殊な役について「この映画はすごくユニークな体験でした。技術が非常に卓越した男を演じるわけですから、相当練習しないといけない。僕が演じたアトラスが見せるトリックをやるには、プロのマジシャンであれば25年間、毎日8時間練習してできること。それを1カ月間でやらなければいけなかったわけです」と話す。続けて、「トレーナーとしてデビット・コーンさんというマジシャンに付いてもらい、彼にすべてを教わりました。マジックの歴史も教えてもらいましたし、とにかく彼と一緒に毎日練習して、撮影が始まるころにはいかにもアトラスがプロとしてマジックを披露していると見せられるようになるくらいのレベルにはなりました」と役への取り組みを語った。

 役作りをしていく上でさまざまなマジックを教わったという。その中で特に気に入ったのは「映画の冒頭で見せるトランプを使ったトリック。“フォース”というそうですが、あれは何が見えたかはあらかじめ決めていて、観客の目線がそこに行くように仕込む。コツを学べばやりやすいトリックで、ベースとしていろいろなトリックに派生させることができるので面白いし、やりがいがある。一番のお気に入りですね」と話す。そして「練習は毎日やっていて、現場のいろいろな人を相手にくり返し練習させてもらっていたので、みんなも飽き飽きしてたんじゃないかな(笑い)。最初は楽しんでくれていたみたいだけど、途中で嫌になってきていたみたい」と笑った。

 得意な技が異なる4人のマジシャンが登場する今作で気になったマジックは「自分の役の話になってしまうけど……」と前置きをした上で、「アトラスは手技を使うという手品師なので、例えば手錠をかけられているのにカードをシャッフルしていくシーンなどは所作として見ていて美しいなと思う。そういう彼のカードシャッフルに対する技術への憧れはあります」と自身が演じたアトラスのカードさばきが気に入っているという。他のキャラクターについては「アイラ・フィッシャーが演じているエスケープアーティストをやってみたい。(自分が)ニューヨークに住んでいるので、ビルだったり、地下鉄だったりバスだったりに閉じ込められている状態なので、パッと逃げられたらいいですね(笑い)」とユーモアたっぷり話した。

 印象に残っているシーンは「マジックショーをやるシーンが一番好き。フォー・ホースメンの掛け合いも面白いし、観客のエキストラの皆さんも口答えするなどインタラクションがないといけないと監督に指示されていたものだから、すごくにぎやかなわけです。だから僕らも本物のマジックショーをやっている気分になれる。俳優同士の掛け合いも、皆さん本当にユーモアの感覚に優れているので、お互いにアドリブも楽しかった」とお気に入りの場面について話した。

 互いにアドリブを楽しむという共演者については「ウディ・ハレルソンは前に共演したこともあったので、今回はいろいろなアドリブをはさみながらの演技でしたが、あうんの呼吸はすでに出来上がっていたのですごく楽しかった」と話す。続けて「いつも2人でいろいろなアイデアを絞り出しては現場に持ち込むというのをお互いやっていました。ウディはもれなく前日にはきちんとネタを準備して、準備万端な状態で当日撮影に臨むという、真剣に仕事に取り組む方です。改めて感心しました」と演技についてのアイデアを競い合うように出し合っていたと明かした。そして、「マーク・ラファロは前から素晴らしい俳優だと思い、共演したいと考えていました。彼もまたなんでも真剣勝負で臨むので、そういうところが素晴らしいと感じました」と敬意を表する俳優と共演できたと喜んでいた。

 マジシャンを演じてみて、俳優との共通点はあったかと聞くと、「“観客のためにパフォーマンスをする”という点では、俳優もマジシャンも似ているのだろうけど、一つ、小さいながらも決定的な違いがあると思う。マジシャンは今やっていることは本物と言いながらうそをついている。それはトリックだから。俳優は観客と暗黙の了解がある。本物ではない、フィクションということを分かってもらった上で演じているので、マジシャンのほうが観客をだますことに対する罪悪感が、役者ほどあまりないのかもしれないと思います」と持論を展開した。

 多彩な視点で楽しめる今作については「この映画は非常にスリリングでインタラクティブだと思います。いろいろなマジックを見せつけられますが、そのタネもちゃんと明かしてくれる。そして、そういうのをいろいろと見せられた上で暗幕は誰だという謎解きもある。非常にインタラクティブなゲーム感覚で見ることができる映画だと思います」と魅力を語る。そして日本のファンへ向けて「日本の皆さんには、きっと気に入ってもらえると思うので、ぜひ(劇場に)見に来てほしい。もし気に入らなかったときはもう数回見てみてほしい。そのうち気に入るようになると思うからね」とチャーミングな笑顔見せながらメッセージを送った。新宿ピカデリー(東京都新宿区)ほか全国で公開中。

 <プロフィル>

 1983年10月5日生まれ、米ニューヨーク出身。高校時代から演劇を始め、99年にテレビシリーズ「ゲット・リアル」でデビュー。「Roger Dodger(原題)」(02年)で映画デビューを果たす。その後「イカとクジラ」(05年)で「インディペンデント・スピリット・アワード」の助演男優賞などにノミネートされ注目を浴びる。「ハンティング・パーティ」(07年)や「ゾンビランド」(09年)などに出演し、10年に公開されたフェイスブックの創設秘話を描き、デビッド・フィンチャー監督がメガホンをとった「ソーシャル・ネットワーク」で主演を務める。

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