ダンダダン
第8話「なんかモヤモヤするじゃんよ」
11月21日(木)放送分
話題のライトノベルの魅力を担当編集者が語る「ラノベ質問状」。今回は、第18回スニーカー大賞 秋の特別賞に選ばれた「俺と彼女の青春論争」(喜多見かなたさん作、ぶーたさんイラスト)です。KADOKAWAの今井理紗さんに作品の魅力を聞きました。
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−−この作品の魅力は?
高校生の新木場高志は“預金生活者”を自称する高校生。これまで頑張った努力の結果を“預金”と言い切り、それを食いつぶしていくことを信条としています。ですが、クラスメートの全力(すぎる)美少女・向原玲に巻き込まれて“かたれ部”という部活を始めたことから、理想としていた灰色の高校生活が崩れていってしまうのです。
正直なところ主人公の高志はひねくれていて、「俺はダメだ」と口では言いつつも心の底ではプライドを捨てられないという矛盾を抱えています。けれど、これは誰もが中高生のときに抱えていたことだと思うんですよね。私も「こいつ嫌な奴だなぁ」と思いつつ、「あるある」と思ってしまう部分がかなりありました。登場人物のすべてではないけど、「でも、そういうのあるよなぁ」という不思議な説得力がある作品です。また「ちょっと嫌なやつ」な高志が、多くの出会いを通して変わっていくのか、いかないのか。高校生のリアルな心情や、彼らを取り巻く状況が丁寧に描かれているところがこの作品のもう一つの魅力だと思います。
−−作品が生まれたきっかけは?
受賞作は「押忍!! かたれ部」というタイトルで、刊行した作品よりもややコミカルなものでした。この年、第18回スニーカー大賞秋の選考は、やや異世界トリップものが多かったため、喜多見さんが書かれたような青春小説やラブコメっぽいものが少なく、その中でも文章一つひとつの精度が高かったので最終選考に残っていました。当時の原稿から学園青春ものらしく、主人公の心情がとても丁寧に描かれていたので、その部分に評価が集まったように記憶しています。私自身も、その「少しイタイ、けど、笑えて心がほっとする」部分に引かれました。
−−作家さんとイラストレーターさんはどんな方でしょうか?
著者の喜多見さんはとても丁寧でしっかりしている方で、反対に私はいつもワタワタしているので、助けていただいています。今回、あとがきをお願いする際には喜多見さんの方から、「何ページで、締め切りはいつですか?」と連絡をいただきました。作家に締め切りを催促される編集者って……いつもすみません(笑い)。
イラストについては、今回はお話自体がどちらかと言えば、キャラの心情描写が多いものだったので、表情を可愛くかつ青春小説らしいさわやかなイラストを描かれる方にお願いしたいと考えていました。ぶーたさんが他社さんで書かれている本や同人誌のイラストを拝見していていつもニヤニヤしていたので、これはチャンスとお願いしたかたちです。「あの、ぶーたさんのホームページにあるもこもこ衣装をヒロインに着せたいんです! うさぎとか!」というふわっとしたお願いにも笑顔で対応してくださるとてもよい方です。口絵のイラストが可愛すぎるので、ぜひ皆さんに見ていただきたい!
−−編集者として、この作品にかかわって興奮すること、逆に大変なことについてそれぞれ教えてください。
大きな事件が起こる話ではないので「この殴るシーンがわくわくだぜ!」みたいなことはないのですが、ラストに向けて高志の気持ちが少しずつ積み上げられていく丁寧な描写には「おぉ」と読みながら感じていました。ですが、この青春小説ラインにするまでにかなり紆余(うよ)曲折ありました。最初は「語って、異能でバトル」みたいな感じで(応募作にはそういう要素もありました)コミカル系で行くかどうしようかすごく悩んで、いろいろと引っ張り回してしまったので喜多見さんにはご苦労をおかけしたと思います。
あとは、やっぱりぶーたさんのイラストが届くたびに、喜多見さんと「わー、こいつらこんなに可愛かったんですね」とはしゃいでいました。特に千景(サブヒロイン)のキラキラオーラがすさまじかったです。あれは、可愛い。
−−今後、作家に期待していることは?
喜多見さんはほかの作家さんが書かれるような大きなバトルであったり、大規模なファンタジーを書くような方ではないと思います。ただ、ほかの方にはないキャラの心理的な成長を非常に丁寧に描くことができる著者さんだと感じています。そういった部分を生かした喜多見さんにしか書けない小説を書けるようになっていただきたいです。あと、ラブの要素を磨いていただければ……!(笑い)
−−最後に読者へ一言お願いします。
スニーカー文庫25周年に刊行される新人賞2作目です! 喜多見さんの文章とぶーたさんのイラストがきれいにマッチしているので、その部分も楽しんでいただきたいです! よろしくお願いいたします!
KADOKAWA 角川書店 スニーカー文庫編集部 今井理紗
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