「胡同(フートン)のひまわり」(2005年)のチャン・ヤン監督が、「孔子の教え」(09年)で老子を演じたシュイ・ホァンシャンさん、「古井戸」(1987年)の監督で俳優としても活躍するウー・ティエンミンさん、「初恋のきた道」(99年)のリー・ビンさんら中国の名優を配して、お年寄りたちの反逆を人情豊かに描き出した「グォさんの仮装大賞」が公開中だ。涙と笑いのある作品に仕上がっている。
ウナギノボリ
解説:新たな“最高峰”を目指したガンプラ 45周年のこだわりとは
妻を亡くしたグォさん(ホァンシャンさん)は、友人であるチョウさん(ティエンミンさん)の勧めで残りの人生を老人ホームで過ごすことになった。家族にも見放され、変わりばえのしない日々。グォさんは、みるみるうちに生きる気力を失っていく。そんなグォさんを励ますチョウさんや仲間たち。ある日、チョウさんは人気テレビ番組「仮装大賞」を見て、みんなで出場することを提案する。ホームの老人たちは活気づくが、家族とホーム職員らに出場を反対されてしまう。なんとしても出場したかった彼らは……という展開。
老人たちが人生最後に立ち上がり、夢を追いかける姿がユーモラスに描かれ、心温まる。名優たちがまるで校則違反をする中学生のようなやんちゃな表情で、生き生きと演じているから愉快だ。しかし、これはただ温かいだけの映画ではない。「何かに没頭することで死を忘れたかった」など、グサリとくる鋭いせりふで人生の残り少ない老人の心の内を鋭くえぐる。高齢化社会、家族の絆の薄さ、拝金主義……社会の背景は中国も日本と同様にシビアだ。グォさんと疎遠になった家族との間には厳しい現実があり、その一方で、後半はファンタジックな展開で心を沸き立たせる。窮屈なホームの景色から一変、広大な風景が眼前に広がり楽しさが倍増する。「仮装大賞」出演のチョウさんの本当の目的とは……? この展開にはつい泣かされた。11日からシネマート新宿(東京都新宿区)、シネマート心斎橋(大阪市中央区)ほか全国で公開中。(キョーコ/フリーライター)
<プロフィル>
キョーコ=出版社・新聞社勤務後、闘病をきっかけに、単館映画館通いの20代を思い出して、映画を見まくろうと決心。映画紹介や人物インタビューを中心にライターとして活動中。趣味は散歩と街猫をなでること。
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