作曲家・前山田健一として、ももいろクローバーZやゆずなど人気アーティストに作品を提供するかたわら、自らも前面に出て音楽活動を行っているヒャダイン。ニューシングル「半パン魂(スピリット)」は、テレビアニメ「ガンダムビルドファイターズ」のエンディング曲を含む3曲を収録し、アーティスト・ヒャダインが持つさまざまな側面が表れた作品に仕上がっている。また、テレビで活躍する一方で、“あくまでも楽曲制作が軸”と語るヒャダインさんに、活動のスタンスなどについても聞いた。
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−−それにしても「半パン魂」というタイトルが、キャッチーでインパクトがあって、秀逸ですね。
「ガンダム~」の監督から、小さな子どもでも大人でも好きなものに対する気持ちは変わらないということを、歌にしてほしいとオファーがあって。つまり、子ども心を忘れない……子どもの頃を象徴するものとして、半パンという言葉が出てきたんです。子どもの頃って、男の子はみんな冬でも半パンをはいて外を走り回っていたじゃないですか。冬でも半パンという心意気が、すなわち子ども心かなって。リコーダーでもよかったけど、男の子だと考えると、やはり半パンだなと。
−−曲調としては、ノスタルジックな独特のポップ感で、歴代ガンダムシリーズの楽曲の中では異色だと思いました。
そうですね。ガンダムといえば、イケイケで力強いとかカッコいい曲を想像しますからね。監督から、エンディングっぽいものとか、30歳になった主人公がガンプラ(ガンダムのプラモデル)をイジっているイメージのお話をいただいていたので、少し懐かしさもあってエンディングっぽい落ち着いた感じを出しました。ただ全体に明るめで、しみったれた感じにはならないように注意しましたね。
−−ヒャダインさんもガンダムはお好きでしたか?
僕のときは「キン肉マン」や「聖闘士星矢」が全盛だったから、そこまで周りでムーブメントになっていたわけではなかったです。ただ姉がハマっていて、よくガンプラをイジっていているのを見ていたから、姉を通してガンプラやガンダムの魅力や楽しさを知っていったという感じですかね。
−−では、ヒャダインさんが子どもの頃に夢中になっていたものは?
RPGだったり、ピアノの練習だったりを夢中になってやっていました。例えば「ファイナルファンタジー」とか「ドラゴンクエスト」とか。「半パン魂」の歌詞にも「レベル上げ」と出てきますが、本当に何周もプレーしましたよ。いまだにスマホやニンテンドーDSの復刻版をやっていて、この間も「ドラクエ5」で何十回目かのクリアを達成しました(笑い)。
−−2曲目の「シャアが来る」は、ファーストガンダム(1979~80年に放送された一番最初のテレビアニメ「機動戦士ガンダム」)当時の楽曲のカバー。その世代としては、これをカバーするか!と驚きでした。
今回は、ガンダムの流れでカバーもやりたいと思って。ただ、有名な曲をやってもヒネリがないし、探していたところで、スタッフさんに教えてもらったんです。数あるガンダムソングの中でも、まれに見る珍曲で衝撃でした(笑い)。シャアにやられかけている人の目線で歌っているのも面白いし、そういうシュールな感じが、なんとなく僕の雰囲気に合っているんじゃないかって。ピアノのフレーズなどは原曲の通りで、音を2014年の今っぽいものにしました。ラテンフレーバーを若干入れつつ、EDM(エレクトリックダンスミュージック)寄りの音に仕上げています。これをきっかけに、原曲を振り返ってもらえたらうれしいです。
−−そして3曲目の「わーきゃーいわれない」は、ヒャダインさんのラジオ番組「ヒャダインのわーきゃーいわれたい」のテーマソング。アイドルファンがやるミックス(合いの手)で始まるすごく楽しい曲で、ヒャダインさんらしいなと思いました。
これは、いつもの僕っぽいサウンドでひたすら楽しいんだけど、歌詞は10代のモテない男の子の鬱屈とした内面を歌っています。僕自身、中高時代けっこう鬱屈していたので、そういう部分がすごく表れていると思いますね。曲が進むに従って若干開き直っていく感じもあるんですが、素直に開き直りきれないのが思春期だと思って、そういう鬱屈した部分をうまく代弁できていたらうれしいですね。この曲でこだわったのは、明るい曲調とシリアスな内容のギャップです。暗いことを、明るく笑い飛ばそうみたいなメッセージも、感じてもらえたらうれしいです。
−−今回のシングルは、ヒャダインさんのアーティスト性とオタク的な部分、ルーツ的な部分など、さまざまな面が込められた1枚になったのかもしれませんね。
そうだとしたらうれしいです。僕としては、大人と子どものボーダーラインを引くなんて、とてもバカらしいことなんだよってことが、みなさんに伝わったらうれしいかな。
−−話題を変えまして。昨年はかなりお忙しかったようですが。
いろいろお仕事をいただけるのは、本当にありがたいことです。昨年は本当にいろいろなジャンルの方とお仕事をさせていただいたので、すごく刺激がありました。
−−ヒャダインさんは仕事に枠を作っていないという印象がありますね。
枠を決めたら面白くないですから。仕事をするアーティストの男女の区別もないですし、どんなアーティストとも一緒にやって、面白い化学反応が生まれたら楽しいと思っています。中でもゆずのお二人とは、話も合って、すごく楽しかったので印象深いですね。キャリアはずっと上の大先輩なのに、すごくフランクに接してくださって。いいお兄さんというか、いい先輩ができたなっていう感覚で、とてもいい出会いになりました。
−−クイズ番組をはじめ「久保みねヒャダこじらせナイト」や「MUSICるTV」など、テレビでも活躍しましたが、今後、新たに挑戦したいことはありますか?
体力的にとか時間的に余裕があるのであれば、自分ができることならなんでもやってみたいと思っています。といっても、軸は作曲活動なので、作曲活動の妨げになるようなことは絶対にやりたくないです。
−−あくまでも作曲活動があったうえでのことと。
それが本業なんで、それだけは絶対にブレちゃダメだと思っています。音楽クリエーターという肩書ですから。それがあったうえで、そこに対していいフィードバックを生むことであれば、むしろ積極的にやりたいと思いますしね。「MUSICるTV」は、いろいろなアーティストの方とお話をする素晴らしい機会になっていて、毎回ゲストの方からさまざまな(楽曲制作の)インスパイアを受けているので、MCをするのがとても楽しくて。今では大切な番組になっています。
−−最後に、ブログで「今年は断捨離したい」と書かれていましたが、何か捨てましたか?
モノとかではなく、いらない気持ちというか…世間からよく思われたいという気持ち、カッコつけたい気持ちとか。昨年は少し考えすぎた部分があったかな?って思うんです。だから、いらないものをそぎ落として、シンプルな気持ちになって、もっともっとタフに生きたいと思っています!
<プロフィル>
本名は前山田健一。京都大学を卒業後、2007年から音楽活動を開始。ヒャダイン名義で動画投稿サイトに楽曲を投稿し話題を集め、11年にアニメ「日常」オープニングテーマ「ヒャダインのカカカタ☆カタオモイ−C」でメジャーデビュー。これまでに「黒子のバスケ」「バクマン。」など人気アニメのタイアップ曲を担当。12年には、VERBALさん(m−flo)、 野宮真貴さん(ピチカート・ファイヴ)らとコラボしたアルバム「20112012」をリリース。作曲家としては本名で活動。ももいろクローバーZをはじめ、AKB48やでんぱ組.Inc、ジャニーズ系など多くのアイドルに作品を提供。昨年は、ゆずの「REASON」「表裏一体」を共作し話題を呼んだ。
(インタビュー・文・撮影:榑林史章)
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