3月末で中島愛名義での音楽活動無期限休止を発表した一方、声優としてはアニメ「ハピネスチャージプリキュア!」で愛乃めぐみ、キュアラブリー役で出演している中島愛さん。ラストアルバム「Thank You」を2月26日にリリースした。休止を決意した経緯、作品に込めた思い、そしてこれからについて話を聞いた。
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−−まず、音楽活動無期限休止についておうかがいしたいです。
デビュー当時からすごく恵まれた環境で、たとえば多くの作家さんと出会えたことにしても、あまりに夢物語すぎて夢が現実になったことを実感できないまま来てしまったと感じていて。とにかく次へ次へというスピードだったので、ここでいったん自分の速度を緩めて、これまでのさまざまなことをちゃんと実感して感謝して、なおかつ中島愛として発表してきた音楽ってこうだったんだという道筋を、一度見つめ直してから次に進みたいと思いました。
ずっと青春時代の気持ちのままアウトプットし続けてきたので、もう一つ何かを吸収してからでないと、次にみなさんの前に立つべきではないというか……。もちろん活動を続けながらアウトプットもインプットもしてらっしゃる方はたくさんいらっしゃるので、自分もそうできたらと思うこともありました。でも、何となく次もあるよね、みたいな気持ちのままでは、どうしても前に進めないと思って。……ほんと、ただのわがままなんですけど。
−−活動を長いスパンで考えて、一度自分を振り返る時間が必要だと思ったということでしょうか。
はい。歌が好きだからこそ立ち止まるべきだ、と。歌が嫌いになったとか、この環境が嫌になったというわけでは決してありません。その上で、すごくずうずうしいことですけれども、もしもまたいつか、中島愛として歌えるご縁やチャンスがあったとしたら、そのお気持ちに返せるだけのものを蓄えていないといけないと思うし。そのためのお休みの時間にしたいと考えています。
−−ラストアルバム「Thank You」は、これまで音楽活動を応援してくれたファンへの感謝の気持ちが詰まった作品になりましたね。
前の2枚のアルバムは「I love you」と「Be With You」というタイトルで、どちらも誰かに呼びかけたタイトルだったので、次に何を伝えたいか考えたとき、やはり感謝の気持ちだなと。「You 3部作」みたいな。この5年間でみなさんからいただいた愛に少しでもお応えしたいと思い、ありったけの愛と感謝を込めて作り上げました。ぜひ私の気持ちを、音楽という形で受け取っていただけたらうれしいです。
−−アルバムは「ありがとう」や「そんなこと裏のまた裏話でしょ?」などヒット曲も多数収録しつつ、オープニングは70~80年代のAORやフュージョンをほうふつとさせるサウンドですね。中島さんは、こういう懐かしい音楽がお好きなんですよね。
そうなんです。1曲目の「愛の重力」は、ライブでバンマス(バンドマスター)をしてくださっている西脇辰弥さんが書いてくださった曲で、ライブのリハのときとかに、好きな音楽についてたくさんお話をさせていただいて。そんな中で、「じゃあアイドルの歌うプログレ(プログレッシブロック)をやらない?」とアイデアをくださって。プログレといっても構成だけで、AORやフュージョンに寄った音でということだったので、私も「めちゃめちゃやりたいです!」とお答えして完成しました。リアルタイムでAORやフュージョンを聴いていた私のお父さんやお母さんの世代の方が聴いて、いいなと思ってくれたらすごくうれしいですし、私たちの世代からしたら、決して古いという感覚ではなく、新鮮な音楽として聴いてもらえると思います。
−−あとラストに収録している「とうめいにんげん」は、コトリンゴさんの作詞・作曲・編曲です。コトリンゴさんといえば、ドラマ「明日、ママがいない」主題歌「誰か私を」が話題ですが。
(歌手の)南波志帆さんの曲で、コトリンゴさんが提供した楽曲がいくつかあって、それがすごく好きだったんです。まさか書いていただけるなんて思ってもいなくて、本当にうれしかったです。コトリンゴさんのピアノと私の歌だけで、“せーの”で録音しました。曲の持つ張り詰めた空気感が充満したスタジオで、ピアノと歌で会話するようなレコーディングでした。まさにライブさながらの生々しさがあります。頭で考えるのではなく、コトリンゴさんのピアノの音色に導かれて、自然といつもとは違った、息の成分が多めの歌い方になりました。
−−おとぎ話っぽい内容の歌詞ですが、中島さんの今回の気持ちと重なるところもあるように感じました。
サビの「私の持ってる時間の中で」という歌詞が、すごく胸に響きました。私自身、ずっと次はないかもしれないという危機感を持っていたにもかかわらず、なんとなくどこかで時間はたっぷりあるみたいな気持ちでここまで来てしまっていたことを、突きつけられた気がしました。私の今までの歩みをすごく肯定してくださっている気がしたし、なおかつ、じゃあ次はどうするの?と問われてる気がして。この曲と出合ったことで、より区切りということへの気持ちがクリアになったと思います。
触れられないものが、楽曲によって形になったような感覚というか……。楽曲と自分が、溶け合うとか融解するというイメージで、生の自分がすごく引き出されました。レコーディングも最後だったので、自分にとってすごく大きな曲になりました。
−−今後についておうかがいしたいのですが。
中島愛という自分名義での音楽活動は、3月末で休止になりますが、声優としては「ハピネスチャージプリキュア!」に出演させていただいています。プリキュアは本当に女の子の憧れで、私自身も子どものころは、しょっちゅう変身ごっこをしてました(笑い)。「ハピネス注入しあわせチャージ!」という決めぜりふを、たくさんの女の子たちが言ってくれていることを想像すると、胸がいっぱいになります。だからこそ、新規の作品をどんどん受けていくことよりも、今は「ハピネスチャージプリキュア!」に、全身全霊で向き合っていくことが重要だと考えています。1年かけて作品の一部になれるように頑張っていきますので、引き続き応援していただけたらうれしいです。
<プロフィル>
1989年6月5日生まれ、茨城県出身。2007年にアニメ「マクロスF(フロンティア)」で、ランカ・リー役で声優デビュー。2008年にランカ・リー=中島愛としてのデビューシングル 「星間飛行」が、オリコン週間ランキングで初登場5位にランクイン。声優として活動する一方で、数多くの楽曲を発表し歌手としても活躍。アルバム「Thank You」と同時発売で、昨年9月22日の中野サンプラザホール(東京都中野区)でのライブの模様を収めたブルーレイディスク(BD)「メグミー・ナイト・フィーバー」も発売中。3月20日に日本青年館大ホール(東京都新宿区)でファイナルライブ「Thank You」を行う。
(インタビュー・文:榑林史章)
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