SPECIAL EDITED VERSION 『ONE PIECE』魚人島編
第8話 弱虫で泣き虫!人魚姫しらほし
12月22日(日)放送分
第151回芥川龍之介賞(以下、芥川賞 )の選考会が17日、東京都内で行われ、「文學界」6月号に掲載された柴崎友香(しばさき・ともか)さんの「春の庭」が受賞した。柴崎さんは候補4度目で受賞を決めた。決定後、都内で開かれた会見のおもな一問一答は以下の通り。
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−−受賞の感想を。
今回は本当にこんなに大きな賞をいただいてありがとうございます。まだ本当に信じられない心地。受賞を受け止めて今後も書いていきたい。
−−受賞作の主人公・太郎の名前の由来は?
今回の「春の庭」は東京の街を描いた。夏目漱石が好きで、東京は小説に描かれた街だと感動した。内幸町や矢来町など夏目漱石の作品に出てくる地名を聞いて興奮した。漱石の「草枕」と「彼岸過迄」が特に好きで、東京を歩き回る場面で、主人公の敬太郎に1文字足りない「太郎」にした。
−−受賞はどこで聞いた?
浅草にいた。最初はアンジュラスという喫茶店、あとはサンボアというバーで担当と待っていて、電話が来てあわてて切ってしまった。もう一度かかってきたときに(着信)拒否となっていて焦った。電話をいただいたときは信じられなった。候補になったのは4回目で、最初は信じられなかった。直後から(知らせを聞いた)みんなからメールが来て、本当なんだと実感した。
−−待っていた場所に因縁は?
家で一人で待つとか、大勢で待つとか、今までいろんなパターンがあったので直前まで迷っていた。古い雰囲気が好きで浅草も好きなので、時間がかかっても待てる場所かなと思った。
−−今作は柴崎さんの好きなものがてんこもり、集大成のように感じるが、理由は?
今回は写真だったり、映画だったり、街だったり、空間のことだったり、いままで書いてきたテーマが詰め込まれた小説だなと思っている。最初から詰め込もうと思ったわけではなく、書いてるうちに自然とそうなった。完成して初めてこれは今まで自分が書いてきたものが集大成というか、集めたような小説だなと思った。でも、そこから、また一歩、これまでとは違う書き方に踏みだせたかなと思う。
なぜ(それらを)好きかというと、他人を感じるということ。自分ではない誰かの気配であったり、リアリティーであったりをふとした瞬間に感じる。自分と関係のないような人のことでも、リアルに実感できる瞬間が写真や街を歩くときに感じる。関わり合うことのないような人の存在を実感できる瞬間というのが、心ひかれているんだと思います。
−−夢をかなえたことはないといっていたが、この受賞でどう変わった?
ゴールではなく、賞をいただいたことで、次に書いていく新たなスタートに立てた。大きな賞をいただいて改めて書いていかないといけない。すごく励まされ、背中を押される気持ち。
−−これまで候補の回数が多かったが今回の受賞を受けてどう思う?
まだ実感がない。受け止めきれない。でも本当にうれしい。前回から4年、間が空いて、その間に賞が現実的になった。作家の友人で受賞した人もいるし、遠くの夢でなく実感のあるものに変わった。今回、候補が決まってからいろんな方から、「受賞を祈ってる」と言われうれしかった。こんなにたくさんの人から連絡をいただいて、応援してくれている人がこんなにいるのか、私の小説を読んでくださっているということを実感できた。
−−最後のところで言葉が揺らぎがあるが、それは狙ったもの?
どう世界を認識するかが、小説の意味。違う角度から見られること、迷いながら書いていた。語り手が3人称で変わるのでなく、読み手が巻き込まれて、揺らぐ形ができないかなと。
−−最後の方で大阪弁になるのは?
自分自身、大阪から東京に来て9年。東京はいろんな場所から人が集まっている。一生大阪で暮らすつもりだったけれど、東京で暮らしてみて、いろんな文化や背景が集まっていると実感した。(受賞作の主人公の)太郎の中にも大阪と東京がある。いろんな場所に思いをはせるのが人間だと思う。街の、一人だけの小さな世界を書いていきたかったが、今は長いスパンでいろんな人が出入りするものを書きたい。
−−どう今の世界と融合していく?
一作ごとの経験で、今度はこうしたいとか考えている。今、40歳で間の世代。戦後から現在まで間の世代なので、どちらも見渡して書けることがあるんじゃないかと思っている。
−−漱石の影響は、どんな形で表れているか。
物語の会話と社会に対して、考えることなどが同じ面に書かれている。読んでいると過去の話とか現在の話が同じ平面上に書かれている。そういった点ですね。
−−今、会見では落ち着いているように見えるが、今の気持ちは?
よく落ち着いていて穏やかだねと言われるけど内面は混乱している。表には出ない。仲のいい友達なら相当混乱しているなと伝わるはず。今の気持ちは、目の前に白い空間が広がっている感じ。
−−(目の前にいる報道陣は)存在しない?
間に空間がある感じ。私が慌てて走り回っている。
−−最後にひとこと。
今までこうして今年で15年書き続けてこれたのは読んでくれる人がいて、仕事を依頼してくれる人がいたから。この受賞で書き続けなればいけないということだと思う。これからも面白い小説を書いていきたい。
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