「それでもボクはやってない」(2007年)、「終の信託」(12年)と堅いテーマの作品が続いていた周防正行監督が、ガラリと趣を変えて撮り上げたファンタジーミュージカル映画「舞妓はレディ」が13日から全国公開される。京都の花街を舞台に、一人の少女が舞妓(まいこ)修業に明け暮れる姿を描き、明るく愉快で楽しい作品に仕上がっている。
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京都の花街にある老舗のお茶屋「万寿楽(ばんすらく)」に、「舞妓になりたい」という一人の少女(上白石萌音=かみしらいし・もねさん)が青森県の津軽からやって来る。女将の千春(富司純子さん)はなまりがきつく、素性もはっきりしないその少女、春子を追い返そうとするが、ちょうどそこに居合わせた言語学者の「センセ」こと京野(長谷川博己さん)が春子に興味を抱き、なまりを直して一人前の舞妓にしてみせると宣言。かくして春子は万寿楽の仕込み(見習い)になり、唄や踊り、礼儀作法といった舞妓修業を積むことに……という展開。
春子を演じるのは、11年の東宝シンデレラオーディションで審査員特別賞を受賞し、この世界に入ったという上白石さん。今回の役は800人の応募者からオーディションで射止めたという。今作の魅力は、上白石さんの魅力に負うところ大きい。当初、津軽から京都にやって来たときの春子は、あか抜けておらず、「超」がつくほど素朴で、正直、舞妓になれるとは思えない風貌だ。ところが京野や先輩芸妓らから指導を受け、徐々にそれらしくなっていくさまを、上白石さんが実に見事に演じている。伸びやかな歌声がまた、その魅力をあと押しする。春子の面倒を見る富司さん演じる千春がこれまたすてきで、ほかにも踊りの師匠(中村久美さん)や古参の芸妓(岩本多代さん)、先輩舞妓(田畑智子さん)、芸妓(草刈民代さん、渡辺えりさん)といった“ベテランさん”たちが実にカッコよく、プロの仕事ぶりに感銘を受けた。ミュージカルというとちょっと引き気味だが、歌に踊り、それらがすべて違和感なく入ってきて、とにかく楽しい。思いがけない感動的なオチにもホロりとさせられた。タイトルも粋で、往年の映画ファンならニヤリとすることだろう。TOHOシネマズ有楽座(東京都千代田区)ほかで13日から公開。(りんたいこ/フリーライター)
<プロフィル>
りん・たいこ=教育雑誌、編集プロダクションをへてフリーのライターに。映画にまつわる仕事を中心に活動中。大好きな映画はいまだに「ビッグ・ウェンズデー」(78年)と「恋におちて」(84年)。
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