2007年に英国で初演され、本国で大ヒットしたミュージカルを映画化した「サンシャイン 歌声が響く街」が8月1日から公開される。スコットランドの国民的双子デュオ、プロクレイマーズの楽曲がふんだんに盛り込まれた今作は、いわば、スウェーデンの人気グループ、アバの楽曲をモチーフに描いた「マンマ・ミーア!」のスコットランド版だ。軽快な曲や情感たっぷりのナンバーが、人生の素晴らしさを説くストーリーを彩り、味わい深い作品に仕上がっている。英俳優デクスター・フレッチャーさんの監督2作目。
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スコットランドの田舎町リースに暮らすロブ(ピーター・ミュランさん)とジーン(ジェーン・ホロックスさん)は、結婚25年目を迎える夫婦。銀婚式のパーティーを前に、アフガニスタンで兵役についていた息子デイビー(ジョージ・マッケイさん)が、娘リズ(フレイア・メーバーさん)の恋人とともに帰還し、一家は喜びに包まれる。ところがロブに、かつて関係を持った女性の葬儀の知らせが届いたことで、幸せだった一家に、にわかに暗雲が垂れこめる……という展開。
仲のいい両親。それを見て育った2人の子供たち。誰が見ても理想の家族だ。ところがそれはあっけなくついえてしまう。「遠い昔の過ちだ」というロブと、「時効があると思うの?」と夫を責めるジーン。25年といえば四半世紀。2人の仲むつまじい様子を見ていると、その時間の重みをひしひしと感じる。それが、たった一度の過ちによって吹き飛んでしまう。人生とは、なんとままならないものか。
1曲を、別々のキャストがそれぞれの場所、それぞれの立場、それぞれの心情で歌い上げる。そうした趣向が凝らせるのは、ここに登場する人物がみな、同様のことで思い悩んでいるからだ。それはすなわち、プロクレイマーズの曲、ひいては今作が持つ普遍性につながる。ケン・ローチ監督作品などでおなじみのミュランさんが、妻子を愛し、家族のためにいそいそと食事の支度をするなど、これまでの不幸や悲しみを背負った役とは一味違う表情を見せる。だみ声の、お世辞にもお上手とはいえないながら味のある歌声まで聴かせてくれる。映画には、1940年代のハリウッドミュージカルを彷彿(ほうふつ)とさせる場面もある。それがまた、往年の映画ファンの心をくすぐる。8月1日からBunkamuraル・シネマ(東京都渋谷区)ほか全国で順次公開。(りんたいこ/フリーライター)
<プロフィル>
りん・たいこ=教育雑誌、編集プロダクションをへてフリーのライターに。映画にまつわる仕事を中心に活動中。大好きな映画はいまだに「ビッグ・ウェンズデー」(78年)と「恋におちて」(84年)。
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